検討編 11 - 15


(11)
とうとうアキラの足がヒカルを蹴り落として、ヒカルは床に転がった。
「………………いってぇ……」
床に打ち付けられた腰を擦りながらヒカルが身体を起こす。
「………ひでぇよ……塔矢ぁ…」
「何だと?ひどいのはキミの方だ。何を考えているんだ、キミは!一体今、何をしようとした!?」
「何って……」
「そんな所にそんなモノ入る訳ないだろう!」
「入るはずなんだけど…」
「入るもんか。女じゃないんだから、」
「大丈夫なはずなんだよ…!」
「何を根拠にそんな事を、」
「だからぁ、そこに挿れるんだよ、男同士の場合は。」
「ウソをつけ!でたらめを言うな!!」
「でたらめじゃねぇよ!ホントだよ!!」
不信感もあらわにヒカルを睨みつけるアキラに、ヒカルは唇を尖らせて言う。
「だからぁ、えー、うん、男の場合はソコに挿れるの。そーゆーもんなの。」
返事もせずに疑いの眼差しを向けたままのアキラに、もう一度念押しのように言ってみる。
「どうしても疑うって言うんなら、賭けてもいいぜ。」
賭けるというのが何を賭けようというのかヒカルの目が雄弁に語っているような気がして、更に自分
はその方面の知識には疎いのだろう事も薄々は自覚していたので、アキラもやっとヒカルの言うこと
が全くのでたらめではないのだろうという事を、不承不承ながらも認めた。
「…どこでそんな知識を仕入れてくるんだ、キミは。」
「えー、それは、まあ、その、色々と…」


(12)
「あー、でもさぁ、ホラ、女のコも最初は痛いっていうから、男の場合でも最初は痛くてもその内よく
なるんじゃないかな?」
そう言ってもう一度アキラの上に圧し掛かり、ソファの上に押し倒そうとする。
「だから、塔矢、ちょっとだけ、ガマンして?」
「…なんで、ボクがそんなもの我慢しなきゃいけないんだ。」
ずず、っとアキラが逃げるように身を起こす。
「慣れればきっと平気だからさぁ、」
「慣れるもんか。慣れたくないね、そんな……こら!触るな!!」
パシッと音をたてて、アキラの手がヒカルの手を叩きはらった。
「………ケチ。」
なにがケチだ、と冷たくヒカルを見るアキラの目を、ヒカルは恨みがましげに見返した。
「ずりぃよ、塔矢。」
「…ケチだのずるいだのそういう問題じゃないだろう。」
まるで、そっちが悪いと言わんばかりのヒカルの言い方に、アキラは半ば呆れて、
「それとも、」
と言いながらアキラがヒカルの手首をとった。
「え、え、うわわっ!」
一気に体勢を入れ替えられてしまって、ヒカルは呆然としてアキラを見上げた。
「それ程平気だって言い張るんならキミで試してみるか?」
「え?」
「キミのにボクのが入るかどうか、試してみてやろうかって、言ってるんだよ。」
「え…それは……ちょっと、カンベン……」
「……随分な言い草じゃないか、進藤。」


(13)
「自分がやるのはいいがやられるのは勘弁してくれだって?
そんな自分勝手な理屈が通るとでも?」
「え…それは、でも、」
にっこりと笑ってみせながら、ヒカルの顔を覗きこむ。
「大人しくされるがままになっているようなボクだとでも、思ってた?」
どっきん。
そんなカオを、間近に近づけないでくれ。
こ、こえぇよ。こえぇけど、でも、なんかすんごいイロっぽい、て言うか、うう。
「…えと……怒ってんのか…?塔矢…」
「怒るに決まってるだろう。」
「オレのコト、キライになった…?」
アキラの目がふと和らぐ。
「…嫌いじゃないよ。」
このくらいで嫌いになれるくらいなら、とっくにキミを嫌いになってる。
嫌いじゃない。むしろ。
答えを飲み込んで、ヒカルを見下ろしていると、困ってるような、少し怯えてるようなヒカルが何だか
急に可愛らしく見えて、自然に笑みが浮かんだ。
こうやって見てみると、結構可愛いもんだな。
コレだって。さっきはまるで凶器のように思えたのに、こうしてみるとそうでもない。
そう思って、それを手で軽く弄んでみる。
「え、ちょ、ちょっと、塔矢…っ」
慌ててる慌ててる。ふーん成る程、可愛いじゃないか。
そう思うと更に悪戯してみたくなって、手の中のそれをキュッと軽く握った。
さっき進藤はボクにどうしてたんだっけ?


(14)
>319 の続き

「な、何すんだ、塔矢!」
「何って、さっきキミがした事だよ。キミにばっかりやらせておけるか。」
「って、ダメ、ダメだよ、やめ、やめろ、塔矢、」
「うるさい、黙れ!静かにしろ!」
「うわっ!」

「いい加減に大人しくしないか、進藤。」
ぐっとそれを握り締めたまま、アキラはヒカルに顔を近づける。
間近に迫ったアキラの瞳に飲み込まれて、ヒカルは動けなくなる。
それを見てアキラは軽く鼻で笑って、手元まで顔を下ろしていった。
が、口に含もうとしたそれが、ついさっきまでどこに入ろうとしていたかを考えて、一瞬、アキラは躊躇する。
だがここまで来て「やっぱりやめた」とも言えなくて、零れる粘液で先端を拭うようにしてから、まず根元に
口付け、舌先で触れてみた。何ともいえない苦味と青臭さに顔をしかめる。それでもここで中断するのも
悔しいので、半分意地と自棄のような気持ちで、それを咥えてみた。

(あんまり細かく書くのもめんどくなってきたんで、中略。ごめんよ。)


(15)
「気持ちよかった?」
「……うう…」
「よくなかった?ボクはキミにしてもらってすごく気持ちよかったけど。」
「…う……そりゃ…よかった、けど…」
「それはよかった。」
ヒカルの答えに満足して、晴々とアキラは笑った。
だがそんなアキラの(ちょっと場にそぐわないような)晴れやかな笑顔に、ヒカルはがっくりと肩を落とした。
ああ。ほんのちょっと前までのあのムードはどこに行っちゃったんだろう。
なんでこんなんなっちゃったんだろう。
なんだよ、塔矢の奴。ついさっきまでは目ぇうるうるさせて、半分泣き声で「しんどう…」なんて言ってたくせに、
すんげぇキレエで、色っぽくて、でもって可愛くて、なんかもぉ、オレ、どうしたらいいかわかんないってくらい
だったのに。
なんだよ、コイツ、立ち直り早すぎだよ。可愛くねぇ。クソ。
そりゃあ、そりゃあ確かによかったけどさ、すんげぇよかったけど、やっぱ自分でするのなんかとは全然違うし。
だってまさか塔矢が。
塔矢が?塔矢だぞ?あの、塔矢が。おい、ちょっと待て。信じられるか?あの塔矢が。
う、うわわっ、ヤベェ、思い出したらまた元気になっちゃいそうだ。
っつっても、もっかい、なんて言ったらきっとまた怒る。ましてや挿れさせてくれなんて言おうもんなら。
「なあ、塔矢ぁ、」
呼びかけながら顔をあげたヒカルは絶句した。



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