粒くらべ 11 - 15
(11)
自分で試したのかよ、と心の中でアキラに突っ込みながらもヒカルは全身を緊張させてそれを
受け入れた。
ゆっくりと慎重にアキラがそこに体重をかけてきて、ざわざわとした異物がヒカルの粘膜を
押し広げる感覚が増した。
「う…あ…」
神経が集まった入り口付近の粘膜一つ一つに小さな突起が食い込んでくるような
大きな触感にヒカルはビクビクと身を震わせた。
思わず侵入を拒もうとその部分を閉じようとすると繊細な粘膜に粒ツブが一斉に食い込み、
それから逃れようと力を抜くと容赦なく侵入が続行される。
「あ…ひっ、…あ…んっ…」
「凄いよ、進藤のここがボクを食べているみたいだ…」
感心するようにその様子を観察しながらアキラもかなり興奮の度合いを強めているようだった。
アキラが言っていた通り、トゲトゲしいものというよりは、見た目よりイソギンチャクのような
ソフトな触手が潜り込んでくるような奇妙な感じだった。
それでも例えようもない異物感にヒカルは自分の体が変になりそうだった。
「と、塔…矢…、まだ…っ?」
「まだ全然入っていないよ、進藤」
(12)
そう言いながらアキラの動きはそこで止まってしまった。
進みもせず、戻りもしないで敏感な箇所で留まられて、ヒカルは半分怒るようにアキラを
睨んだ。それでも呼吸するだけでも嫌でも粘膜に食い込んだ小さな突起がヒカルに淡い
電流を与えて来る。
ふいにアキラがその場所で自分の腰を揺らした。
「くあっ…」
中で無数の触手がざわめいてヒカルは脚を閉じようとしたが、すぐにアキラに元通りに
大きく開かされた。触手が触れているところよりもう少し奥のところがジンジンと疼いていた。
もう少し、あと少し、欲しい――とヒカルの内部が要求する。
「ここで止めて欲しいの?本当に…?」
意地の悪いアキラの問いかけにヒカルは更に怒ったような目付きで睨み返した。
それでも徹底的に不利な立場には違いなかった。
「どうして欲しい?」
再度の問いかけにヒカルは唇を噛んだ。こいつはこうやっていつもオレの反応を楽しんでいる。
この妙なコンドームだって、そういう執念で探してきたんだろう――いつだってこいつは――
「…い…で」
「よく聞こえない。もう一度はっきり教えてくれ」
(13)
ヒカルは目を閉じて息を吐きながら答えた。
「やめないで…もっと…奥まで…来て…」
「このくらい?」
そう言ってアキラが腰を押し込むが、それは本当に僅かに動いただけだった。
「ちが…もっと…」
「もっとって、…どのくらい?」
そうやって焦らされている間にもどんどん中途半端な刺激にヒカルの中で苛立った熱が
高まり暴れ回っている。耐え切れなくなってヒカルは叫んだ。
「もっと…ずうっと奥までっ…!さっきみたいに…強くして…っ」
「わかった…」
アキラはヒカルの両足首を掴んだまま、ヒカルの体に覆いかぶさるようにして体勢を整えると
「いくよ…」
とヒカルの中に腰を沈めた。
何か未知のものに体内を犯されるような刺激にアキラの体の下でヒカルは悲鳴をあげた。
「ひっ…い…あっ」
重心を定めるように最初ゆっくり進めると、その後はアキラは一息に深部にそれを押し込んだ。
小さな生き物の集合体が腸の中で膨れ上がってくるような嫌悪感と、それ以上に
腸壁に柔らかく細やかな突起が食い込み掻きむしられながら一気に突き上げられ、
次の瞬間、ヒカルの中で渦巻いていた熱が鮮烈に弾けた。
(14)
「…っ!…っ!!」
もはや声もあげられない状態でアキラの下でヒカルの体が二度三度強く震えた。
「入っただっけでイッちゃったんだね…」
感心したようにアキラにそう言われて更にヒカルの体が羞恥に紅く染まった。
押し入った状態でそのままアキラは動かなかったが、一向にヒカルの呼吸が激しく
全身の痙攣も収まらないのを見て、アキラが尋ねる。
「もしかして進藤、イッたまま?」
ヒカルは紅潮した頬で首を横に振るが、実際先刻の激しいうねりが下腹部の奥で
ヒカルを翻弄していた。こんな経験は初めてだった。
そのうねりから逃げようと身を締めると例の触手のような異物が粘膜に食い込む。
それでなくても呼吸や激しい鼓動一つ一つ毎にジンジンと異物が存在感を主張するのだ。
「…もオ…抜いて…ヤだ…ア」
ようやく収まりかかった吐息でヒカルは懇願した。
そんなヒカルの表情を間近で眺めようとするように、アキラが身を屈めて顔を寄せて来た。
当然その分ヒカルの下腹部に圧迫感がかかって、「うーっ」とヒカルは低く呻いた。
(15)
「…進藤がこんなに乱れるの、初めて見た」
心の底から愛おしいものを愛でるようにアキラは優しいキスをヒカルの目蓋や鼻筋、額に
這わせ、半開きのままの唾液に濡れた小さな唇を捕らえた。
「んん…っ」
アキラが絡ませて来た舌にヒカルも従順に応え、アキラが早く納得してこの行為を済ませるのを
願った。だが長い濃厚なキスの次にアキラが発した言葉はそんなヒカルの希望とは
違うものだった。
「もっと乱したい…君を狂わせたい…」
ほとんど抵抗する気力もなくぐったり両手を左右に投げ出してぼんやりアキラの顔を見つめていた
ヒカルの瞳がその言葉にハッと見開かれた。
「なっ…」
上半身を起こそうとしたヒカルをアキラがなだめるようにベッドの上に押さえ込み、
しっとり汗が滲んだ首筋にキスを這わす。
「ダメだってば…もう…塔矢ア…っああ!」
抵抗しようと体に力を入れると体内で触手が膨れ上がるような刺激を送り込まれ、ヒカルは
もうどうにも出来ない状態だった。
それを見越しているようにゆっくりヒカルの胸元周辺を唇でなぞった後、アキラは
その胸の片方の突起を口に含んだ。泣き声に近い悲鳴があがった。
「ひ…ああっ…!!」
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