身代わり 12


(12)
冴木にのしかかるようにして、ヒカルは雑誌をめくっていく。
ヒカルの体温を背に感じたまま、冴木は身動きできない。
密着したところを意識してしまう。雑誌を渡せば済むのだが、それができない。
もっとひっついていたいと、心のどこかで思っている。
「う、わっ」
突然ヒカルが素っ頓狂な声をあげた。見るとグラビアアイドルの水着ページが開いていた。
冴木は軽く笑った。それまでの緊張がすこし解けた。
「へぇ、進藤こんなので悲鳴あげるんだ? 純だなあ〜」
「ち、違うよっ」
佐為が大声を出して、それに驚いたのだ。ヒカルだってこの程度の写真は平気である。
しかし佐為は何度見ても、動揺するのだ。
(佐為〜っ! いいかげんにしろよっ)
《でも女子がこのように、恥じらいもなく身体を見せるのは……》
そう言いながら、頬を赤らめている。ヒカルはため息を吐きたくなってくる。
「どうしたんだよ、かたまって。ん〜?」
冴木は身体を反転させ、腕のなかにヒカルを抱きしめた。そのとたん、後悔した。
予想以上に細い。自分がヒカルくらいのときは、もっと体格が良かったと思う。
「冴木さーん、放してよっ」
もがくヒカルを逃がしたくなくて、冴木は腕に力をこめた。
「進藤ってあったかいなあ。ちょっと温めてよ」
「ひゃっ! 冷てっ!」
首に手を当てられ、ヒカルは身体をすくませた。それがますます冴木を煽る。
男にするべきではないことを、したくなってくる。
それを自覚して、冴木は愕然とした。
「冴木さん! いいかげんにしてよっ」
ヒカルは頬をふくらませて、冴木に向き直った。瞬時に軽い怒りが消えた。
目のまえに冴木の唇がある。
この距離にヒカルは既視感を覚えた。これは、いつも佐為と――――
無意識のうちにヒカルは冴木の肩に手をかけていた。



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル