敗着 11 - 15


(11)
柔らかい毛に指を絡ませ、徐々に刺激を与えて行く。
「・・・、あっ・・・」
自分でする時とは比べものにならない上手さに声が漏れる。
顔が歪む。
碁会所からこのマンションまで、車の中では一言も言葉を
交わさなかった。
ただ、助手席に座っていたヒカルは、シフトレバーを滑らかに操作する
緒方の手に見惚れていた。
「あ・・・あっ・・・、ん、・・・ふ・・・」
呼吸が速くなり、足からは力が抜け体重を緒方に預ける。
規則的に動く緒方の腕がヒカルの腕に当たっている。
ビクンと顎を上げた時、ブラインド越しの光が目に入った。

(ヒカル─)
佐為の声が聞こえたような気がした。
佐為・・・
佐為と過ごしたあの懐かしい日々が頭の中で広がる。
そしてそれをあの部屋で聴いたシャワーの音が打ち消して行く。

(─もう、戻れないんだ─)
それを思い知った時、目からは涙が溢れ、
ヒカルは緒方の腕の中で大きく頭を振った。


(12)
「ドクリ」
体液が流れ、ヒカルは緒方の手の中で果てた。
・・・ハッ・・・ハッ・・・というヒカルの息遣いが聞こえる。
「若いな─。」
緒方は耳元で囁き、ヒカルの背後から抱きついた姿勢のまま
ヒカルに手の平を見せた。
「・・・・・」
ヒカルは堪らずに目をそらす。
緒方はその手を自分とヒカルの腰の間に入れ、中心に滑り込ませると
用心深く塗り込んでいく。
ついこの間、塔矢に開かれたばかりの場所。
「・・・ヤメロ・・・」
恐怖で声がかすれる。
アイツだから許せた。
アイツだからどんな痛みにも耐えられた。

「・・・こうしておかないと、後で泣くのはお前だぞ・・・
 どうせアキラはろくに準備もせずに突っ込んだんだろう?
 でなきゃあんな傷ができるはずがない─。
 だからアキラは子供なんだ・・・」
指の腹で粘膜を摩りながら、緒方が耳朶に口を寄せる。
「─放せっ・・・」
一瞬力が緩んだのを見逃さなかったヒカルが緒方の手を振りほどいた。
 


(13)
「待て!」
捕まえようとする手を逃れ、目に入った扉に駈け寄り夢中でドアを開ける。
─とそこは、ベッドとサイドテーブルしかない殺風景な部屋だった─

(「アキラくんは─」「物覚えがいい─」)

緒方がアキラのことを話した時、見た部屋だ。
「都合がいいな・・・」
後ろ手でドアを閉め、眼鏡を外しながら緒方が近付いてくる。
「アキラの代わりをしてもらおうじゃないか」
と言い終わらないうちに力任せにベッドに組み臥され、
足をばたつかせながらもみ合う。
「放せっ・・・ヤメロ、この変態!」
こんな奴に、塔矢は─
自分を優しく抱き締めてくれた体温が肌に蘇る。
必死に両腕を振り回し抵抗するヒカルの手が緒方の首の付け根を引っ掻いた。
「痛・・・っ」
皮膚に血が滲み出すのを見てヒカルは「あっ」という顔をする。
「・・・優しくしてやってれば、コノヤロオ・・・」
眼鏡越しではないその目線に睨みつけられ息を呑んだ。
その瞬間─
「ぐ・・・」
緒方の体が傾いたかと思うとヒカルは横っ面を殴打された。
目の前が一瞬真っ白になり、
「これはオレが脱がせてやるよ」
という緒方の声が聞こえシャツが一気に左右に引き裂かれた。


(14)
ボタンが飛び散りヒカルの裸の上半身が露になった。
「嫌だっ・・・や・・・!」
緒方にのしかかられた下肢は動かすことが出来ず、
剥がされていくシャツの布が腕の自由を奪っている。
ヒカルは顔を左右に振ってイヤイヤをして叫んだ。
「いやだ!塔矢!塔矢────!!」
「アキラとヤルよりもヨガラせてやるよっ!」
暴れるヒカルを抑え付け、シャツを床に叩きつけると緒方が怒鳴った。
「い・・・やだ・・・」
「塔矢」という言葉は声にならなかった。
緒方はヒカルの四肢を組み敷きながら、自分のネクタイに手を掛け引き抜き
天井を仰いでいる目を覗き込んだ。
「大人しくしてれば乱暴はしない」
そう言ってヒカルの体を慎重にうつ伏せにすると、両の手を後ろ手に縛り上げた。
ヒカルの臀部が緒方の目に晒される。
(塔矢─オレ、おまえと)
どこか拙い、遠慮がちな愛撫を受けて確かめ合ったあの夜。
それが、壊される─。
「緒方せんせ・・・やめて・・・よ」
涙声になったヒカルが哀願するのを聞いて、
「・・・じっくりとヤってやるから」
と緒方は答えた。


(15)
もみ合った後の乱れたシーツの上。
後ろで手を縛られたヒカルが全裸でうつ伏せに転がっていた。
肩で小さく息をして呼吸を整えながら、緒方は改めてヒカルの肢体を眺めた。

──うなじにかかる程度に伸びた黒い髪の毛。肩甲骨とそれに沿う筋肉。
  ネクタイを巻きつけた両腕と、その下の細い腰。
  しなやかな脚とその付け根には薄っすらと水着の跡があった。

(これは思わぬ拾い物だったな)
ヒカルの内腿に手を差し込み、ゆっくりと上へなぞっていく。
「!・・・」
無防備な状態になり、次に来ることを予感していたヒカルが身体を強張らせた。
「そう怖がるな・・・」
優しく言ったつもりでも、声が低くなる。
ヒカルの尻からその奥をまじまじと見つめ、ごくりと唾を飲んだ。
(─アキラより上玉かどうかを調べてやるか・・・)
蹴られないように注意をしながら、横たわっている体を仰向けにする。
泣いたのか、睫毛が少し濡れた大きな瞳が飛び込んできた。
「・・・オレはアキラよりは上手いぞ・・・」
殴ったことを少し後悔して、ヒカルの体に覆い被さるようにのしかかると
耳朶に口を寄せ弁解した。
耳から顎に沿ってキスをして、血の滲む唇に吸い付く。
鉄の味と、濡れた唇の感触。幼い反応。
「口を開け・・・」
催促するように小さいキスを繰り返していると
「誰がお前なんかと」と言わんばかりに顔を横に背け、強く目を瞑っている。
(ったく、手間のかかる・・・)
一体どうやってアキラとヤったんだ?
と訊きたいのを堪え、ヒカルの首筋に舌を這わせた。



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