平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 12


(12)
その分、止められない声が漏れ、口を閉じることもかなわないので、嚥下できない
唾液が口腔内の佐為の指をつたって糸を引きながら床に滴ちた。
ヒカルの舌が、その自分自身の唾液を舐め取ろうとするように、佐為の指にまとい付く。
陰茎への口淫を連想させるその仕草に、佐為の方が先に我慢できなくなってしまった。
ヒカルの体のより奥を何度か突き上げ、ヒカルに甘い悲鳴を同じ数だけ上げさせて
から、中に己の劣情を放つ。
その佐為の精をさらに絞り取ろうとでもするように、きつく中の壁を引きつらせて、
ヒカルも佐為の指を含んだまま、くぐもった声と一緒に、その実を弾けさせた。


ヒカルは佐為に後ろから抱きしめられたまま、肩で息をしている。
その内壁は快楽の余熱を持て余して、いまだピクリ、ピクリと中の佐為を締め付ける。
佐為は、ヒカルの口から指を抜き、自分の肩に羽織られたままの着物の袂から懐紙を
取りだすと、ヒカルが床に放ってしまった白い精液をふき取った。その上に体を
落としてしまったために汚れたヒカルの下腹部も拭ってやる。
「ヒカル、気持ち良かった?」
ヒカルは息を荒げたまま黙って頷いた。未練がましくその汗に湿った足を手の平で
辿る。なぜ、この少年はこうも佐為の中の荒々しい部分を煽るのだろう。意識も
しないうちに再びその気になり、固さを増している自身に苦笑しながら、佐為は
もう一度、ヒカルの中を軽く突き上げた。
「ひんっ……!」
ヒカルが背を引きつらせる。
佐為は、すぐ近くにぐしゃりと小山になった、ヒカルの脱いだ着物を少し向こうに
押しやった。
「少し、休みますか?」
「……だいじょぶ…」
ヒカルが小さく答えて、さらに付け加える。
「佐為とするの、好き」
愛おしさが身の内から溢れるような気がして、佐為はたまらずに、いささか
乱暴に抜き差しを開始する。
「あ……はっ……、あ、あ、あ、ふぁっ!ん!」
佐為の律動に会わせて、ヒカルの喉の奥から、弾けるように音が零れる。



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