月明星稀 12
(12)
こうしてここで彼の帰りを待っていると、あの頃に戻ったかのような錯覚を感じる。
あの頃の彼を思い、そしてまた、昨夜の、今朝の彼を思う。
引き寄せられて、彼の腕の中に抱かれて、熱い想いを囁かれて、彼の溢れる情熱が恐ろしいと思った。
恐ろしい?なぜ?
だってあの時のアキラは、あの頃の俺は。
―――ほんの少しでも僕を好き?
ふと、僅かに怯えたような色を含んだ、彼の声が蘇ってきた。
馬鹿野郎。
今更、そんな事を聞くな。
俺が、何度おまえを好きだと言ったと思ってる。
我知らず、一筋の涙がつっとヒカルの頬を伝った。
おまえを好きだって、だから一緒にいたいって、離れたくないって、そう言ったじゃないか。
駄目だって言ったのはおまえじゃないか。
おまえを好きだから、だからおまえが欲しいって、それなのに嫌だって言い張ったのはおまえじゃないか。
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