初めての体験 Asid 12
(12)
ボクは、濃いめのコーヒーを入れ、その中に砕いた錠剤を落とした。ワクワクする。
ごめんね。芦原さん。
にっこり笑って、カップを差し出した。
「うっ!苦いな…」
芦原さんは顔を蹙めた。
「ごめん。水の加減間違えたみたいで…」
如何にも申し訳なさそうに言う。ホントは、口先だけなんだけどね。
芦原さんは、「いいよ、いいよ」と笑顔で答える。うぅ…胸が痛い。こんなボクにも、
一応、良心らしきモノはあるらしい。でも、やめようと思わないところが、ボクのボク
たる所以だなあ…。
芦原さんはボクに気を使ってか、苦いコーヒーを残さずに全部飲み干した。よしっ!
ガッツポーズは心の中で!後は、薬が効いてくるのを待つのみだ。
ボクは芦原さんに対局を持ちかけて、その間、効果が現れるのを待つことにした。
碁を打っている途中で、芦原さんの身体が大きく揺れた。
「あれ…?」
「大丈夫ですか?芦原さん…」
畳の上に手をついて、身体を支える芦原さんに白々しく声をかけた。芦原さんの息は荒く、
苦しそうに胸を押さえている。これは…マズイ…かな…?背中をさすりながら、芦原さんの
様子を観察した。
俯いている芦原さんの顔を覗き込むと、頬は赤らみ、目が潤んでいた。口は半開きで、
そこから切なげな吐息が漏れていた。よし!いける!ボクは、芦原さんを横たえると、
シャツのボタンを一つずつ外していった。
「アキラ…?」
「苦しいんでしょう?服を緩めた方がいいですよ。」
ボクの言葉に、芦原さんは素直に頷いた。ズボンのベルトに手を掛けたときでさえも、
逆らわずにじっとしていた。
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