失着点 11 - 15
(11)
全身が弛緩し、アキラの口のなかに射したショックから放心状態のヒカルに
アキラの言葉の意味が届くのには少し時間を要した。
アキラはヒカルをうつ伏せにし、首から背骨にそって舌を這わせ始めた。
「あ…、うう…ん」
そんなささやかな触れ方にも今のヒカルの体は敏感に反応した。
意識が虚ろで甘く溢れ出て来る喘ぎ声を抑える事すら出来なかった。
「ん…、ああ…ん、」
アキラの舌が次第に背中の下部へ近付いていく。
そしてなだらかな白い双丘の谷間に差しかかった時、
ヒカルはようやくアキラの意図を察知して目を見開いた。
アキラはまだ、到達していないのだ。その要求を果たそうとしている。
「ダメだよ、塔矢、それは…!」
ヒカルが上半身を起こしてアキラの体の下から這い出ようとした。
しかし、それより先にアキラは右腕をヒカルの腰に回して捕らえ、
左手をヒカルの両太ももの間から前に差し入れてヒカル自身を掴んだ。
「ううっ!」
放出したばかりで幾分縮小したその部分を容赦なく握りしめられて
ヒカルは体を強張らせた。
動くなと言うアキラの指令なのだ。
アキラは体をヒカルの両太ももの間に入れて大きく左右に割らせる。
双丘の谷間の奥深くまでがアキラの眼下に晒された。
あまりの羞恥にヒカルはベッドのシーツをきつく握り、唇を噛んだ。
少しでも足を閉じようとすると容赦なく急所を絞り上げられ
痛々しい悲鳴が冷たく厚い部屋の壁に吸い込まれていった。
(12)
抵抗する気力を失ったのを見届けて、アキラはゆっくりとヒカルを
味わい始めた。
十分にだ液を含ませた舌をきつく閉ざされた挟門まで這わせる。
「…、」
もはや言葉も失い、目を見開いたままヒカルはベッドに顔を伏せアキラの
行為をただじっと受け入れ、何もかも早く過ぎ去るのを待つ他なかった。
アキラの行動はヒカルの常識から大きく外れていた。
前を口に含まれる事の比ではなかった。
そんな場所に舌を触れさせる事への抵抗感は。
そして自分の常識を超える感覚はヒカル自身の体に起こっていた。
今まで味わったことのない感触がアキラの舌の温かさと柔らかさによって
その部分に根を下ろし何かの準備を整えさせていく。
ヒカルの局部を掴んでいた役目を腰に回していた手に兼任させ、
アキラは左手の指を谷間にそって這わせはじめた。
そしてだ液をまとった人指し指を、一気に挟門の中へと滑り込ませる。
ビクリとヒカルは上半身を震わせた。
「いや…あっ!」
同時に前をきつく絞られる。だが、その感触がさらなる刺激を誘い、
再びヒカル自身が硬度を増し始める。指を喰わえて狭道がさらに絞まる。
アキラはヒカルのその反応を予測していたように、後ろの指の動きと前の
ヒカル自身への刺激を連動させ、次第にその動きを増幅させていった。
(13)
「あ、やああっ…!う、うう…んんっ!」
ヒカルには今自分の体に何が起こっているのか分からなかった。
内部のものを体外へ排出する役割しか持っていないはずの器官は次第に
外界からの侵入物を受け入れ、奥に取り込もうとする動きを見せ始めた。
狭道を行き来する指は2本に増やされていた。
アキラは指を挿入したまませりあがって体位を変え、自分の腰をヒカルの腰に
あてがう。アキラ自身、これ以上はないくらいに張り詰めていた。
アキラはヒカルからゆっくり指を引き抜くと、その反動で体内に向かう
筋肉の動きに添わせるようにして自分の先端を入り口に押し当てた。
「あ…っ」
熱い、とヒカルは感じた。
今までとは違う質量を持った侵入物にヒカルの体は拒否反応を示した。
だが熱を持った侵入物はほとんど力を持たない抵抗勢力を無視して
狭道を押し広げていく。
「痛っ…うう…ん!!」
「拒もうとするとダメなんだよ。ヒカル…。」
腰を重ねてヒカルを背中から抱くような姿勢になったアキラが耳元で囁く。
熱く荒い呼吸と共に。
アキラももう限界点に近かったが、ヒカルの深部への執着で制していた。
細胞の一つ一つが限界まで引き延ばされ悲鳴をあげる。
「お願…い、塔…矢、もうゆるし…」
アキラはヒカルの肩や腰を腕で固定し、二人の体の間合いを一気に詰めた。
(14)
「あああっ!」
ヒカルは咽の奥から絞りあげるような悲鳴を発した。
「ああ…!、ううっ!、くっ!…ううーん…!」
あまりの激痛に目の前が真っ白になり、両手でシーツを握りしめる。
「ううっ!んっ!」
ほぼ同時に背後でアキラが声を漏らした。
爪が食い込む程にヒカルの体を強く抱き締め、ビクンッと激しく痙攣する。
ヒカルは腸内に温かなものが広がっていくのを感じた。
指も届かなかったヒカルの深い場所でアキラも到達したのだ。
これでやっと終わる。心臓が脈打つ毎に強まっていく痛みの中でそう思った。
「…気…が済んだ…か?塔…矢…。」ヒカルは背後のアキラに声をかける。
だがアキラは答えず、なかなかヒカルを離そうとはしなかった。
それどころか却って腕に力を入れ、繋がった下腹部も密着させたままだった。
その部分と背中を通してアキラの鼓動がハッキリと伝わって来る。
今、自分はアキラと繋がっている。
互いにずっと心の奥のどこかで密かに持っていた願望。
それがようやく実現したのだ。そのことにヒカルも満足していた。だが、
痛みも疲労もピークをとうに越えていた。
「…頼む、塔矢…、抜い…て…。…オレ、…もうマジに限界…。」
「…だ。」
「…え…?」
「まだ…てない…。」
質量を落としかけていたヒカルの体内のアキラ自身が、ドクンと脈打った。
(15)
「…塔…矢」
カタカタとヒカルは小さく肩を震わせた。
まだ何が足りないのか、ヒカルには分からなかった。これ以上どうしようと
言うのだ。「…お願…い、もう…」
アキラは奥深くまで突き刺さっていた自分自身をゆっくりと引き抜き始めた。
「うう…っ」
腸内のものが外へ引きずり出されるような感触にヒカルは耐えた。
アキラはそうして体をヒカルから少し離すと、ヒカルの片足を引き上げ、
体を入れ替えさせた。
「ぐっ…あっ!」
結合させたままでヒカルの体をうつ伏せから仰向けの状態にさせたのだ。
そしてすぐさま再度奥深くヘ突き入れる。
「うう…んっ!」
あまりの仕打ちに、ヒカルの両目から涙が溢れ出て頬を伝う。
ヒカルと向き合ったアキラはそっと額にキスをし、ヒカルの涙を舐めとった。
「…一緒にイキたいんだ…。」
アキラのその言葉にヒカルは首を横に振った。
涙を滲ませた瞳で、アキラに訴えようとした。もう無理だと。
アキラがわずかに動くだけでも結合部分が引き裂けそうに痛むのだ。
だがアキラの瞳は本気だった。
アキラはもう一度ゆっくり自分自身を引き抜き、抜けそうな部分でまた
中へ突き入れる。そしてそれを繰り返す動きを始めた。
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