sai包囲網・中一の夏編 12


(12)
「な、なにするんだよ、塔矢!」
 テーブルを越え、無理矢理に進藤の身体をソファに押しつける。その
拍子に、灰皿やペットボトルが薙ぎ落とされたが、かまうことはない。
「キミがsaiと打たせてくれるまで悠長に待っていられるほど、ボク
も気は長くない。打ちたくないと言うのなら、打ちたくなるようにし向
けるまでだ」
「なんだよ。オレを殴ってでも、saiに打たせる気かよ!」
 卑怯だぞ!そうがなり立てる進藤は、こうやって近くで見ると、尚更
小柄で頼りがない。ボクですら、こんなに簡単に動きを封じてしまえる
ほどに。
「殴るなんて、バカなことはしないよ」
「じゃあ、この手を離せよ」
「離したら、みすみすキミを逃がすだけなのに?」
 こんな機会はきっともう二度とない。諦め悪く暴れる進藤に、先程、
隠しておいたセロテープで、後ろに回した両方の親指を一まとめにする
ようにぐるぐる巻きにした。
「うわっ、なんだよ、これ」
「くすっ、けっこう丈夫なんだよ、セロテープって」
 念には念を入れて、手首のところにてもテープを巻いておく。ぐるり
と反転させた進藤の身体を、ソファの上に突き放した。
「おまえ、こんなこと、どういうつもりなんだよ!
「理由は簡単だよ。saiといつでも好きなときに打つために、キミを
ボクのものにすればいい・・・」
 そうだろ?座った姿勢のまま進藤の足下に座り、ハーフパンツの脚に
触れる。びくっと身体を引いた進藤が、怯えたような目でボクを見下ろ
して来た。
「と、塔矢、お前のものって・・・?」



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