白と黒の宴2 12
(12)
アキラの意志を無視した行為は長く激しく続いた。
その最中からアキラの体は恐怖と怒りが入り混じった感情で小刻みに震えた。
「…もう少しつき合うてもらうで。」
ようやく離れた社の唇から漏れたその声も、肩を掴む力も、表情も
先刻までのものとは別人のようだった。
今の社の目はあの時の、事務所の中でアキラを引き倒した時のものだった。
「何度でも言うとくけど、オレから逃げたいなら逃げてええ。そしたらオレは、
…お前の代りに進藤を抱く。それだけや。」
アキラは社を睨み付ける。噛み締めた唇を震わす。そんなアキラを楽しそうに見つめる社の
冷ややかな笑みは、獲物を追い詰め生け捕る目前の舌舐めずりするハンターのものだった。
そこから近い場所にあったホテルにアキラは連れ込まれた。
廊下の突き当たりにレースのカーテンがかかった形だけの受付には人影があったが
社が大人びているとはいえともかく未成年の可能性のある男の二人連れにさして何かを
咎めに来るような気配はない。
社はアキラの肩を抱いたまま適当に部屋の番号を押してエレベーターに乗り、
ランプが示す方向に廊下を歩いて一つの部屋に入る。
こういう類のホテルを何度も利用している様子だった。
ドアを潜る段階でアキラは一度躊躇し抵抗しようとしたが、社に強引に引き込まれる。
部屋に入ると直ぐに社はアキラを壁に押し付け再度唇を重ねて来た。
社の肩からスポーツバッグが滑り、床に落ちた。
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