肉棒だらけの打ち上げ大会 11 - 15


(11)
「──伊角さんコレって・・・・・」
伊角が和谷に渡した物は、よっちゃんイカだった。
「よっちゃんイカはウマイぞ」
ニコニコしながら伊角は封を開けて、よっちゃんイカを食べ始めた。
──まさか、よっちゃんイカが出るとは思わなかったな。
こんなペラペラしたモノじゃ腹の足しにもならねえよお。
「ねえ伊角さん、他に別な物はないの?」と、和谷は不満顔で伊角にもう一度
聞いてみた。
「他にか? そうだな、あとは酢昆布があるぞ」(都こんぶを差し出す伊角)
「・・・オレ、よっちゃんイカでいい・・・・・・・・」
──伊角さんって、まだ十代なのにどこかジジイ臭いんだよな・・・・。
仕方なく和谷は、よっちゃんイカをくわえた。
──なんか余計腹がへるうう〜。
やがて次第に空は暗くなり、山奥の静かな温泉街の上に赤い夕陽が照らし
出し、街中にあるスピーカーから夕焼け小焼け≠フメロディが流れる。
「おい和谷、川に夕陽が映ってキレイだぞ」
「あーあ、もう陽が沈んじゃう時間か」
「こういう景色眺めていると、なんかこう無性に叫びたくなるな」
「ハハハ、バカヤローとか?」
冗談だろと思い笑いながら和谷は伊角を見ると、伊角はウットリとした顔で、ジッと夕陽を見つめている。
──うわああ、チョ、超マジだ伊角さんっ!!
夕陽に向かってバカヤロウなんて、今時誰もやらねえよ!
っていうか、思いつきもしねえよ。


(12)
確かにイイ人だと思う・・・でも、どこかズレている伊角が和谷はとても
悲しかった。
そんな和谷の気持ちも知らずに伊角は、さも美味そうによっちゃんイカを
味わっていた。
「よっちゃんイカ最高だよな〜。
あっ、そうだ和谷。あとカリカリ梅に黒飴あるけど食べるか?」
「―――オレこのよっちゃんイカだけで充分だよ・・・」
「そうか? 遠慮はするなよ」と、伊角は和谷に微笑んで視線を再度、
川に向ける。
そしてまたニンマリと不気味な笑顔を浮かべ、クククッと口端から声に
ならない笑い声を洩らしている。
──伊角さん、また別の世界にトリップしちゃってるよお。
「プププ・・・・・・・・・・・・・・・・・・グヘッ」(伊角の笑い声)
──い、いっ、いっつ、いったい何を考えているんだ、伊角さーん!!??
激しく異次元なお世界へ逝っている伊角の側で和谷は、目や鼻から汁を
垂らして、ガクガクブルブルと体を震わせた。
思考回路が崩壊寸前な和谷の側で1人アヤシイ世界に浸っていた伊角の顔が
見る見る青ざめていき、いきなり川原に倒れ込んだ。
異変にすぐ気がついた和谷は、心配そうに伊角の様子を伺う。
「わ、和谷・・・・・・・今いきなり持病の腰痛が再発した・・・あいだだだ〜!!」
「うわあ、いきなり話に脈絡ねえネタできやがったか伊角さん!?」
「はうぅっ、こ、今度はリューマチが痛みだ──し──た──あ──!!!」


(13)
「ぎゃああああー、しっかりして伊角さん!?
腰痛にリューマチってなんかネタかぶってるぜ。
ネタ切れか、もうネタにつきたのか? 
ああ、もうそれはどうでもいいや。
ここの温泉って間接痛や腰痛とかに効くって聞いたよ。
伊角さん、急いで温泉に入ろう! きっと良くなるよっ。
でも、すげえムリヤリな展開でオレ、かなり鬱」
「死ぬウゥ、死ぬウウ〜、助けてくれえええ〜」
「しっかりして伊角さぁぁ―――ん」

半ベソかきながら和谷は、ミスター若年寄・伊角を担いで施設内にある温泉浴場
へと足を向けた。


(14)
夕暮れ時の山間静かな温泉施設の温泉浴場の窓からは、町に小さな灯りが
ポツポツと見え始める。
昭和初期の看板がそのままに放置してある寂れた町並みにその灯りが妙に
マッチして、どことなくレトロな雰囲気が温泉町に漂う。
・・・・・・・が、この温泉施設に宿泊している囲碁バカ達には、そんな情緒を楽しむ
輩は一人もいなく、暴走しまくり状態だ。

宴会会場から遠く離れた温泉浴場。もくもくと湧き上がる湯気の中、蠢く二人
の人影──アキラとヒカルがいた。
ヒカルは浴場のタイルの上にアキラを仰向けに寝かせ、アキラの両足を自分の
肩に掛けた。そしてアキラの尻を両膝にのせ、その姿勢のまま膝を立て、
やや前屈みの格好で思う存分アキラの中の感触を楽しんでいる。

「あっ、だ、ダメだ・・・んっ・・・あぁっ」
「駄目だなんてよく言うぜ! 
お前の中、オレの物をキツく締めつけているクセに。
塔矢の駄目って気持ちイイってことだろ?
なあ塔矢、駄目は気持ちイイの裏返しなんだよな」
「ち、ちが・・・・ああっ!」
小刻みに絶え間なくアキラの柔らかな体内にヒカルは攻めたて、アキラの言葉
を無理矢理遮った。
必死に歯を食いしばっても我慢出来ずに声を上げてしまい、恥ずかしさの
あまりに顔が赤くなるアキラの表情を満足気に『してやったり!』とヒカルは
ニンマリ眺める。


(15)
ヒカルにっとっては幸運にも温泉浴場には誰も来なかった。
──と言うか、囲碁バカ達がこの温泉施設を貸切にして、皆が宴会会場に集って
いるだけなのだが。

「あぁ・・・・進藤・・・・ボ、ボクもう・・・・・・・・・」
「塔矢、オレもだ」
アキラの両腕がタイルから離れて宙を彷徨い、何かを探している。
「・・・・・・進藤・・・進藤、・・・し、進藤・・・・・・」
それに対し、ヒカルはさらに自分の体を前方に倒す。アキラの手がヒカルの顔
を探し当てると、とても強い力でヒカルの首に抱きついた。
結果的にさらにヒカルがアキラの中により深く挿入する体勢になり、ヒカルの
首に抱きつくと同時に、悲鳴に近い声をアキラは喉奥から張り上げ浴場内に
響かせた。
「──進藤!」
「ああ、とっ、塔矢ぁあ〜」
お互いの体をぶつけ合い、まさにフィニッシュ目前の二人を前に、浴槽内から
いきなりザバーン!!と大きな水音が立った。
思わずアキラ・ヒカルの二人は動きを止め、浴槽の方に顔を向けると、そこに
は酸素ボンベを背負い、目にはゴーグルを当て、すっぽんぽんで両手を
バンザイポーズをとる二人の少年の姿が現れた。

<やっぱり温泉は気持ちいいなあ、なあ秀英>(←※韓国語)
<うん永夏。でも長い時間温泉に潜っていたから、さすがにのぼせたよ>
アキラとヒカルはいったい何が起こったのかすぐ理解出来なく、タイルの上で
繋がったまま顔を引きつらせカチーンと氷のように凍りつき、そして赤毛の
マツゲと、小柄の韓国版きのこカットをただボーゼン見ていた。



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