初めての体験 119


(119)
 北斗杯で秀英に再開したとき、何故かそのことを思い出した。秀英が自分より、小さかったから
かもしれない。北斗杯のメンバーは、皆、ヒカルより年上か、同じ年でもアキラや社のように
体格で勝るもの達ばかりだった。ヒカルでも勝てそうなのが、秀英と趙石だけだった。
だが、趙石は日本語が話せない。意志の疎通を図るのが困難だと考え、秀英にターゲットを
絞ったのだ。

 「秀英、久しぶりだし時間があったら、ちょっと話しでもしないか?」
ヒカルが笑いかけると秀英は真っ赤になって、俯いた。
―――――いける!
ヒカルは確信した。秀英は自分に気がある。
 ヒカルは、秀英の耳元で囁きかけた。
「なあ、オマエの部屋に行ってもいい?」
「……う、うん…」
秀英は狼狽えながらも、ヒカルを部屋に招いた。
 二人並んで、ベッドに座る。たわいのない話をしながら、秀英の手にそっと自分の手を
重ねた。
 突然、秀英が立ち上がった。あっけにとられるヒカルに向かって、真剣な表情で秀英が
言った。
「し、進藤…三十分…いや、二十分だけ待ってて…頼む…」
二十分経ったら必ず帰る、と一声叫んで、鍵を片手に恐ろしい早さで部屋を出ていった。
 二十分だけという秀英の言葉を信用して、ヒカルは素直に待つことにした。それにしても
どうして、いきなり秀英は出ていったのだろうか?
 暫くして、呼び鈴が鳴った。
「秀英だ!」
ヒカルは、ドアを開けた。目の前にネクタイがあった。
「…?」
ゆっくりと、視線を上げる。
 高永夏が笑って立っていた。



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