指話 12


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最近碁会所の数が増えたと感じる。イベントに参加してくる人の数や年齢層が
変わって来ている。流れが変わりつつあるのは確かだった。
ごくたまにだが、イベント会場以外でサインを求められる事もあった。
―がんばって下さい、応援しています。
同世代くらいの人からそう声をかけられる。
そういう流行の兆しの時にはいろいろな弊害も付きまとうものなのだろう。
今おもちゃやとして囲碁のセットを買う子供達の中の多くは多分、ブームが終われば
二度と碁盤に見向きもしなくなる。彼等を引き付けておく為には魅力的な打ち手の
継続的な存在が必要なのだ。
あの人は、意識的に華やかさを演じているような気がする。
ブランド品のスーツや派手なスポーツカーで囲碁界の頭の古い長老達の眉を
顰ませる一方で、一部の若手の棋士達の強い支持を得ている。
伝統という仮面でからみつく物に坑がおうとしている。自分にはそう見える。
そんな表の顔の陰で彼が日々繰り替えして来た地道な努力を知っているだけに、
少しでもこういう形で彼が意図しているものを歪められるのは許せなかった。
そんなものに目を止めた自分が恥ずかしかった。
自分の目の届かないところで進藤と打ち合うのではと心配していた事が情けなかった。
まず進藤の碁と今一度向き合おう。そして進藤と供にあの人の目指すところの
新しい波、若手の旗手として相応しい存在になろう―。改めてそう決意した。

だが、大手合いに進藤は来なかった。続く若獅子戦にも。
―進藤…?



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