初めての体験 110 - 117
(110)
社は、恋人を作らなかったことを少し後悔した。これから先、どうすればいいのか
見当もつかない。しまらんな〜オレってヤツは…。ヒカルは好きにしてかまわないと
言ったが、乱暴な真似はしたくない。だけど、自分が最後までそうしないでいられる自信は
全くない。
悩む社のTシャツに、ヒカルが手を掛けた。そのまま、胸まで捲り上げる。
「え…?ちょぉ、進藤…」
社は狼狽えた。かまわずヒカルは、社の胸に口づける。そして、胸に顔をすりつけるようにして、
社を見上げた。
「オレがしてあげる。」
えええぇぇぇぇ――――――――――――――!!!
それって、オレがヤラレるってことなんか?この可愛い進藤に?
慌ててヒカルを離そうとしたが、逆にヒカルは、社を思い切りベッドに突き飛ばした。
「わわわ…!」
仰向けにベッドに倒れた社に、ヒカルがダイブするように飛びついた。
「心配しなくていいよ。社って、可愛い…」
そう言いながら、キスをしてくれた。今日だけで何回キスしたっけ?でも、もっとしたい。
甘い唇。柔らかい舌。頭がクラクラする。
ヒカルは、ボーっとしている社から一旦離れると、自分で服を脱ぎ始めた。ぼんやりと
それを眺めていたが、ヒカルの裸体が少しずつ露わになり始めると、いっぺんに正気に戻った。
めっちゃキレイや……
社の想像したとおり、ヒカルの身体はどこもかしこも、簡単に壊れそうなくらい華奢だった。
陽の光にあたっていない、胸や腿は白くて、目が眩みそうだ。
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ヒカルが近づいてくる。社は、身体を起こしてヒカルを待った。細い腰に手を伸ばした。
社がヒカルを捕らえるより先に、ヒカルに手をつかまれた。ヒカルはそのまま跪くと、
社の指先に口づけた。
「あ…進藤…」
指を一本ずつ愛撫するように、口に含む。くすぐったいような、気持ちいいような…むず痒い
妙な感覚が社を包んだ。
愛らしい唇から、紅い舌がちらちらと覗く。それを見た瞬間、血液が一気に下半身に
集中した。
―――――げっ!やばい!節操のないやっちゃ……
社は、それを隠そうと足をもぞつかせたが、ヒカルの目はしっかりとその変化を捕らえていた。
ヒカルは微笑んで、社のジーンズのファスナーを下ろした。音がやけに響く。ジーンズの
ファスナーを下ろす音が、これほど艶めかしくきこえたことはなかった。
「進藤…あの…」
この場合、自分はどうすればいいのだろうか。一瞬の間に、いろんな考えが浮かんだが、
結局、ヒカルに任せるのが一番確かだという結論に達した。
「心配しないで…オレに任せて…ね?」
その優しい…だが力強い言葉に、社は複雑な気持ちだった。自分がとても情けない。
そして、自分の分身も情けないことこの上ない。ヒカルの指が触れただけで、達して
しまいそうになった。が、全ての気力を振り絞り何とか堪えた。いくら何でも、それは格好悪すぎる。
でも、このままではいつそうなってもおかしくない。それくらい気持ちがイイ…!
ヒカルの指が社自身を優しくさする。両手で包むようにして擦り上げらる度に、身体が
ふるえ、声が漏れる。
「ああ…進藤…うぁ…」
「気持ちイイ?イってもいいよ?」
そう言われて、素直にイクわけにはいかない。何とか堪えなければ…何とか…ああ…でも…イイ!
気を紛らわせるため、囲碁のことを考えた。しかし、それは逆効果だった。あのハラハラするような
今日の一局やヒカルの真剣な表情を思い出してしまった。可愛い外見とは裏腹のシビレるような
手を打つ強敵。その進藤がオレのモノを…それを考えると、すぐにでも弾けてしまいそうだ。
―――――そや!今日の監督の先生!渡辺先生ゆうたか、あのオッさん…
顔を思い浮かべてみる。魚を思わせる唇や、ゲジゲジというのも生ぬるいあの眉毛…。
吹き出してしまった。よっしゃぁ!これで、当分持つやろ。
いきなり笑い出した社を、ヒカルがびっくりした表情で見つめていた。
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しかし、社の抵抗もここまでだった。社に男の意地があるように、ヒカルにも意地が
あったようだ。どんな意地なのかは、怖いので、この際考えないようにした。
「あ…アカン!進藤!ああっ」
ヒカルが社を舐めたのだ。先端にそっと口を付けると、そのまま含んだ。赤ん坊がミルクを
飲むように先端を舌で押すようにして、吸い上げた。
社は、簡単に陥落した。体中をけだるい心地よさが包んでいる。社の吐き出したモノを
ヒカルは目の前で飲んで見せた。社は、驚いてヒカルを凝視した。
―――――飲んだ…飲んでしもた……進藤が…オレのンを…全部…
イったばかりなのに、また熱くなってきた。これが、ヒカルの手なのか?こんな姿を見せられて、
我慢できるヤツはいない。
「社…ゴメン…ちょっと待ってて…」
ヒカルがリュックの中から、何か小さな瓶を取りだした。
「進藤…ナニそれ?」
何の含みもない純粋な好奇心から、訊ねた。
「これは…その…」
ヒカルは、モジモジと言いにくそうに口ごもった。
「このままじゃ入らないから…これで…その…」
社は絶句した。ヒカルに対してではない。自分の間抜けさ加減にだ。
ああああぁぁ―――――――――――――――――!!
オレは、どこまで鈍感やねん!言いにくいこと言わせて…進藤に恥かかすなんて…!
社は、ヒカルに謝ろうとした。だが、上手い言葉が出てこない。そんな社の態度を
どう受け取ったのか、ヒカルはちょっと困ったような哀しげな笑顔を浮かべていた。
「ここでするの恥ずかしいから…」
バスルームに行こうとしたヒカルを、抱きしめる。
「オレにやらせてくれへんか…?ヘタやけど…進藤にしたい…」
そう言ってキスをした。ヒカルの甘い唇から、微かに自分の味がした。
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ヒカルをベッドに寝かせると、社は、自分も服を全部脱ぎ捨てた。SEXのやり方なんて
知らない。でも、ヒカルが社にしてくれたように、社もヒカルを気持ちよくしてあげたかった。
ヒカルの口づけが社をとろかしたように、ヒカルにも感じて欲しい。
社は、ヒカルの身体に改めて見入った。何度見ても、やっぱりキレイだ。細い首筋に
触れてみた。ヒカルの身体がビクッと震えた。慌てて手を引っ込める。傷つけるのが怖かったから…。
気を取り直して、もう一度、頬や顎、首筋をなぞる。肌の感触が気持ちイイ。ヒカルの
温かな肌は、碁石の冷たい感触しか知らなかった社に感動を与えた。
――――――アホか!オレが気持ちようがって、どうすんねん!
進藤を気持ちようしたらなアカンのや!
そうは思っても、ヒカルの滑らかな肌の感触はなんとも言えず心地よく、社は手を離すことが
できなかった。何度も同じ場所を繰り返して撫でていると、ヒカルの唇から、微かに息が漏れた。
「あぁ…やしろ…」
ヒカルは目を閉じて、社の手の動きに全身を集中させているようだった。社の気持ちを感じ取って、
社を全身で感じようとしていた。ヒカルの気持ちがうれしかった。自分の下手な愛撫に
応えてくれようとしている。堪らなく愛しい。メチャクチャ好きや…進藤…。
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無意識のうちにヒカルの肌に唇を寄せていた。首筋を軽く吸った。
甘いのは唇だけやないんや…
他の場所はどうなんだろうか?もっと知りたい。いろんなところに触れてみる。指先や
唇をつかって、ヒカルの身体を確かめようとした。
「ア…やだ…」
社が胸の突起に触れたとき、ヒカルが小さく喘いだ。木苺のようなそれを口に含んでみる。
甘い。もしかしたらヒカルは、砂糖菓子か何かで出来ているのではないだろうか?一口だけじゃ
物足りない。何度も舌で転がしていると、少し大きくなった。それに、軽く歯を立ててみる。
「やしろ…やだってばぁ…あぁ…」
いくら社でも、本当に嫌がっているかどうかくらいはわかる。ヒカルの頬は上気し、全身
うっすらと薄い桃色に染まっていた。自分の無骨な指先が、ヒカルに快感を与えている。
社は歓喜した。
―――――進藤…オマエのためやったら、何でもする!
ヒカルの股間に触れた。さっき、自分がしてもらったように、ヒカルにも返したい。
社は、それをゆっくりとさすった。
「あぁ!ハァ…ア…ん…」
ヒカルが、吐息混じりの甘い悲鳴を上げた。手の中のヒカルは、ヒクヒクと震えながら、
蜜を溢れさせている。まるで社を誘っているようだった。吸い寄せられるように、唇を
近づけた。まったく躊躇いがなかったと言えば、ウソになるが……ヒカルの声が、姿が、
社の中の常識を粉々にうち砕いた
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温かく湿ったモノに包まれて、ヒカルは一際大きな嬌声をあげた。ヒカルのように上手くは
できないが、社は懸命に仕えた。辿々しく舌を這わせ、しゃぶる。拙い愛撫が余計に、
ヒカルを煽っていることに社は気づいていなかった。ただ、ただ、ヒカルを喜ばせて上げたい
その一心から、奉仕し続けた。いや、なにより、とろけるように甘いヒカルの全てを味わい
尽くしたかったのだ。
「やしろ…きて…おねがい…」
ヒカルが社を呼んだ。社は、一瞬戸惑った。が、すぐに言葉の意味を理解して、ヒカルが
持っていた瓶を手に取った。中の液体を手にたっぷりつけ、ヒカルの後ろに指をあてがう。
恐る恐る指を沈める。ヒカルに苦痛を与えないように、ゆっくりと静かに内部に侵入させた。
「…!」
ヒカルは、全身の力を抜いて社の行為を受け入れた。指を前後に動かすと、ヒカルが小さな
吐息を漏らした。指の動きが激しくなるにつれ、か細い吐息は確かな嬌声へと変化していった。
ヒカルの嬌態を目の当たりにして、社は興奮した。もっと、感じて欲しい。思い切って
指を増やした。中で指を自在に動かし、ヒカルを翻弄する。
「あ、あ、あ、あ…やしろ…やしろ…」
自分を求める声が強くなる。もう我慢の限界だ。社は、昂ぶっている自分自身にも液体を
塗りこむと、ヒカルの足を大きく広げそこに身体を割り込ませた。
「ええか?」
目に涙を滲ませて、ヒカルが何度も頷いた。
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「アアァ――――――――」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。その瞬間、目の眩むような快感が社を包んだ。
「あん…やぁ…ひぁ……」
社が腰を揺する度に、ヒカルの口から悲鳴が漏れる。だが、それは苦痛からではない。
瞳に涙が滲んでいるのも哀しいからではない。自分を受け入れ、快感に浸っているからだ。
――――――進藤!好きや!
心の中で何度も叫んだ。ヒカルを求めて、動きが徐々に激しくなる。
「ああ!やめて……やしろ…!あぁ…う…ん…」
――――――ホンマに…好きやねん……
「ああぁ―――!」
ヒカルが小さく叫んで、社を締め付けた。社の身体は一瞬緊張し、その後ゆっくりと弛緩した。
「だけど、意外だったな…」
ヒカルが、社の胸に身体を預けたまま呟いた。社は、ヒカルの顔を覗き込んだ。
「だって、社かっこいいし、もてそうだもん…こういうことなれてると思ってた…」
社を揶揄しているわけではない。心底感心しているような口調だった。
ヒカルは誉めているつもりなのだろうが、遊び好きのように思われていたのは心外だ。
社はそれを言おうと口を開きかけた。
「ん?どうかした?」
ヒカルの可愛い顔が目の前にあった。大きな瞳で自分を見つめている。
社は、顔を赤らめてそっぽを向いた。
「オレは…オレは…好きなヤツとしか、したないねん!」
照れ隠しに、小さく怒鳴った。
「それって…オレのことが好きってこと?」
真顔で聞き返されて、答えに詰まった。返事を訊かなくても、社の態度や表情を見れば
バレバレだろう。
ヒカルは、ニッコリと笑った。社を虜にした極上の笑顔。
「社…オレ…オマエのこと好きになりそう…」
そう言ってヒカルがキスをしてきた。その一言だけで、ヒカルの与えてくれた優しいキスは、
社の中で変化した。今までとは違う骨の髄から溶かすようなキス。何も考えられなくなった。
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社が目を覚ましたとき、ヒカルはもういなかった。ヒカルの言葉を、頭の中で何度も
反芻した。
――――――社のこと好きになりそう…塔矢の次に…
二番目でも三番目でもいい…ヒカルが好きだと言ってくれた…!
ベッドの上で蹲って膝を抱えた。
「オレ…希望持ってもええんかな…」
社……意外性の男。予想外の一手にドキドキ。
ヒカルがいつもの様に、手帳に書き込んでいるとアキラが後ろから声をかけてきた。
「社のこと…気にいったみたいだね?」
「うん!怖そうに見えるけど、すごく優しくてイイヤツで…」
笑いながら、振り返る。と、一瞬、アキラの瞳が鋭い光を帯びていたように見えて、ヒカルは、
何度も目をしばたたかせた。
「どうしたの?目にゴミでも入った?」
アキラがそう言って、ヒカルの顔に触れてくる。いつもの優しい笑顔。
「ううん。何でもない。」
どうやら、見間違いだったらしい。ヒカルは甘えるようにアキラに抱きついた。
ヒカルが夢と現実の境目を漂っているとき、アキラの呟きがきこえた。
「一度、シメとくか…」
「何を?」と、聞き返したかったが、瞼が重くて開かなかった。
――――――明日訊いてみよう…
アキラの腕の中で、ヒカルの意識は深く沈み込んでいった。
おわり
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