平安幻想異聞録-異聞- 120 - 124


(120)
(この香が…なんだって?)
ヒカルはどこかフワフワする頭で、座間の言葉を聞いた。
「そう不思議そうな顔をするな。この香は、唐の国の後宮から伝わった秘伝の
 ものでの。本来は後宮に上がって初めて皇帝の寝所にはべる処女のために
 焚かれるものだそうじゃ。心地よいであろう?」
座間がヒカルを体ごと引き寄せた。抗おうとしたが、体に上手く力が入らず、
それは形ばかりのものになってしまった。
座間が、座ったまま、その体の中に、ヒカルを背中向きに抱き込む。
ごつごつした大きな右手がヒカルのわきの下を通って、単衣の合わせから中に
忍び込み、ヒカルのしっとりとした肌に触れた。
「くんっ」
触られただけで、背筋を駆け抜けた甘さに、ヒカルが思わず肩をすくませた。
自分の皮膚の表面が、常以上に過敏になっているのがわかった。
「唯でさえ、感じやすい体なのにのう、これではひとたまりもあるまい」
「今宵は、異国の寵姫を愛でる気分で、楽しむのも一興ですなぁ」
座間が、ヒカルの肌をたどった。まだ薄づきの胸の筋肉をなで、腹から腰へ、
腰から、円い双丘へ。そのみずみずしい少年の肌を愛でる。緊張のため、
わずかにしっとりと汗ばむヒカルのそれは、まるで座間の手に吸い付くように
なめらかだ。座間の腕の中溜め息のような、甘いうめき声が、ヒカルの鼻から
喉へ抜けた。
そういえば、いつもならこの辺で、ヒカルの前で上等の布が裂かれ、猿轡をされる
のに、今日はそうするつもりはないらしい。だが、それはむしろヒカルにとっては、
今日は容赦するつもりはないのだと、座間と菅原に言われている気がして、
心がすくむ思いがした。
座間の手が、双丘から割って入り、ヒカルの秘門のまわりを、柔らかくほぐすように
圧したり揉んだりする。ヒカルの呼吸が速くなった。
そうしながら、今度は座間の左手が、単衣の布の上からヒカルの乳首のあたりを
まさぐる。
布ごとこすられるその感触に、ヒカルのそこはすぐにぷっくりと立ち上がって座間を
喜ばせた。
座間の右の中指が、つぷりと、あたたかいヒカルの菊の門の中に入れられた。
「おぉ、これは心地よいのう」
そう座間が感嘆の声をもらずほどに、ヒカルのそこは柔らかく、座間の指を
受け入れて包んだ。


(121)
座間がゆっくりと、指で中をかきまわす。
「ぅん……」
ヒカルが、鼻にかかった声を小さくもらして、後頭部を座間の肩に押し付ける。
すでにその時、香のせいで夢見心地になっていたヒカルは抵抗することなど
思いつかなくなっていた。
座間が布の上から、ヒカルの両の乳首を交互に、転がすように愛撫する。
速くなったヒカルの呼吸に、かすかな嬌声が混じる。
ヒカルが緩慢な動作で、座間の胸にその身を預けてきた。
体を包み始めた快楽のために、口の中に溜まってしまった唾液を嚥下する、その
白いの喉の動きがなまめかしい。
「完全に、香が効いてきたようじゃのう」
菅原が、ヒカルの単衣の前をはだける。
ヒカルのモノは、その真ん中ですでに半分立ち上がって、受ける快楽に反応していた。
そのさらに奥、秘門には、座間の指が1本刺さって、ゆっくりと中を掻き回している。
布の上からヒカルの乳首を玩んでいた座間の手が、はだけられた単衣の中に入り込み、
今度はヒカルの胸に赤く息づくそれを直接刺激しはじめた。
「…は、……はぁ……はぁん……」
上からも下からも責められて、ヒカルの呼吸の合間にはっきりした喘ぎ声が上がり
はじめる。
秘門の入り口付近を嬲っていた座間の指が、さらに根元まで入り込む。
「欲しがって蠢いておるぞ、この中が」
ぬらぬらと蠕動する腸壁の感触に座間が破顔する。
「いつも、これくらいに素直であればよいものをのう」
その節くれ立った指の関節が、ヒカルの中の急所をかすめた。
ヒカルの口から上がったのは蕩けるような甘い声。それだけではなく、内壁は
さらなる強い刺激を求めて、座間の指の動きを追い、うごめき、締めつけた。
思わずといったようすで閉じようとしたヒカルのその足を菅原が、床に
おさえて動きを封じた。


(122)
ヒカルの足指が座間の指の動きにあわせて、やるせなく開いたり握られたりしている。
自らの腕の中で乱れ始めたヒカルの、その首筋に、座間が噛みつくように、
唇を寄せた。
胸を嬲っていた手で、まだ羽織られていたままの、着物をよけて肩と背中を
むき出しにする。
そのまま、しどけなく単衣を着乱したかっこうのヒカルを背中から抱きかかえる形で、
座間がその若柳のような背筋にそって、舌で愛撫を繰り返す。
そうしながら、ゆっくりヒカルの体を抱えて、うつぶせに押し倒した。
ヒカルの中に入った指は、そのままだ。
座間が、ヒカルの耳元にささやく。
「欲しいか?儂が?」
朦朧とした頭で、何を聞かれているかもわからないままにヒカルは頷いた。
座間は満足げに頷くと、その熱くそそり立った自らの肉鉾を取りだし、ヒカルの体を
深々とつらぬいた。
ヒカルの体はそれを何の抵抗もなく受け入れた。
座間が、ゆったりとした動きで抜き差しをしだす。
奥を突くたびにヒカルが声をあげた。
眉をよせ、それでもせり上がる喜悦を押さえられないと言った風に、
床板にしがみつくように爪を立てた。
座間が中に精を放つ。
ヒカルも同時に果てた。
ぐったりと、まだ単衣を半分羽織ったままの体を床に投げ出す。
その体を半身を起こした座間が引き起こして、抱えた。
熱に火照るヒカルの頬を、その汗ばんだ手で撫でる。
「さて、前座は終わりといったところかな、検非違使殿」
ヒカルは、はっきりしない、霞がかった視界に、菅原がどこからか瀟洒な文箱を
取りだしたのをぼんやりと見ていた。


(123)
意識をまだ雲のまにまに漂わせている風のヒカルの体を、座間がふたたび玩び
だした。
指が二本、その下の口に差し込まれる。
それで、中の火照る筋肉を揉みしだく。
ヒカルが気持ち良さそうに、声を上げて身をよじった。
先ほど、座間が中に放った精液が、その指にまとい付き、中でそれがなめらかに
動くための手助けをする。
中をいじめる指の動きに、あえかな嬌声を上げ続けるヒカルの口は閉じるいとま
もない。
それを見ながら、菅原が先ほど持ちだしてきた箱の蓋をひらいた。
螺鈿細工の施されたその箱の中に入っていたのは何かの薬包。
菅原は、その粉らしきものを包む薄紙を丁寧に開き、ヒカルの唇へ寄せ、
中身を、嬌声を上げ続けるその口の中に注ぎ込んだ。
突然、舌を刺激したその刺すような苦さに、その一瞬だけヒカルの意識が覚醒した。
吐きだそうとするヒカルの口を、座間がうしろから押さえた。
「大人しゅうせい。生きながら極楽へ往ける薬じゃぞい」
菅原が盃に何かを満たして持って来た。口を無理に開かされ注ぎ込まれる。
火のように強い酒だった。口の中にあった粉も、一緒に胃の中に流し込まれて
しまった。
喉を焼くような酒の強さと、薬の黴臭いような強い臭気に、ヒカルがむせて
背を丸める。
それは、すぐにやって来た。
ズクりと、体の中心が波打つ感触。
衝撃に引き戻された理性が警鐘をならす。
これはひどくまずい、と。
体を襲う熱の波はやがて速くなり、まるで体中が心臓になったように脈打ってくる。
耳鳴り。まるで頭の中で虫か何かが飛んでいるような。それがだんだんと大きくなり、
頭の中でワンワンと……。
「あぁあっうっ!」
中に差し込まれたままだった座間の指が動いた。
そこから、じぃんと、大きなしびれの大波が起きて、体全体に波紋を広げた。


(124)
「ほう、これはまた一段と、責め甲斐のある体になったのう」
座間が、わずかな刺激から広がった快楽の強さに怯えるヒカルの体を抱き寄せた。
その背にくっきりと浮かび上がる形のきれいな肩甲骨に、むしゃぶりつき、舐める。
ヒカルがか細い悲鳴を上げて、嫌がるように自分の肩を抱きしめた。
「いじらしいことよのう。顕忠、おまえも遠慮するな。これを極楽へ無事導くことは、
 仏への功徳にもなろうぞよ」
菅原が、床に投げ出されたヒカルの、伸びやかな足を持ち上げた。
「わたくしめも、座間様の功徳のお裾分けをいただきたいものですなぁ」
そう言って、ヒカルの足の指をつばで汚し始める。
座間も、ヒカルの朱にそまった柔らかいうなじの味を確かめながら、少年の
狭い秘門に差し込まれた指を、まるで陽物をそうする時のように抜き差し
し始めた。
逃れようのない快感に襲われて、ヒカルが再び声を上げ始める。
一度は取り戻した理性だったが、今はまた、意識を香の薫りに剥がれ、薬に
神経を剥き出しにされ、頭の中が、真っ白に染め替えられていく。
「…ぁっぃ……やっ……やっ……」
座間が、ヒカルを後ろから抱きかかえたまま、その指を引き抜くと、わずかに
その腰を持ち上げ、自らの陽物の上に座らせた。
「あああああっ!」
太く猛ったモノを突き刺されてヒカルが快楽に身をよじる。座間が、後ろから
回した手で、ヒカルの両の胸の突起を潰すように愛撫しながら、容赦なく
抜き差しを始める。
「あぁっ、あぁっ、あっ、あぁっ!」
座間が腰を強く突き上げれば、そこに座らされているヒカルの体も、持ち上げられる
ようにして、ゆさゆさと揺さぶられる。
グラグラ揺れるヒカルの頭を、座間が自分の肩に押さえるつけるようにして、固定
すると、ヒカルの方が自ら、後ろの座間の胸へ身を投げ出すようにして、体重を
預けてきた。その方が快感を追いやすいからだ。
いまや、ヒカルの体は、完全に座間にゆだねられていた。
突然、座間が動くのをやめた。
ヒカルがもどかしげに腰をうねらせる。
「やめないで、お願い…」



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