暗闇 11 - 12
(11)
桜の花びらがヒカルの髪に落ち、アキラはそれをはらってくしゃくしゃのヒカルの髪を手で軽くといた。気がつくとアキラの手が濡れている。ヒカルの涙がついた事に気付く。
「痛いのか、進藤。ここに一人でいられるか?電話を」
立ちあがろうとするアキラの背広をつかむ。
「塔矢、オレ、先生に、やられたんだ」
「・・・・!!?」
アキラの顔を見たくなくて、ヒカルは目を閉じた。暗闇だ。
「新しい棋譜作ろうって、夜棋院に呼び出された。名前なくて、オレ、お前だと思ってワクワクして行っちまった」
「・・・」
「ゴメンな」
「―――何故。キミが謝るのはおかしい」
「・・ああ、ん・・ホントだな、お前には関係ないもんな」
「・・・・」
暗闇だ。塔矢の顔、見れない。その時。頬に冷たい物が落ちて跳ねた。
「桜・・?」
目を開けると自分に覆い被さるように見つめているアキラがいた。
アキラの頬に涙が伝った跡があった。怒りでガクガクと震えているアキラをヒカルはじっと見つめた。
「なんで、お前が泣くんだよ・・」
ヒカルの声は震えていた。アキラは目を閉じ、嗚咽を抑えようと口を押さえた。
目を開けた時、アキラの目は赤かった。ヒカルは耐え切れず、声を出し、泣いた。
アキラはヒカルを抱き締めた。
眩しくて、目が開けられない、視界がぼやけて、塔矢の顔、良く見えない。唇に塔矢の暖かい物を感じる。塔矢の唇だった。塔矢がオレに触れてくる。
アキラはヒカルの傷跡を長い指で撫でていった。首筋に唇を滑らせながら、ヒカルのシャツを脱がせて、Tシャツをめくりあげる。
「・・うっ・・」
痛みに顔を歪めるヒカルをじっとアキラは見つめた。
「ボクは」
「・・・」
「・・何故ボクがキミを守れなかったのかと」
「・・塔矢」
「・・」
「進藤、キミは今、ボクに答えた。それがすべてだ。すべてだ。前にも、言った」
ヒカルが小さく笑った。
(12)
アキラの激しい口付け。溢れそうになるアキラの唾液をヒカルはすべて飲み込んだ。
アキラの目がヒカルの大きな目を見て、ヒカルはアキラの漆黒の瞳を覗きこんだ。
アキラはヒカルの髪に触れ、桜の花びらを払う。そしてヒカルの汗ばむ掌に口付け、ヒカルの耳を噛んだ。
「う・・あっ」ヒカルが震えた。
耳の中に舌が差しこまれる。
「進藤」
小さく囁かれる。
「あっ、ああっ!んんっ」
アキラの一つ一つの小さな行動が、ヒカルにはたまらない。
囁かれるだけで、痛いのだ。快楽と一共に。アキラは自分のファスナーを下ろし、
ヒカルのチャックも外し、ためらいなく下ろした。
そして自分の堅くなったモノをヒカルの熱いモノにこすり合わせた。
「んっ・・あ、塔矢、とう・・やっ・・!」
アキラはヒカルの小さな口に碁石を持つ形で自分の指を二本差し込んだ。
ヒカルは涙を流し、アキラの指に舌を絡めた。
小さな赤い舌が動き、自分の指を美味しいもののように舐めた時、アキラは眉をしかめ、果てた。
同時にヒカルも小さな声をあげて、塔矢のモノにかけるように射精した。
「はっ・・はあ、塔矢・・」
息を整えながら、ヒカルはアキラの射精したばかりのモノをやんわりと握り、アキラを見た。
アキラは戸惑い、首を振った。ヒカルのそこは、まだ痛々しい傷があった。ヒカルは小さく、でもハッキリと言った。
「頼むよ、塔矢」
入れてくれ、その言葉にアキラは目を瞑り、ヒカルの傷に触れ、自身をねじ込んだ。
「ああっ!!」
ヒカルは叫び、ヒカルが爪を立てたアキラの背中から血の筋が流れた。
「――――――進藤!」
搾り出す切ない塔矢の声にヒカルはもう一度泣き出したい気持ちだった。
ああ、塔矢、塔矢が花びらと一緒に、オレを抱く。光が。――――光が。
(終幕)
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