失楽園 12
(12)
その行動をどう取ったのか、アキラはすぅっと顔の色を無くし、静かに緒方に向き直る。
「緒方さん。………これはどういうことですか」
「どういうことですか、とはどういうことだ?」
涼しい顔で煙草を咥える緒方は、顔色一つ変えない。
「進藤をこんなところに連れてきて――、何をするつもりだったんですか」
緒方を非難しているとしか思えないアキラのものの言い方に、ようやくヒカルはこのシチュエーションが
アキラに誤解されているということを気づいた。
――塔矢は、オレが緒方先生とそういうことをすると思ってる…?
「おい塔矢――」
何をバカなことを言ってるんだ。ヒカルはそう笑って否定しようとした。アキラの考えていることは突飛が
なさすぎる。緒方はアキラと関係してはいるが、自分とはそのような関係にはならないのだ。
「何を、ね」
緒方は一瞬自嘲めいた笑みを口許に刷いた。ヒカルが見たこともないような大きなベッドの上に咥えていた
煙草を放り投げると、緒方はヒカルの右手首を掴み、ベッドの上に引き倒す。
「うわっ」
スプリングが軋んで、ヒカルの細い肢体は何度かバウンドする。咄嗟に起き上がろうとすると、緒方が
両手と両足を容易く拘束した。鍛えているのだろう、いくらもがいてもその両手はビクともしなかった。
「……キミは下世話なことに、オレが進藤とセックスすると想像してオレのマンションまで乗り込ん
で来たわけか。オレが鍵を渡しても一度も自分から足を運ぼうとしなかった、ここまで」
緒方はそう吐き捨てると、立ち竦むアキラを睨み付けた。
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