平安幻想秘聞録・第一章 11 - 15


(11)
「目を閉じて、力を抜いて。私に任せて下さい、ね」
 一度ヒカルの身体を抱き上げて、膝の上に降ろし、涙を指の腹で拭い
ながら、震えてる小さな唇をそっと塞いだ。
「ん、ふぅ、ん・・・」
 驚いて逃げようとしたヒカルを優しく束縛したまま、佐為はヒカルの
小袖を肌けさせて、まだ発達途中の細い身体を空気に曝した。夜目にも
白い肩、くっきりと浮き出た鎖骨、その下の薄い桃色の蕾。順番に指先
で辿る佐為に、ヒカルが嫌悪ではないものを覚えて震え出した。
「ダメだ、佐為、やだ・・・」
「光、何も怖いことなんてありませんよ。光が楽になるようにするだけ
です」
「ん、あぁ!」
 佐為の形のいい唇が胸の先端を柔らかく啄んでいく。びりっとした快
感に、ヒカルは背を仰け反らせた。
「光は昔と変わらず、柔らかいですね」
「さ、い・・・」
「ほら、力を抜いて、苦しいのでしょう?」
 耳元で囁かれ、あやすように髪を撫でられて、ヒカルはふっと身体の
強ばりを解いた。佐為は嘘を言わない。きっと、言う通りにしていれば、
大丈夫。そんな信頼の念が今でも残っているのか、佐為の流れるような
手の動きに脚を開かされても、もう抗う気持ちはなくなっていた。
「はぁ、ん」
「このままでは、辛いでしょう?」
 佐為の掌が触れただけで、更に自分の身体が熱を上げたことが分かる。
ヒカルの気持ちを置き去りにして、肉体だけが情欲を貪りたがってる。
そんな感じだ。そして、それを今自分の目の前にいる貴人の手で施され
るのは、決して嫌ではない。むしろ、その先を願っている。やったこと
もやり方も知らないのに、ヒカルはそう思った。


(12)
 佐為に優しく導かれて、ヒカルは程なく絶頂を迎えた。
「光、大丈夫ですか?落ち着きましたか?」
 一度達したというのに、濡れたヒカルの太股は微かに震え、佐為に見
られていると思うだけで、また勃ち上がりかけている。
 これが何を意味しているのは分からない。分からないけど、佐為が欲
しい。ヒカルは重い両手を上げて、もう一度手を伸ばした。
「佐為、お願い、して・・・」
「いいのですか?」
「いいよ。佐為なら」
「後悔、しませんか?」
「しないよ。それとも、佐為が嫌?オレなんか、抱くの」
「そんなことはありません」
 首を横に振る佐為の表情は偽りを含んでいるようには見えない。それ
にほっとして、微笑んだ。妖艶とも淫靡とも違う子供のような笑みに少
し戸惑いながらも、佐為は縋りついてくる身体を柔らかく引き寄せ、唇
を合わせた。すぐに舌先が触れ、奪い合うように絡ませる。唾液をうま
く飲み込めないヒカルの唇の端から零れ落ちる。それを拭い、額や頬に
口づけながら、夜具の上に抱き倒した。
 ヒカルはただ佐為を見上げて、次に来るもの待っている。不思議と何
も怖くない。ずっとこうして欲しかったようにも思えて、表情には出さ
ずに苦笑した。
 ここは平安の世だから、現代のオレとはどこか違うのかも知れない。
「はぁ、ん・・・」
 敏感になった根本をさすりながら、佐為はヒカルの最奥に舌を差し入
れて、濡れないそこを湿らせる。意図しないぴちゃりという音に、何が
触れているのか分かって、ヒカルは腰を引きそうになった。
「佐為、そこ、汚い・・・」
「汚くなんてありませんよ」
 逃げる身体を引き戻して、更に舌先で唾液を送り込む。初めての刺激
にヒカルは身を捻りたくなるのを耐えた。


(13)
 一本、二本・・・自分の中に入って来る指が増やされる度に、ヒカル
は羞恥が身体中を紅く染めた。夕方、目の前で碁を打っていた、佐為の
綺麗な指、爪、その動きを思い出して、更に身体が熱くなる。
「はぁ、あ・・・ん」
 内壁を丁寧になぞり、ヒカルの感じる場所を探り当てた指の腹が掠め
る度に、すっかり裾の乱れた小袖から覗く細い脚が小さく跳ね上がる。
宥めるように奥に進む快感に追いかけられ、ヒカルは浅い息を吐きなが
ら耐えた。
「ふぅ、ん」
「光」
「はぁ、あっ、佐為・・・」
 上半身を倒した佐為が、ヒカル身体を二つに分けるように脚の間へと
入って来る。微かに着物の擦れ合う音がして、下肢に熱いものが押し当
てられた。それまで夢見心地だったヒカルがハッとして顔を上げると、
優しげな表情は変わらないものの、何かを秘めたような佐為の瞳とぶつ
かった。情欲を宿した男の目だ。
 あぁ、きっと、さっきのオレもこんな顔でこいつを見てたんだろうな。
 佐為が自分を欲しがってる。それが嬉しくて、ヒカルは佐為の首筋に
両方の腕を回した。それを合図に、佐為がゆっくりと身を沈める。秘門
に熱い楔が食い込む瞬間にヒカルが上げた悲鳴は、それを塞いだ佐為の
唇の中へと飲み込まれた。
 濡れた音を従えて、割り入って来たものに身体が軋む。下から押し上
げられて、ヒカルの目から涙が溢れた。
「光、痛いのですか?」
 思わず引かれそうになった佐為の腰をヒカルは押しとどめた。
「だいじょ、ぶ、だから、そのまま、して・・・」
 辛そうに眉を寄せるヒカルは少しも大丈夫そうではなかったが、佐為
はなるべくヒカルに負担のかからないようにゆっくりと動き始めた。


(14)
「あぁ、はぁ、あっ!」
 苦しそうに漏らされていたヒカルの声が段々と艶めいてくる。初めて
受ける痛みと快感に、半ば意識が飛びかけたとき、佐為がヒカルの最奥
を突いた。熱い滾ったもので敏感な場所を擦られ、今度こそはっきりと
ヒカルは喘ぎ声を上げた。
「あぁ!佐為、佐為!」
「光、光」
 耳元で聞こえる吐息混じりの佐為の声にさえ、身を震わせるほどの愉
悦を感じて、既に縋りつくことができず両脇に落としたままだった手で
夜具を掻き乱す。擦れる布の感触にまで、追いつめられているようだ。
「はぁ、やだ、何で・・・」
「光。感じてるのを、隠さないで」
「ん、ふぅ、あぁ」
 ぐちゃぐちゃと濡れた音が自分のどこから発しているのか分からなく
なる。佐為が大きく動く度に、ヒカルは細く白い背中を柳の枝のように
しならせる。
「ほら、光、ちゃんと感じてますよ」
 佐為に手を取られて触れた自分も、また硬く勃ち上がっていた。その
まま手を添えるように、自分とそして佐為の両方の手でまさぐられて、
ヒカルは耐え切れずに達した。それと時を同じくして、秘孔に熱いもの
が注がる。
「あっ、やっ、あぁぁ!」
 それに刺激され、ヒカルは女のように絶頂が果てしなく続くような感
覚に陥った。佐為の愛戯が巧みなのか、それとも自分の身体が感じ易い
のか、ヒカルにはそれを考える余裕もなかった。ただ、ずっと為を近
くで感じていたい。
「佐為、もっと・・・」
「えぇ、光、あなたが欲しいのだけ・・・」


(15)
 ことが終わった後、ヒカルは気怠い身体を夜具に沈ませながら、傍ら
の佐為に顔だけを向けた。
「佐為、あのさぁ」
「何です?光」
 小袖の乱れを直した佐為は、優雅な仕種で近づき、火照りの治まった
ヒカルの顔を覗き込み、頬にかかった髪を指先で払った。
「近衛とも、あんなこと、したことあんの?」
 ヒカルは佐為の手をそっと押さえながら、そう訪ねた。
 佐為は男同士の行為に馴れているように見えたが、この頃はそういう
風習があまり珍しくなかったせいかも知れない。初め、ヒカルが抱きつ
いたとき、佐為には戸惑いがあった。それは、光とは情を交わしたこと
がないからではないか。そう思えた。
「いいえ」
「ほんとに?」
「えぇ。ですが・・・光を、抱きたいと思ったことはあります」
「そう、なんだ。近衛は、それに気がついてた?」
「そうですね。気がついていたかも知れません。光は、人の機微に聡い
ところがありましたから」
 それが、好意にしろ悪意にしろね。
「ふーん、オレとは大違いだな」
 ヒカルはどちらかといえば鈍感な方だ。特に好意には。幼馴染みから
一歩踏み出したがっていたあかりの気持ちにも気がつかず、知ったのも
本人から、私、ずっとヒカルが好きだったんだよと、過去形で告げられ
た後だった。そして、もう一人、自分を長い間想っていた相手にも。
「佐為はさ、近衛が好き?」
「えぇ。光は、私にとって、一番愛しい子ですよ」
「そっか、良かった・・・」



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