初めての体験 110 - 115


(110)
 社は、恋人を作らなかったことを少し後悔した。これから先、どうすればいいのか
見当もつかない。しまらんな〜オレってヤツは…。ヒカルは好きにしてかまわないと
言ったが、乱暴な真似はしたくない。だけど、自分が最後までそうしないでいられる自信は
全くない。
 悩む社のTシャツに、ヒカルが手を掛けた。そのまま、胸まで捲り上げる。
「え…?ちょぉ、進藤…」
社は狼狽えた。かまわずヒカルは、社の胸に口づける。そして、胸に顔をすりつけるようにして、
社を見上げた。
「オレがしてあげる。」
 えええぇぇぇぇ――――――――――――――!!!
それって、オレがヤラレるってことなんか?この可愛い進藤に?
 慌ててヒカルを離そうとしたが、逆にヒカルは、社を思い切りベッドに突き飛ばした。
「わわわ…!」
仰向けにベッドに倒れた社に、ヒカルがダイブするように飛びついた。
「心配しなくていいよ。社って、可愛い…」
そう言いながら、キスをしてくれた。今日だけで何回キスしたっけ?でも、もっとしたい。
甘い唇。柔らかい舌。頭がクラクラする。
 ヒカルは、ボーっとしている社から一旦離れると、自分で服を脱ぎ始めた。ぼんやりと
それを眺めていたが、ヒカルの裸体が少しずつ露わになり始めると、いっぺんに正気に戻った。
めっちゃキレイや……
社の想像したとおり、ヒカルの身体はどこもかしこも、簡単に壊れそうなくらい華奢だった。
陽の光にあたっていない、胸や腿は白くて、目が眩みそうだ。


(111)
 ヒカルが近づいてくる。社は、身体を起こしてヒカルを待った。細い腰に手を伸ばした。
社がヒカルを捕らえるより先に、ヒカルに手をつかまれた。ヒカルはそのまま跪くと、
社の指先に口づけた。
「あ…進藤…」
指を一本ずつ愛撫するように、口に含む。くすぐったいような、気持ちいいような…むず痒い
妙な感覚が社を包んだ。
 愛らしい唇から、紅い舌がちらちらと覗く。それを見た瞬間、血液が一気に下半身に
集中した。
―――――げっ!やばい!節操のないやっちゃ……
社は、それを隠そうと足をもぞつかせたが、ヒカルの目はしっかりとその変化を捕らえていた。
 ヒカルは微笑んで、社のジーンズのファスナーを下ろした。音がやけに響く。ジーンズの
ファスナーを下ろす音が、これほど艶めかしくきこえたことはなかった。
「進藤…あの…」
この場合、自分はどうすればいいのだろうか。一瞬の間に、いろんな考えが浮かんだが、
結局、ヒカルに任せるのが一番確かだという結論に達した。
「心配しないで…オレに任せて…ね?」
その優しい…だが力強い言葉に、社は複雑な気持ちだった。自分がとても情けない。
 そして、自分の分身も情けないことこの上ない。ヒカルの指が触れただけで、達して
しまいそうになった。が、全ての気力を振り絞り何とか堪えた。いくら何でも、それは格好悪すぎる。
でも、このままではいつそうなってもおかしくない。それくらい気持ちがイイ…!
 ヒカルの指が社自身を優しくさする。両手で包むようにして擦り上げらる度に、身体が
ふるえ、声が漏れる。
「ああ…進藤…うぁ…」
「気持ちイイ?イってもいいよ?」
そう言われて、素直にイクわけにはいかない。何とか堪えなければ…何とか…ああ…でも…イイ!
 気を紛らわせるため、囲碁のことを考えた。しかし、それは逆効果だった。あのハラハラするような
今日の一局やヒカルの真剣な表情を思い出してしまった。可愛い外見とは裏腹のシビレるような
手を打つ強敵。その進藤がオレのモノを…それを考えると、すぐにでも弾けてしまいそうだ。
―――――そや!今日の監督の先生!渡辺先生ゆうたか、あのオッさん…
顔を思い浮かべてみる。魚を思わせる唇や、ゲジゲジというのも生ぬるいあの眉毛…。
吹き出してしまった。よっしゃぁ!これで、当分持つやろ。
 いきなり笑い出した社を、ヒカルがびっくりした表情で見つめていた。


(112)
 しかし、社の抵抗もここまでだった。社に男の意地があるように、ヒカルにも意地が
あったようだ。どんな意地なのかは、怖いので、この際考えないようにした。
「あ…アカン!進藤!ああっ」
ヒカルが社を舐めたのだ。先端にそっと口を付けると、そのまま含んだ。赤ん坊がミルクを
飲むように先端を舌で押すようにして、吸い上げた。
 社は、簡単に陥落した。体中をけだるい心地よさが包んでいる。社の吐き出したモノを
ヒカルは目の前で飲んで見せた。社は、驚いてヒカルを凝視した。
―――――飲んだ…飲んでしもた……進藤が…オレのンを…全部…
イったばかりなのに、また熱くなってきた。これが、ヒカルの手なのか?こんな姿を見せられて、
我慢できるヤツはいない。

 「社…ゴメン…ちょっと待ってて…」
ヒカルがリュックの中から、何か小さな瓶を取りだした。
「進藤…ナニそれ?」
何の含みもない純粋な好奇心から、訊ねた。
「これは…その…」
ヒカルは、モジモジと言いにくそうに口ごもった。
「このままじゃ入らないから…これで…その…」
 社は絶句した。ヒカルに対してではない。自分の間抜けさ加減にだ。
ああああぁぁ―――――――――――――――――!!
オレは、どこまで鈍感やねん!言いにくいこと言わせて…進藤に恥かかすなんて…!
 社は、ヒカルに謝ろうとした。だが、上手い言葉が出てこない。そんな社の態度を
どう受け取ったのか、ヒカルはちょっと困ったような哀しげな笑顔を浮かべていた。
「ここでするの恥ずかしいから…」
バスルームに行こうとしたヒカルを、抱きしめる。
「オレにやらせてくれへんか…?ヘタやけど…進藤にしたい…」
そう言ってキスをした。ヒカルの甘い唇から、微かに自分の味がした。


(113)
 ヒカルをベッドに寝かせると、社は、自分も服を全部脱ぎ捨てた。SEXのやり方なんて
知らない。でも、ヒカルが社にしてくれたように、社もヒカルを気持ちよくしてあげたかった。
ヒカルの口づけが社をとろかしたように、ヒカルにも感じて欲しい。
 社は、ヒカルの身体に改めて見入った。何度見ても、やっぱりキレイだ。細い首筋に
触れてみた。ヒカルの身体がビクッと震えた。慌てて手を引っ込める。傷つけるのが怖かったから…。
気を取り直して、もう一度、頬や顎、首筋をなぞる。肌の感触が気持ちイイ。ヒカルの
温かな肌は、碁石の冷たい感触しか知らなかった社に感動を与えた。
――――――アホか!オレが気持ちようがって、どうすんねん!
進藤を気持ちようしたらなアカンのや!
そうは思っても、ヒカルの滑らかな肌の感触はなんとも言えず心地よく、社は手を離すことが
できなかった。何度も同じ場所を繰り返して撫でていると、ヒカルの唇から、微かに息が漏れた。
「あぁ…やしろ…」
ヒカルは目を閉じて、社の手の動きに全身を集中させているようだった。社の気持ちを感じ取って、
社を全身で感じようとしていた。ヒカルの気持ちがうれしかった。自分の下手な愛撫に
応えてくれようとしている。堪らなく愛しい。メチャクチャ好きや…進藤…。


(114)
 無意識のうちにヒカルの肌に唇を寄せていた。首筋を軽く吸った。
甘いのは唇だけやないんや…
他の場所はどうなんだろうか?もっと知りたい。いろんなところに触れてみる。指先や
唇をつかって、ヒカルの身体を確かめようとした。
「ア…やだ…」
社が胸の突起に触れたとき、ヒカルが小さく喘いだ。木苺のようなそれを口に含んでみる。
甘い。もしかしたらヒカルは、砂糖菓子か何かで出来ているのではないだろうか?一口だけじゃ
物足りない。何度も舌で転がしていると、少し大きくなった。それに、軽く歯を立ててみる。
「やしろ…やだってばぁ…あぁ…」
いくら社でも、本当に嫌がっているかどうかくらいはわかる。ヒカルの頬は上気し、全身
うっすらと薄い桃色に染まっていた。自分の無骨な指先が、ヒカルに快感を与えている。
社は歓喜した。
―――――進藤…オマエのためやったら、何でもする!
 ヒカルの股間に触れた。さっき、自分がしてもらったように、ヒカルにも返したい。
社は、それをゆっくりとさすった。
「あぁ!ハァ…ア…ん…」
ヒカルが、吐息混じりの甘い悲鳴を上げた。手の中のヒカルは、ヒクヒクと震えながら、
蜜を溢れさせている。まるで社を誘っているようだった。吸い寄せられるように、唇を
近づけた。まったく躊躇いがなかったと言えば、ウソになるが……ヒカルの声が、姿が、
社の中の常識を粉々にうち砕いた


(115)
 温かく湿ったモノに包まれて、ヒカルは一際大きな嬌声をあげた。ヒカルのように上手くは
できないが、社は懸命に仕えた。辿々しく舌を這わせ、しゃぶる。拙い愛撫が余計に、
ヒカルを煽っていることに社は気づいていなかった。ただ、ただ、ヒカルを喜ばせて上げたい
その一心から、奉仕し続けた。いや、なにより、とろけるように甘いヒカルの全てを味わい
尽くしたかったのだ。
「やしろ…きて…おねがい…」
ヒカルが社を呼んだ。社は、一瞬戸惑った。が、すぐに言葉の意味を理解して、ヒカルが
持っていた瓶を手に取った。中の液体を手にたっぷりつけ、ヒカルの後ろに指をあてがう。
 恐る恐る指を沈める。ヒカルに苦痛を与えないように、ゆっくりと静かに内部に侵入させた。
「…!」
ヒカルは、全身の力を抜いて社の行為を受け入れた。指を前後に動かすと、ヒカルが小さな
吐息を漏らした。指の動きが激しくなるにつれ、か細い吐息は確かな嬌声へと変化していった。
 ヒカルの嬌態を目の当たりにして、社は興奮した。もっと、感じて欲しい。思い切って
指を増やした。中で指を自在に動かし、ヒカルを翻弄する。
「あ、あ、あ、あ…やしろ…やしろ…」
自分を求める声が強くなる。もう我慢の限界だ。社は、昂ぶっている自分自身にも液体を
塗りこむと、ヒカルの足を大きく広げそこに身体を割り込ませた。
「ええか?」
目に涙を滲ませて、ヒカルが何度も頷いた。



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