弄ばれたい御衣黄桜下の翻弄覗き夜話 11 - 15
(11)
苦しいのか、それとも気持ちがいいのか、ヒカルは目を閉じたまま眉を寄せ、
胸を大きく上下させている。
その時、ヒカルが、門脇の尖端が奥まで届くのが待ちきれないように、腰を
揺すった。
門脇もたまらなくなって、そのヒカルの無意識の要求に応えるようにピストン
運動を開始していた。
ギリギリまで引きだしては、すぐに押し込み直して根元まで埋める。
目茶苦茶気持ちがよかった。今まで抱いたどの女よりも。
挿入時の、このきつく吸い上げるような締め付けがたまらない。
奥歯を噛みしめ、込み上げる声を押さえようとする切なげな表情がいい。
門脇は夢中になって責め立てた。
両わきに抱えた足を、動かないようにしっかりと腕で押さえて、何度も強く腰を
押し付ける。
と、門脇は、先ほどまで目を閉じていたヒカルが、いつの間にか、自分の肩越し
に何かを擬視しているのに気付いた。
首だけで振り返る。
植え込みの向こうから、男が驚いたようにこちらを見ていた。
さっきまで、そこでセックスをしていた男だ。
女の方は、こちらに気付かなかったのか、スカートの裾の汚れを気にしながら、
こちらに背を向けて歩き去ろうとしている所だ。
男と目が合った。
男には、この光景はどういう風に見えているのだろう。
自分の下で、今にも快楽の谷間に突き落とされそうに見える少年の体は、覆いかぶ
さっている門脇の影に隠れて殆ど見えないはずだ。
見えるとすれば、今、門脇が抱え上げているヒカルの腿。まだ丈の低い芝生に絡む
サラサラとした髪と、美少女めいた卵形の顔の輪郭。
腰を打ち付けられる度、さっき女の足がそうだったように、つっぱて揺れるヒカル
の白いふくらはぎは、あの男の目にはどのように映るのか?
ヒカルの下肢が見えないあの位置からなら、まるで門脇が、年端もいかない美少女を
陵辱しているように見えるだろう。
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その門脇の下で、ヒカルがさらに身を寄せ、体を密着させてきた。男の視線に
気付いているヒカルが、恥ずかしげに、その視界から自分の体を隠そうとして
いるのだ。益々深くまでふたりの体が圧着する。互いの陰毛がこすれ合っていた。
「いいじゃねぇか、見せつけてやろうぜ」
ヒカルは黙って首を横に振った。
門脇がもう一度振り返ると、男が去っていくところだった。
女に置いていかれるのは嫌だったのだろう。
その途端、
「――、あぁっ、あっっ、ああ、あっっ!」
生えかけの芝生に組み伏せられたヒカルの唇から嬌声が洩れ始める。
今までは、植え込みの向こうのカップルの存在を気にして声を抑えていたのだ。
だが、その我慢も殆ど限界に近かったらしい。
男の姿が闇に消えるとたちまち、ヒカルの口から、堰を切ったように次々と、
悦楽を訴える声が上がる。
門脇が抽送を早めれば、その声も同じように早くなり、抽送を緩めれば、声の
間隔も伸びた。
「…はっ……、やだ、やだ……門脇さん……っ」
そう言いながら、ヒカルのほっそりとした手は、門脇の肩にかけられ、しっかり
と、その首根っこをおさえて放さない。
「ぅあ……、あ……、あぁっ…、んっ、んっ」
最初は嫌がっていたくせに、ヒカルが今、この状況を楽しんでいるのは明らか
だった。
「お前、男の癖に、こんなことされて感じて、恥ずかしくないのかよ」
「やめて、言わないで…っ…」
鼻に抜ける甘い声。
鋭敏な反応。
ヒカルの足を持ち上げていた手を離し、へその上辺りまでめくれ上がったシャツの
下に滑り込ませた。
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肌は汗を吹きだして熱を持っていた。その熱さを手のひらに感じながら、門脇は
シャツを胸の上までたくしあげる。あらわになった染み一つない綺麗な腹に顔を
寄せほおずりした。殆ど無毛と言っていいぐらい体毛が薄く、すべすべしている。
目の前にあったヒカルの、コリコリとたち上がった乳首を口に含んだ。
「アァ…………」
その表情を確認しなくとも、ヒカルが感じている事は、秘腔の締め付けが更に
強くなったことで分かる。
これ以上耐えることは、門脇には不可能だった。
一気に抜き差しの速度を増し、奥へ奥へと銜えこうもうとするヒカルの内壁の
蠕動に逆らうように自身を引き抜き、また突き刺し、最後の瞬間へとひた走る。
「やっ、あっっ!あっっ!あっっ!門脇さんっっ!門脇さぁんっっ!」
(すげぇ)
ヒカルの内部の筋肉が、門脇のそれを引っ張り上がるような動きをし、ついに門脇は
降参してヒカルの内部に、自分の粘って濃い体液を吐き出した。
「あぁぁぁぁぁっ!」
ヒカルが苦しいほどの力で抱きついてきた。
門脇は下肢を押し付けるようにして、その腰を引き寄せる。
精液が更に奥まで届くように、しっかりと根元まで挿入する。
やがて、その中にすべてが履きだされると、潮が引くように、ゆっくりとヒカルの
体から力が抜けた。
静かな夜の公園で、二人の荒い息遣いだけが聞こえる。
ヒカルの内部は、門脇を受け入れたまま、まだ断続的に収縮を繰り返している。
自分が男を抱いたという信じられない事実に、門脇は今更ながらに茫然としていた。
最高に気持ち良かった。
そして、こんな屈辱的な行為を進藤ヒカルが受け入れて、自分の下でよがり声を
上げていたと言うことが、また信じられなかった。
女だって、アナルセックスをしかけても最初から感じるわけじゃない。
慣れるまで時間がかかるし、仕込まれなければ快楽を得られるようにはならない
のだ。
そして、そこまで考えて、門脇は慄然とした。
(14)
なんで、気付かなかったんだ。こんな簡単な事に。
女でさえそうなのに、男がこんな風に後ろに入れられて感じるなんて、普通では
絶対にない。
つまり――進藤ヒカルは、男に抱かれるのが初めてではないのだ。
門脇は、自分の下にぐったりと横たわる少年を見た。
名前を呼ぶと、目を開けてこちらをみた。
「進藤、おまえ。誰か他の男と寝たことがあるのか?」
ヒカルは、門脇を見返したまま黙っていた。
その沈黙が、何よりも雄弁に事実を物語っていた。
門脇の知らない場所で、この少年に、夜に羽根を広げて男を迎える蝶に変わること
を、覚えさせた奴がいるのだ。
「誰だよ」
怒りに似た感情が、胸を焦がした。
「誰に抱かれたんだよ」
途端に、進藤ヒカルの瞳にさっきまで宿されていた熱が、嘘のように覚めた。
「門脇さんには、関係ない」
頭に血が上った。
体の中に猛る感情が、ヒカルの中に留まったままの門脇の肉棒を、再び勃起させ
ていた。
手の平で、まるで絞め殺したいみたいに、ヒカルの首を掴んでいた。
「いいさ。お前の体に直接聞いてやるよ」
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男のくせに、股や乳首を責められて、簡単に快楽を覚えることも。
ほんの些細な愛撫への過剰な程の感応も。
そう考えればすべてが納得がいくのだ。
誰か知らない男がこの柔らかい肌に、快楽を刻み、抱かれることの味を覚えさた。
そして、後腔への挿入を官能に変えることが出来るよう、この体をしこんだのだ。
知らない男――いや、もしかしたら知っている男かもしれない。
「もう一度聞くぜ。お前を抱いてたのは誰だ?」
自分の中のそれが、熱と固さを取り戻していることに気付いているだろうに、
ヒカルは恐れげもなく、冷たい目で門脇をじっと見ている。
「そうかよ。それが返事かよ」
処女かと思った女子高生に騙されたようなものだった。
「自分から、言いたくなるようにしてやるよ」
男など知らないだろうと思って抱き留めたその少女の体が、実は援助交際まみれだと
知らされた時と同じような屈辱と怒りが、門脇を突き動かしていた。とんだ売女だ。
門脇の腰が再びヒカルの尻に打ち付けられ始めた。
ほんのりと外灯の明かりが辺りを照らし出すだけの、夜の闇の中で、肌と肌が
ぶつかる音だけが鈍く響いた。
先の情交で門脇自身が放ったもので、ヒカルの中はぬるぬるしていて、ずっと
動かしやすくなっている。
進藤ヒカルは、今までに誰を、あるいは何人をここにこうして受け入れたのか?
そう考えながら挿入を繰り返す門脇だったが、不思議に先程ほどには、ヒカルが
感じている様子がない。
ただ眉を寄せ、しかたなく門脇が終わるのをまっている風に、目を閉じ、顔を
背けているだけだ。
(くそっ)
いったい、さっきと何が違うと言うんだ。
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