初めての体験 117 - 118
(117)
社が目を覚ましたとき、ヒカルはもういなかった。ヒカルの言葉を、頭の中で何度も
反芻した。
――――――社のこと好きになりそう…塔矢の次に…
二番目でも三番目でもいい…ヒカルが好きだと言ってくれた…!
ベッドの上で蹲って膝を抱えた。
「オレ…希望持ってもええんかな…」
社……意外性の男。予想外の一手にドキドキ。
ヒカルがいつもの様に、手帳に書き込んでいるとアキラが後ろから声をかけてきた。
「社のこと…気にいったみたいだね?」
「うん!怖そうに見えるけど、すごく優しくてイイヤツで…」
笑いながら、振り返る。と、一瞬、アキラの瞳が鋭い光を帯びていたように見えて、ヒカルは、
何度も目をしばたたかせた。
「どうしたの?目にゴミでも入った?」
アキラがそう言って、ヒカルの顔に触れてくる。いつもの優しい笑顔。
「ううん。何でもない。」
どうやら、見間違いだったらしい。ヒカルは甘えるようにアキラに抱きついた。
ヒカルが夢と現実の境目を漂っているとき、アキラの呟きがきこえた。
「一度、シメとくか…」
「何を?」と、聞き返したかったが、瞼が重くて開かなかった。
――――――明日訊いてみよう…
アキラの腕の中で、ヒカルの意識は深く沈み込んでいった。
おわり
(118)
『どうして、こんなことになっちゃったんだろう…?』
ヒカルは、今の自分の状況を把握しようと懸命に考えた。
ここは、北斗杯の会場となるホテルの一室。
部屋の主は、洪秀英……。
それなのに、どうして、自分の目の前に高永夏がいるのだろうか?
ヒカルは、秀英のベッドの上で永夏に組み敷かれていた。
『なんで?なんで?なんで〜?』
ヒカルは、ことの成り行きを思い出そうとした。
ヒカルにはひとつの野望があった。ヒカルはいつも“される”ばかりで、“した”ことが
なかった。一度くらい自分も入れてみたい…と考えていた。それは、忙しい日々の中、
ともすれば忘れがちになってしまうようなささやかな望みだった。
本当はヒカルだって、入れた経験がないわけではない。アレを数に入れるとすればの
話だが……。
院生試験を受けると決め、囲碁部と決別した日、ヒカルは加賀達に犯された。ヒカルの
抵抗も空しく、最初はアキラと決めていたその場所を彼らに蹂躙されたのだ。
部屋の中は淫靡な空気で充満していた。ヒカルが犯されるその光景に、あかりも津田も
明らかに興奮していた。
「あ、あ、あ、やだ、加賀…やめて…」
実験台の上に磔にされたヒカルの腰を加賀が穿つ。ヒカルの悲鳴とグチュグチュという
いやらしい音が部屋の中に響きわたる。その空気に触発されて、あかりがふらふらと立ち上がった。
「〜〜〜〜もうダメ…ヒカルぅ…」
あかりが身動きのとれないヒカルの上に跨った。そのまま、一気に腰を落とす。
「あ―――――――――――――――――――!」
高い悲鳴は、あかりのものか?それとも自分なのか?
ヒカルの上で腰を揺するあかりの表情に、いつもの清楚な幼なじみ面影はなかった。
口を大きく開き、涎を流しながら、ヒカルを犯している。そう、ヒカルは犯されたのだ。
「あ、あぁん…」
あかりがイッたあとは、津田が……。そうして、結局、ヒカルはその場にいた全員に犯された。
あかりは処女だと言っていたが……いくら雰囲気に飲まれたとはいえ、処女にあんなことが
できるのだろうか……?ヒカルは、それ以来女の子がちょっと怖くなった。
そういうわけで、ヒカルの初体験はわけのわからないうちに終わってしまった。
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