夜風にのせて 〜惜別〜 12


(12)

十二
「写真できるの、待ち遠しいですね」
撮影を終えた二人は車に乗って、あの川を目指していた。
車中ではひかるの連れの男性の存在を忘れて、少々興奮気味に明が話す。ひかるはそれを
頷きながら聞いていたが、心ここにあらずという感じだった。
「着きましたよ」
運転手に言われ、明とひかるは車から降りた。
日も暮れ、薄暗い川べりの道には人影がなかった。
ひかるはドレスが汚れてしまうのも気にせず歩き始めた。
「寒いですね。なんかこうも寒いと本当に春が訪れるのが待ち遠しい」
「本当ですね。でもボクはひかるさんのマフラーを常に身につけていられるから、ずっと寒くても辛くないですよ」
そう言って笑う明をひかるは見つめる。
薄暗くても明が今どんな表情をしているのか、ひかるにははっきりと見えた。
ひかるは俯き、明の顔を見ないようにする。
「明さん、実は今日あなたに言わなければならないことがあります」
突然ひかるが悲しげに話し始めたので、明は笑うのを止めた。何故だか不安が襲う。
ひかるはなかなか言い出せず、黙っていた。
「どうかしたのですか?」
心配になって明は声をかけた。だがその途端、ひかるは泣き出してしまった。明は突然の
ことにあたふたと慌てる。
そこへひかるの連れである男性が現れた。ひかるはその男性の胸に飛び込む。
「明さん、今までひかるさんのことを大切にしてくれてありがとう。今日、あなたとひか
るさんが楽しそうに話す姿を見て本当に心からそう思いました」
男性はそう言うとひかるの様子をうかがった。ひかるは何とか泪を止めようと必死だった。
「どういうことですか。あなたはひかるさんの何なんですか?」
明はひかるを抱く男性を嫉妬まじりに見つめた。



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