初めての体験 115 - 123


(115)
 温かく湿ったモノに包まれて、ヒカルは一際大きな嬌声をあげた。ヒカルのように上手くは
できないが、社は懸命に仕えた。辿々しく舌を這わせ、しゃぶる。拙い愛撫が余計に、
ヒカルを煽っていることに社は気づいていなかった。ただ、ただ、ヒカルを喜ばせて上げたい
その一心から、奉仕し続けた。いや、なにより、とろけるように甘いヒカルの全てを味わい
尽くしたかったのだ。
「やしろ…きて…おねがい…」
ヒカルが社を呼んだ。社は、一瞬戸惑った。が、すぐに言葉の意味を理解して、ヒカルが
持っていた瓶を手に取った。中の液体を手にたっぷりつけ、ヒカルの後ろに指をあてがう。
 恐る恐る指を沈める。ヒカルに苦痛を与えないように、ゆっくりと静かに内部に侵入させた。
「…!」
ヒカルは、全身の力を抜いて社の行為を受け入れた。指を前後に動かすと、ヒカルが小さな
吐息を漏らした。指の動きが激しくなるにつれ、か細い吐息は確かな嬌声へと変化していった。
 ヒカルの嬌態を目の当たりにして、社は興奮した。もっと、感じて欲しい。思い切って
指を増やした。中で指を自在に動かし、ヒカルを翻弄する。
「あ、あ、あ、あ…やしろ…やしろ…」
自分を求める声が強くなる。もう我慢の限界だ。社は、昂ぶっている自分自身にも液体を
塗りこむと、ヒカルの足を大きく広げそこに身体を割り込ませた。
「ええか?」
目に涙を滲ませて、ヒカルが何度も頷いた。


(116)
 「アアァ――――――――」
ヒカルが細い悲鳴を上げた。その瞬間、目の眩むような快感が社を包んだ。
「あん…やぁ…ひぁ……」
社が腰を揺する度に、ヒカルの口から悲鳴が漏れる。だが、それは苦痛からではない。
瞳に涙が滲んでいるのも哀しいからではない。自分を受け入れ、快感に浸っているからだ。
――――――進藤!好きや!
心の中で何度も叫んだ。ヒカルを求めて、動きが徐々に激しくなる。
「ああ!やめて……やしろ…!あぁ…う…ん…」
――――――ホンマに…好きやねん……
「ああぁ―――!」
ヒカルが小さく叫んで、社を締め付けた。社の身体は一瞬緊張し、その後ゆっくりと弛緩した。



 「だけど、意外だったな…」
ヒカルが、社の胸に身体を預けたまま呟いた。社は、ヒカルの顔を覗き込んだ。
「だって、社かっこいいし、もてそうだもん…こういうことなれてると思ってた…」
社を揶揄しているわけではない。心底感心しているような口調だった。
 ヒカルは誉めているつもりなのだろうが、遊び好きのように思われていたのは心外だ。
社はそれを言おうと口を開きかけた。
「ん?どうかした?」
ヒカルの可愛い顔が目の前にあった。大きな瞳で自分を見つめている。
 社は、顔を赤らめてそっぽを向いた。
「オレは…オレは…好きなヤツとしか、したないねん!」
照れ隠しに、小さく怒鳴った。
「それって…オレのことが好きってこと?」
真顔で聞き返されて、答えに詰まった。返事を訊かなくても、社の態度や表情を見れば
バレバレだろう。
 ヒカルは、ニッコリと笑った。社を虜にした極上の笑顔。
「社…オレ…オマエのこと好きになりそう…」
そう言ってヒカルがキスをしてきた。その一言だけで、ヒカルの与えてくれた優しいキスは、
社の中で変化した。今までとは違う骨の髄から溶かすようなキス。何も考えられなくなった。


(117)
 社が目を覚ましたとき、ヒカルはもういなかった。ヒカルの言葉を、頭の中で何度も
反芻した。
――――――社のこと好きになりそう…塔矢の次に…
二番目でも三番目でもいい…ヒカルが好きだと言ってくれた…!
ベッドの上で蹲って膝を抱えた。
「オレ…希望持ってもええんかな…」





 社……意外性の男。予想外の一手にドキドキ。

 ヒカルがいつもの様に、手帳に書き込んでいるとアキラが後ろから声をかけてきた。
「社のこと…気にいったみたいだね?」
「うん!怖そうに見えるけど、すごく優しくてイイヤツで…」
笑いながら、振り返る。と、一瞬、アキラの瞳が鋭い光を帯びていたように見えて、ヒカルは、
何度も目をしばたたかせた。
「どうしたの?目にゴミでも入った?」
アキラがそう言って、ヒカルの顔に触れてくる。いつもの優しい笑顔。
「ううん。何でもない。」
どうやら、見間違いだったらしい。ヒカルは甘えるようにアキラに抱きついた。

 ヒカルが夢と現実の境目を漂っているとき、アキラの呟きがきこえた。
「一度、シメとくか…」
「何を?」と、聞き返したかったが、瞼が重くて開かなかった。
――――――明日訊いてみよう…
アキラの腕の中で、ヒカルの意識は深く沈み込んでいった。

おわり


(118)
 『どうして、こんなことになっちゃったんだろう…?』
ヒカルは、今の自分の状況を把握しようと懸命に考えた。
ここは、北斗杯の会場となるホテルの一室。
部屋の主は、洪秀英……。
それなのに、どうして、自分の目の前に高永夏がいるのだろうか?
 ヒカルは、秀英のベッドの上で永夏に組み敷かれていた。
『なんで?なんで?なんで〜?』
ヒカルは、ことの成り行きを思い出そうとした。

 ヒカルにはひとつの野望があった。ヒカルはいつも“される”ばかりで、“した”ことが
なかった。一度くらい自分も入れてみたい…と考えていた。それは、忙しい日々の中、
ともすれば忘れがちになってしまうようなささやかな望みだった。
 本当はヒカルだって、入れた経験がないわけではない。アレを数に入れるとすればの
話だが……。
 院生試験を受けると決め、囲碁部と決別した日、ヒカルは加賀達に犯された。ヒカルの
抵抗も空しく、最初はアキラと決めていたその場所を彼らに蹂躙されたのだ。
 部屋の中は淫靡な空気で充満していた。ヒカルが犯されるその光景に、あかりも津田も
明らかに興奮していた。
「あ、あ、あ、やだ、加賀…やめて…」
実験台の上に磔にされたヒカルの腰を加賀が穿つ。ヒカルの悲鳴とグチュグチュという
いやらしい音が部屋の中に響きわたる。その空気に触発されて、あかりがふらふらと立ち上がった。
「〜〜〜〜もうダメ…ヒカルぅ…」
 あかりが身動きのとれないヒカルの上に跨った。そのまま、一気に腰を落とす。
「あ―――――――――――――――――――!」
高い悲鳴は、あかりのものか?それとも自分なのか?
 ヒカルの上で腰を揺するあかりの表情に、いつもの清楚な幼なじみ面影はなかった。
口を大きく開き、涎を流しながら、ヒカルを犯している。そう、ヒカルは犯されたのだ。
「あ、あぁん…」
あかりがイッたあとは、津田が……。そうして、結局、ヒカルはその場にいた全員に犯された。
 あかりは処女だと言っていたが……いくら雰囲気に飲まれたとはいえ、処女にあんなことが
できるのだろうか……?ヒカルは、それ以来女の子がちょっと怖くなった。
 そういうわけで、ヒカルの初体験はわけのわからないうちに終わってしまった。


(119)
 北斗杯で秀英に再開したとき、何故かそのことを思い出した。秀英が自分より、小さかったから
かもしれない。北斗杯のメンバーは、皆、ヒカルより年上か、同じ年でもアキラや社のように
体格で勝るもの達ばかりだった。ヒカルでも勝てそうなのが、秀英と趙石だけだった。
だが、趙石は日本語が話せない。意志の疎通を図るのが困難だと考え、秀英にターゲットを
絞ったのだ。

 「秀英、久しぶりだし時間があったら、ちょっと話しでもしないか?」
ヒカルが笑いかけると秀英は真っ赤になって、俯いた。
―――――いける!
ヒカルは確信した。秀英は自分に気がある。
 ヒカルは、秀英の耳元で囁きかけた。
「なあ、オマエの部屋に行ってもいい?」
「……う、うん…」
秀英は狼狽えながらも、ヒカルを部屋に招いた。
 二人並んで、ベッドに座る。たわいのない話をしながら、秀英の手にそっと自分の手を
重ねた。
 突然、秀英が立ち上がった。あっけにとられるヒカルに向かって、真剣な表情で秀英が
言った。
「し、進藤…三十分…いや、二十分だけ待ってて…頼む…」
二十分経ったら必ず帰る、と一声叫んで、鍵を片手に恐ろしい早さで部屋を出ていった。
 二十分だけという秀英の言葉を信用して、ヒカルは素直に待つことにした。それにしても
どうして、いきなり秀英は出ていったのだろうか?
 暫くして、呼び鈴が鳴った。
「秀英だ!」
ヒカルは、ドアを開けた。目の前にネクタイがあった。
「…?」
ゆっくりと、視線を上げる。
 高永夏が笑って立っていた。


(120)
 ヒカルは慌ててドアを閉めようとしたが、それより早く、永夏は強引に部屋に入ってきた。
茫然と立ち尽くすヒカルを横抱きにして抱え上げると、そのままベッドに連れていった。
 永夏は、ヒカルをベッドの上に組み敷いて、真上から見下ろしている。
「な、なんだよ!離せよ!」
永夏の目的は明らかだ。この状況でわからない方がおかしい。絶対イヤだ。いくら強くても
永夏はそういう対象ではない。彼は、ヒカルの大好きな佐為を貶したのだ。ヒカルにとっての
永夏の認識はあくまでも“敵”だ。“好敵手”ではない。
 ヒカルは逃げようと藻掻いたが、永夏の足と腕でがっちり拘束され身動き出来ない。
「や、離せよ!はな……う…」
永夏はヒカルの唇に無理やり、自分のそれを押しつけた。ヒカルは唇を食いしばって、
永夏を拒む。
「う…うぅ…ん…はぁ…」
しなやかな指が、ヒカルの身体を無遠慮にあちこちまさぐり始めた。
「や…んぁ…」
ヒカルが喘いだ瞬間を逃さず、舌が侵入してきた。
 頭の中が真っ白になった。永夏の愛撫は巧みで、ヒカルに抵抗を許さなかった。永夏の手が
首筋を彷徨い、手際よくネクタイを外した。シャツのボタンを弛め、その中に手を差し入れる。
「やだ…やめて…やめて……」
泣き始めたヒカルの耳元で永夏が何かを囁いた。何を言っているのかはさっぱりわからないが、
言葉の意味はわかる。アキラや社がやるように、甘い睦言を囁いているのだろう。そのまま、
耳を甘噛みされる。
「いや…!」
背筋を奔る甘い痺れに仰け反る喉元に、今度は吸い付かれた。
「もう、やめてよ…」
胸を嬲っていた手は、いつの間にか下半身に移動していた。
 もう何も考えられなかった。何か金属のぶつかるような音が耳に届く。ヒカルは、身体を
捩ろうとしたが、簡単に押さえ付けられた。永夏が、ズボンのベルトを勢い良く引き抜いて、
ズボンを下着ごとずり下ろした。
「イヤ!」
ヒカルはギュッと目を閉じた。


(121)
 その時、突然ドアが開いた。永夏はそちらの方へ目を向けると、手招きをした。ヒカルも
ぼんやりとドアの方を見た。秀英が、躊躇うように近づいてくるのが見えた。
 秀英は、ベッドの上に組み敷かれているヒカルを見て、ゴクリと喉を鳴らした。中途半端に
服を脱がされたその姿は、息を飲むほど色っぽい。上気した肌が、それに艶を添えていた。
 永夏が秀英に何か言った。秀英は頷いて、服を脱ぎ始めた。永夏も再びヒカルを剥きに
かかる。
「秀英…」
ヒカルは、助けを求めるように秀英を見たが、彼は目を逸らして俯いた。
 永夏は、ヒカルを抱えると膝の上に頭を乗せた。そのまま上体を固定し、ヒカルの髪や
喉を優しく擽った。
「あ…はぁ…」
永夏の膝の上で身悶えるヒカルに、恐る恐る秀英が触れた。ヒカルの身体がビクンと
震える。さっきまで永夏に施された愛撫の名残が、まだ身の内に燻っていた。
「や…やぁ…」
ヒカルの反応に気を良くしたのか、秀英は大胆にあちこち弄り始めた。
「あ、あ、あ、やだ、あぁん…」
ヒカルは堪らず、嬌声を上げ始めた。その声に煽られるように、秀英はますます大胆に
なっていく。
「し、進藤…」
興奮し、上擦った声で名前を呼ぶ。何の怖じ気もなく、勃ちあがり始めたヒカル自身を握った。
「ひっあぁ!」
ヒカルは、身体を仰け反らせた。


(122)
 ヒカルが涙を流しながら、快感に身を震わせる。その姿を見て、永夏が耳元で囁いた。
「……?なに…?」
ヒカルが苦しげに眉を寄せた。
「すごく可愛いって…想像していたよりもずっと感度がイイって…」
秀英が代わりに答えた。
 その言葉を聞いた瞬間、カッと血が昇った。
『オマエに可愛いなんて、言われたくねえ!』
ヒカルはキュッと唇を結び、声を噛み殺した。目を閉じ、ジワジワと全身を浸食していくような
愛撫に耐えようとした。
「どうしたんだ?なんで声、出さないの?すごく可愛い声だったのに……」
秀英が焦れたように言う。ヒカルは返事をしなかった。口を開けば、きっと喘ぎ声しか
でない。永夏を喜ばせるような真似はしたくない。
 ヒカルの頭上で、永夏が秀英に何かを告げた。秀英は頷くと、再びヒカルのペニスを
嬲り始めた。
 永夏が何か言う度に、秀英は微妙に手の動きを変化させた。秀英の責めは、ぎこちないながらも的確で、
ヒカルは声を押し殺すのが苦しくなってきた。
 永夏も手触りを楽しむように撫でていたヒカルの首筋から、胸へと手を滑らせた。
「…!!」
秀英の愛撫に呼応するように、永夏もヒカルの胸を優しく揉み始めた。乳輪を軽く擦り、
時折、先端をつつく。
「あ、ハァ…い…いやぁ…イヤァ…」
ヒカルは遂に陥落した。息を吐く間もなく、甘ったるい喘ぎ声が口から溢れ続ける。
「やめてぇ……!」
一際高く叫ぶと、秀英の手の中に放ってしまった。


(123)
 ヒカルの痴態にすっかり興奮してしまった秀英は、グッタリと投げ出されている足を
持ち上げ、その秘肛に熱い昂ぶりを押しつけた。
「あ…やぁ…だめ…」
「秀英!」
ヒカルが弱々しく抗うのと、永夏が鋭く叫ぶのと、ほぼ同時だった。永夏がたしなめるように
一言二言何か言うと、秀英は悄然と肩を落としながらも、素直に腰を引いた。そのかわり、
ヒカルの股間に顔を埋め、濡れたペニスを子猫のように舐め始めた
「や…はぁん…」
「気持ちイイ?ここも舐めればいいの?」
さっき強引に侵入しようとした場所にも、舌を這わせた。
「んん…ダメだよぉ…」
 時折、永夏が低い声で秀英に話しかける。快感に霞む頭を無理矢理働かせ、ヒカルは
そっと二人の様子を盗み見た。永夏は、涼しい顔でヒカルの頬や髪を撫でながら、秀英を
じっと見ていた。一方、秀英の方は永夏の言葉にいちいち頷きながら、ヒカルの身体を弄っている。
『もしかして…レクチャーしてる…?』
 視線に気がついたのか永夏がヒカルに笑いかける。細い顎の下に指を滑らせ、猫の子でも
あやすように擽った。
「あ、ハァン…」
 その声が合図でもあったかのように、秀英は再び、ヒカルの腰を抱えた。
「いい?行くよ…」
「や………待って…あ、あ、アァ―――――――――――――ッ!」
秀英は、一気に腰を進めた。



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