初めての体験+Aside 12 - 13


(12)
 のどかに時間が過ぎていく。アキラの提案で始めた一手十秒超早碁勝負の合間の食事の時間である。先程から、社は一言も話していない。二人が楽しそうに談笑するのを眺めて
いるだけだ。時々、ヒカルが話をふってくるが曖昧に頷くだけだった。アキラは笑顔を
見せているが、目だけが笑っていない。社を見る目つきは何というか…怖い。
 「あれ?もう、お湯がない…オレ沸かしてくる。」
ヒカルが席を立った。
「ボクも行くよ。」
社が声をかける前に、アキラはヒカルの後を追った。
ああ!出遅れた。でも、アキラと二人切りにされなくてよかったと思う自分は臆病者だ。
笑うなら笑え。怖いものは怖いのだ。

 「それにしても、やっぱり塔矢って強いんやな…」
先程の対局を思い出す。噂通りである。北斗杯への意気込みを語ったところ、鼻先で笑われた。
それに対して自分は何も言い返せなかった。アキラの言うことももっともだと思ったし、
何より…その…怖かった…。
「まあ、ええわ…進藤が代わりに怒ってくれとったし…」
嬉しかった。


 『なあ、塔矢…社、プロになるの反対されたんだって…』
哀しそうにヒカルが言った。アキラの父は引退したとはいえ、トップ棋士だった。そして、
ヒカルの両親は戸惑いながらも、ヒカルがプロの道を歩むのを応援してくれている。
 ヒカルにとって社の両親の無理解が信じられなかったらしい。
『普通、子供の夢を応援してくれるもんじゃないの?』
『…安定した道を望むのも子供のためかもしれないよ…』
興味なさそうに言うアキラにヒカルはムッとした。
 また、ケンカになりそうだったので、社は二人の会話に割り込んだ。それが、アキラの
気に障ったのだろうか?
『北斗杯のパンフを居間に置いてきたったわ』
『アレを見たら、オレのこと見なおすんやないかな』
『後は勝つだけや』
それを「幼稚」の一言で切って捨てられた。確かにそうかもしれないけど…。自分に
とっては結構重大な問題だったのだ…。言い返せない自分が悔しい。
『言い返せよ社!』
ヒカルは自分が言われたことのように憤慨した。怒ったヒカルも実にキュートで、膨らませた
頬をつつきたくなった。


(13)
 「それにしても、遅いな…」
社は二人の様子を見に、台所へと向かった。灯りが漏れているところが台所だろう。
 入ろうとして、足を止めた。中から話し声が聞こえる。いや、話し声と言うより
コレは…!?
「や…!ダメだったら…」
「やだ…んんん…」
ヒカルの甘い声に誘われるように、そっと中を覗き込んだ。
 社の想像通りだった。アキラは、ヒカルを流し台に手をついて立たせ、後ろからその華奢な
身体を嬲っていた。Tシャツを胸まで捲り上げられ、下半身も完全に剥かれている。足下に
衣服が溜まっていた。
ヒカルは首だけで、振り返りアキラを見つめた。その瞳には涙が浮かんでいた。アキラは
そんなヒカルの訴えを無視して行為を続ける。
「ね…やめてよ…社に見られたら…アアァ!」
「声を出すと気づかれちゃうよ?」
意地悪くアキラに言われて、ヒカルは声を呑み込んだ。アキラの指先が、ヒカルの胸を這い
下半身を弄る。
「ン…ンン…やぁ…」
「後ろも大分柔らかくなってきたよ…」
アキラの言葉にヒカルは全身を朱に染めた。執拗な愛撫から逃れようと必死で身体をくねらせるが、
却って誘っているように見える。
 アキラは自分の股間をまさぐると、片手でヒカルの腰を引き寄せた。
「ひ……!ああああぁぁ!」
ヒカルは甲高い悲鳴を上げた。



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