少年王アキラ? 12
(12)
「おおおアキラ王、どこに行ってらっしゃったんですか…!」
長身のオガタンがカツカツと靴音を響かせてやってくると、可憐な執事・座間は
さめざめと泣きながら少年王に駆け寄った。
「ぐっすりと寝ておられるから、ベッドを整えてやってくれ」
「わかりました。……何です? このとても懐かしい香り…」
執事・座間は匂いの元を探して鼻をヒクヒクとさせる。やがてその源がオガタン
の端正な顔にこびりついた白いものだということに気づき、また前屈みになると
レェスのハンケチをカリと噛み締めた。
「私がもうその匂いの元を出せないことを知っての嫌がらせ!?」
この執事に嫌がらせしてなんの得があろうか。少年王をベッドの上にそっと降ろ
し、パジャマのボタンをはめてやりながらオガタンは呆れた。
「いや、王子にそんなことを考える余裕はないだろう。彼の頭の中は表彰台とシャ
ンパンとレッドとキスのことで一杯だ」
枕元に揃えて貼り付けられた2枚の報告書を指で弾き、オガタンは『それよりも』
と座間を見すえた。
「おまえはオレに1票いれただろうな?」
可憐な執事はきゅっと唇を噛み締めて、レェスのハンカチで額の汗を拭った。
「すみません。私としたことが、すっかり失念しておりまして…ああん?」
タップダンスもできるようなオガタンの固い靴が、ふくよかな執事の腹に食い込
む。
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