浴衣 12 - 14
(12)
乳首を吸われ、立っていられなくなった。
洗面台に体を預け、進藤の愛撫に身を任せる。
軽く閉じた瞼の裏に、神社の暗い水場で、僕の足の指をしゃぶっていた進藤の、あの唇が思い出される。
一度は無理矢理鎮めた熱が、凄まじい勢いでよみがえる。
「進藤―――」
全身の血液が、ただ一点に集まっていく。
「進藤………」
自分の声に煽られる。
僕はなんて恥ずかしい声で、彼の名を読んでいるのだろう。
「塔矢、……ヒカルって呼んでよ」
進藤の熱い呼吸が、僕の勃ち上がった性器にかかる。
君はどこに向かって話しかけているんだ!?
「進藤じゃなくて、ヒカルって……呼んで」
それはもう命令だった。
そう言う君こそ、いまだに僕を苗字で呼ぶじゃないかと怒鳴ってやりたかったが、そんな余裕はもう僕に残されていなかった。
「ヒカル!」
甘い声でも、優しい声でもなかった。
切羽詰った僕は、叫ぶように彼の名前を呼んでいた。
「ヒカル、……ヒカルっ……!」
進藤の舌が、僕の性器の先に触れた。透明な雫をこぼしているだろう鈴口の辺りで、ピチャピチャと濡れた音が途切れることなく聞こえたてくる。
「ヒカルぅ………」
僕のペニスが、進藤の柔らかい粘膜に包まれた。
自分では再現することのできない快感が、そこを中心に全身に広がっていく。
「ヒ……カァ……………ん」
精神的に、散々高められていた僕は、あっけなく進藤の口になかに欲望を迸らせていた。
(13)
「きて」
進藤が僕の手をとり、いつの間にか溢れていたバスタブへと誘う。
派手にお湯を無駄遣いして、僕と進藤はぬるめの湯の中に身体を浸した。
「ここ……」
進藤が、僕の右腕の内側を指さす。
「あれ…、いつ食われたのかな…」
赤い虫刺されのあとを指で擦りながら、僕がそう言うと、進藤がプッと小さく吹き出した。
「なんで笑う?」
「いや、……塔矢、それ痒い?」
「ううん、別に痒く……ぁ…」
それがなんなのか、やっと理解して、僕は口ごもる。
そんな僕の胸元に、進藤が後ろから腕を伸ばし、指を這わす。
「確か……ここと、ここにも………」
点々と身体に散った赤い鬱血の跡。
「印だよ」
進藤は小さな声でつぶやいたはずなのに、風呂場に反響して、やけにはっきり僕の耳に届く。
「塔矢が俺のものだって、印だよ」
ドキッと、鼓動がひとつ大きく乱れる。
僕は吐息と一緒に身体中から力を抜いて、進藤の右腕にそっと頬を預けた。
いつも羨ましく思っていた、進藤のしなやかな筋肉が、僕の頭を受け止めてくれる。
男の自分が、男の進藤を好きになる。
それは自分が女になることだと、畏れてきたけれど。
そうだね。
それじゃ、進藤の気持ちまでは説明できない。
「好きだ」って言われる事を待っていた。
男同士だからと、臆病になっていた。
むずかしく考える必要なんてなかったんだ。
僕の有りの侭で、進藤を好きだと素直に認めるだけでいいんだよ。
(14)
「好きだよ」
自然に言葉がでた。
きっと、僕の胸を開いたら、進藤が好きって気持ちでいっぱいなんだ。
そのひとつが、ポロリと零れたんだ。だって、このぬるいお湯は、そんなこと口走りたくなるぐらい、気持ちいい。
ポチャンと、水音を響かせて、進藤の腕が僕を抱きしめる。
「俺も塔矢が好きだ…」
答は耳にじかに囁かれた。
進藤は後ろから両腕を交差するようにして、すっぽりと僕の身体を包んでいる。
僕の背中は、進藤の胸にピッタリとあわさっている。
「好きだ」なんて、いまさらながらの告白のあと、腰のあたりに当たるものがある。
お湯のおかげでその熱まではわからなかったけれど、それが確かな質量を持ちはじめていることは察せられた。
ドキドキと鼓動が早くなるのは、お湯のせいだけじゃない。
体操座りの僕の両足はピッタリと合わされていた。そこを進藤の右手の指が行ったり来りを始める。
「塔矢、足開いて」
当然といった感じで、進藤がささやく。躊躇っていると、進藤が意地悪を言う。
「俺のこと好きなら、足開いてよ」
狡い、狡いと、心の中で喚きながら、それでも僕は足を開いていた。
するりと、進藤の両手が狭間に滑り込む。
左手が僕自身を緩く握り、右手がその下へと潜り込む。
まだ熱く痺れているそこを、進藤の指が突っついている。
「また痛くなるかな?」
「痛くてもいいんだ……」
「痛かったら言えよ」
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