○○アタリ道場○○ 12


(12)

兄貴が台所から逃げるように退散してから約1時間以内に夕食が
出来上がった。
まるで絵に描いたようなバランス良い見事な純和風の典型メニューに
兄貴は目を見張る。
「コレ、全部キミが作ったのかい?」
「ハイ、料理は昔から お母さんに少し仕込まれてました。
一般的な家事は出来るようにがウチの家訓ですから」
おかっぱは、客用茶碗(大正時代の骨董食器・金額¥40万ほど)に
ご飯を盛って 兄貴に渡す。
「緒方さん、どうぞ召し上がってください」
「ああ・・・、では頂こう」
おかっぱの作った食事の味は、なかなかのものだった。
味噌汁も化学調味料ではなく、きちんと自然素材からダシを取っていて
とても美味だ。
「・・・・・・ところでアキラくん、割烹着と三角巾 取らないのか?」
「ご飯を食べたら、イロイロとしなくちゃいけないことがあるので、
ボクのことは お構いなく」
そうは言われても、眼前にお袋おかっぱがいては食が進まない。
それどころか腹の底から笑いが込み上げてきて、つい兄貴は噴出した。
その途端、おかっぱの目がキラリーンと光った。いつのまにか右手には
ハリセンを握り締め、兄貴の頭上に雷が落下するが如く、スパパーンンンン
と一発しばく。
「食事をするときは、行儀良くしてくださいっ!」
おかっぱは、兄貴にド迫力の般若顔で注意する。
「ハ、ハイ。スミマセン・・・・・・」



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