パッチワーク 12


(12)

土曜日
ヒカルが入院してから毎日病院の帰りにケアマンションに寄りアキラに報告していたがどうも悪い
方へ悪い方へ頭が行ってしまうらしく憔悴してゆくばかりだった。しかも表面上つきあいのないア
キラは棋院の誰かに見られてはとヒカルへの見舞いを躊躇していたが、見ていられなくて昨日は病
院へ行く前にケアマンションに寄り連れていった。もし、見られたら敵情偵察だとでも言えばいい
でしょ。と言ったが幸い誰にも会わなかった。

今日は子供たちも学校が休みなので病院へ連れてきた。でも、子供たちのお目当ては入院している
父親の見舞いより子どもに大甘な箱根のおじいちゃん・おばあちゃんかもしれない。暁子のことが
わかって以来どちらの親とも疎遠になってしまい、塔矢先生夫妻とのおつきあいが始まった。お二
人が私や暁子のことをどう思っているかはわからない。アキラに言わせると自分が子どもの時と比
べると子どもたちへの態度はお二人とも大甘5乗らしい。

言葉では入院したと聞いてもイメージが沸かなくて、しかもアキラも不在で不安を感じていた子供
たちも4日ぶりにヒカルを実際に見て少し安心したらしい。他の子と離れてベッドの反対側に回っ
た暁子のおかっぱ頭をヒカルが掌でくしゃくしゃにする。ヒカルが家に帰ってきたときのいつもの
習慣だ。暁子は緊張が取れて涙腺がゆるんだらしく泣き笑いの顔になっている。ヒカルが他の子の
話を聞きながら指で暁子の涙を拭ってやると暁子は両手でヒカルの手を包み離さない。そのまま
じっとヒカルを見ている。まるで昨日のアキラのようだ。



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