眩暈 11 - 15
(11)
「そろそろ布団敷くか…おい塔矢、手伝ってくれよ」
碁盤を片付けベット下にスペースを空けて来客用の布団を敷こうとするが、アキラは動こうとしない。
「布団は…敷かなくてもいい」
「何言ってんだよ?お前の寝る場所がないだろう」
ベットに座って不思議そうな顔で見つめてくるヒカルに、アキラはそろそろと近付いてきた。
「あ、このベットはオレんだからな!ここで寝たいって言われたって、オレだってここが良いんだから…」
「そう言う意味じゃない」
言うや否や、アキラはヒカルをベットに押し倒して、触れるだけのキスをしてきた。
「…こう言う意味だよ」
「だからどう言う意味だ?って、ちょっと重いんだけど…」
「本当に分からない?」
するり、とアキラの手がヒカルの寝間着に入ってきて、確かめるように腹部を撫で上げる。
そのくすぐったさに、ヒカルは笑いを堪えきれず「あはは、ヤメロって!」と色気の無い声を出した。
本当に分からないらしいヒカルに、アキラは少しの間俯いて何か考えていたようだったが、
やがて真っ赤になった顔を上げると、ヒカルの耳元で小声で囁いてきた。
「セックス、しないか」
「エッ、男同士で出来るもんなのか?」
「出来るよ…その……僕が上でもいいだろうか?」
「もう上に乗ってるじゃん」
上だろうが下だろうが、どちらにしてもヒカルはやり方を知らなかったし、アキラに任せるしかないのだった。
拒まれなかった事に、やっとこの瞬間が来たことに、アキラは万感の思いを込めてヒカルを抱きしめる。
首筋に顔を埋めると、石鹸の香りに包まれたヒカルの体臭の心地よさに酔う。眩暈が、した。
(12)
「あっ…」
ヒカルの首筋に顔を摺り寄せて、暫らくの間感慨に耽っていたアキラだったが、
何を思ったのか突然顔を上げ、ヒカルの顔をじっと見つめながら困ったような
声を上げた。
「………」
「な、何だよ…何か不味い事でもあったのか?」
顎に手を当てて何かを考え込むアキラを訝しんだヒカルが不安げな声で聞いて来た。
「…ローションかオイルみたいなもの、持ってないか?」
「オイル?日焼け止めオイルとかか?」
「そう言うんじゃなくて…じゃあ軟膏みたいなクリームとかは?」
「あ、それならある。傷薬でいいか?」
ヒカルは押し倒されたベットから起き上がると、普段は使っていない机の引出しから
チューブ状の軟膏を取り出し、アキラに手渡して「これで良いか?」と聞いた。
頷いたアキラはそれを枕元に置くと、再びヒカルを抱き締めて来た。
深く唇を貪ると、ヒカルの寝間着にしているジャージのファスナーに手をかける。
驚いたヒカルはアキラから慌てて体を離すと、「自分で出来る」と言って、さっさと
脱ぎ始めてしまう。アキラは少し残念そうにしながら、ヒカルに倣って服を脱いだ。
(13)
下着を取るのに戸惑随分時間を要したヒカルだったが、覚悟を決めてそれすらも
脱ぎさって、股間を隠すように内股を擦り合わせながらベットに座ると、やはり
同じように裸になったアキラがその足を開くようにしながら圧し掛かってきて、
キスを求めた。口付けはやがて首筋、鎖骨、胸元へと降りていく。
乳首を舐められるとヒカルはくすぐったさに思わず笑い出してしまいアキラを憮然と
させた。やがてそれは臍を伝って下腹部へ達し、アキラはヒカルのまだ反応を見せない
ペニスの先端にチュッと音を立ててキスをする。ヒカルは驚きと恥ずかしさで顔を
真っ赤にしながら、足をばたつかせて抗議の意を示した。アキラは顔を上げてヒカルの顔を
覗き込みながら「良くなかったか?」と聞いてきたが、そう言う事ではない。
「そっ、そんなとこ舐めるなよ!汚ねーだろ!」
「汚くなんかないよ、さっきお風呂に入ったばかりだし。それに、進藤のだから」
「バッ…何言って……!?とーにーかーく、ダメ!ヤメロったらヤメロ!」
大声で喚くヒカルにアキラは肩を竦めながら「分かった」と言って、今度は手でそこへ
触れてきた。「これなら良いだろう?」と聞くアキラの問いかけに、ヒカルは答える事が
出来なかった。さっきのキスと今の手での刺激でヒカルのペニスは緩やかに勃起し始め、
少しづつ息を上げながらも歯を食いしばってその快感に耐えるのに精一杯だったからだ。
(14)
それをアキラは肯定と受け取り、ヒカルの股間に添えた手を無遠慮に動かし始めた。
竿を扱きながら亀頭を弄くられると、ヒカルは堪えきれずに嬌声を漏らす。
「アッ…アアッ…はぁ…ん、はぁ、うっ…ンッ…」
先程とは打って変わったヒカルの艶っぽい声に、アキラは自らも下半身が疼くのを抑えきれない。
「あっ……はぁ、塔矢、もぅ…出る…」
「いいよ、出しても。大丈夫…」
「ふぅっ…ンンッ……クッ…!」
腰をぶるりと震わせて、ヒカルはアキラの掌に射精した。アキラはそれをティッシュで拭うと、
ベットに沈み込むようにしながら体の力を抜き息を整えているヒカルの顔中にキスを降らせた。
その心地よさと射精後の倦怠感が相俟って、ヒカルはだんだんと眠くなってくる。
しかしアキラに太股をを抱え上げられて更に足を開かれると途端に眠気は飛んで、
ヒカルは素っ頓狂な声を上げてしまう。アキラは指いっぱいに先程の軟膏を取ると、
ヒカルのアヌスに触れて、そこへ塗りつけるように緩やかに撫でる。
むず痒いような感覚と自分でも滅多に触れる事の無い肛門への愛撫に、ヒカルは戸惑い羞恥した。
「やっ…やめろよ、塔矢…とうや!汚いよ、そんなとこ…ヤメテってばぁ…」
目を潤ませて懇願するヒカルに、アキラは更に熱を煽られる。
「ここで、するんだよ。進藤…我慢して」
「な、なに…?あっ、あっ、あっ…」
入り口を撫でまわしていた指が、侵入してくる。痛みよりも未知の感覚に気持ちが悪かった。
(15)
「う…うぅ…とっ…や、嫌だ…ヤだ、止めて…くれ…」
涙が零れてくる。アキラはヒカルの髪にキスをしながら、あやすように囁いた。
「セックス、するんだよ進藤。良いって言ったじゃないか、キミは」
「い、言った…けど、こんな…こんなの、本当に、オレ…わかんない…」
ヒカルの言い訳も聞かず、アキラは指を増やしていく。今度こそヒカルは痛みを感じて、
悲鳴を上げながら、泣き出してしまった。
「うああ!ヒッ…ぅええっ…と、とうや、ヤダ…止めてよ!ひっく……とうやぁ…」
ヒカルの泣き声さえも、アキラを喜ばせてしまう。自分はサディストなのかも知れないと自覚して、
アキラは自嘲したが、行為を止めようとはしなかった。指を更に奥へ進ませて、
ゆっくりと掻き混ぜるように動かすと、ヒカルは身悶えて首を振りいやいやをする。
そのしぐさに、アキラは「可愛いね、進藤」と独り言のように呟いた。
大量の軟膏の助けを借りて、指はヒカルの腸内をくちゅくちゅと音を立てながらスムーズに動き回る。
アキラの長い指先がヒカルの前立腺の近くを掠めると、途端にヒカルはびくりと体を震わせて、
腰をずり上げて逃げるようにした。それを引き戻しながら、アキラは笑みを浮かべて問い掛ける。
「ココが、いいの?」
「うあっ…ン……やめろよ…そこ、何か…ヘン……あぅ!う、ぅん…」
「ココが、進藤の良いところなんだ…」
何度もそこを弄くると、ヒカルの萎えていたペニスは立ち上がり始める。ヒカルは快感に目を
閉じて、引っ切り無しに口から喘ぎ声を漏らした。それを見たアキラはおもむろに指を引き抜いた。
「あっ!」
「進藤…いい?」
熱に浮かされた頭で何を聞かれたのか理解できなかったが、ヒカルはそのまま頷いてしまう。
肛門に怒張したアキラのペニスが宛がわれても、ヒカルはただ荒い息を繰り返すばかりだった。
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