平安幻想異聞録-異聞- 123 - 128


(123)
意識をまだ雲のまにまに漂わせている風のヒカルの体を、座間がふたたび玩び
だした。
指が二本、その下の口に差し込まれる。
それで、中の火照る筋肉を揉みしだく。
ヒカルが気持ち良さそうに、声を上げて身をよじった。
先ほど、座間が中に放った精液が、その指にまとい付き、中でそれがなめらかに
動くための手助けをする。
中をいじめる指の動きに、あえかな嬌声を上げ続けるヒカルの口は閉じるいとま
もない。
それを見ながら、菅原が先ほど持ちだしてきた箱の蓋をひらいた。
螺鈿細工の施されたその箱の中に入っていたのは何かの薬包。
菅原は、その粉らしきものを包む薄紙を丁寧に開き、ヒカルの唇へ寄せ、
中身を、嬌声を上げ続けるその口の中に注ぎ込んだ。
突然、舌を刺激したその刺すような苦さに、その一瞬だけヒカルの意識が覚醒した。
吐きだそうとするヒカルの口を、座間がうしろから押さえた。
「大人しゅうせい。生きながら極楽へ往ける薬じゃぞい」
菅原が盃に何かを満たして持って来た。口を無理に開かされ注ぎ込まれる。
火のように強い酒だった。口の中にあった粉も、一緒に胃の中に流し込まれて
しまった。
喉を焼くような酒の強さと、薬の黴臭いような強い臭気に、ヒカルがむせて
背を丸める。
それは、すぐにやって来た。
ズクりと、体の中心が波打つ感触。
衝撃に引き戻された理性が警鐘をならす。
これはひどくまずい、と。
体を襲う熱の波はやがて速くなり、まるで体中が心臓になったように脈打ってくる。
耳鳴り。まるで頭の中で虫か何かが飛んでいるような。それがだんだんと大きくなり、
頭の中でワンワンと……。
「あぁあっうっ!」
中に差し込まれたままだった座間の指が動いた。
そこから、じぃんと、大きなしびれの大波が起きて、体全体に波紋を広げた。


(124)
「ほう、これはまた一段と、責め甲斐のある体になったのう」
座間が、わずかな刺激から広がった快楽の強さに怯えるヒカルの体を抱き寄せた。
その背にくっきりと浮かび上がる形のきれいな肩甲骨に、むしゃぶりつき、舐める。
ヒカルがか細い悲鳴を上げて、嫌がるように自分の肩を抱きしめた。
「いじらしいことよのう。顕忠、おまえも遠慮するな。これを極楽へ無事導くことは、
 仏への功徳にもなろうぞよ」
菅原が、床に投げ出されたヒカルの、伸びやかな足を持ち上げた。
「わたくしめも、座間様の功徳のお裾分けをいただきたいものですなぁ」
そう言って、ヒカルの足の指をつばで汚し始める。
座間も、ヒカルの朱にそまった柔らかいうなじの味を確かめながら、少年の
狭い秘門に差し込まれた指を、まるで陽物をそうする時のように抜き差し
し始めた。
逃れようのない快感に襲われて、ヒカルが再び声を上げ始める。
一度は取り戻した理性だったが、今はまた、意識を香の薫りに剥がれ、薬に
神経を剥き出しにされ、頭の中が、真っ白に染め替えられていく。
「…ぁっぃ……やっ……やっ……」
座間が、ヒカルを後ろから抱きかかえたまま、その指を引き抜くと、わずかに
その腰を持ち上げ、自らの陽物の上に座らせた。
「あああああっ!」
太く猛ったモノを突き刺されてヒカルが快楽に身をよじる。座間が、後ろから
回した手で、ヒカルの両の胸の突起を潰すように愛撫しながら、容赦なく
抜き差しを始める。
「あぁっ、あぁっ、あっ、あぁっ!」
座間が腰を強く突き上げれば、そこに座らされているヒカルの体も、持ち上げられる
ようにして、ゆさゆさと揺さぶられる。
グラグラ揺れるヒカルの頭を、座間が自分の肩に押さえるつけるようにして、固定
すると、ヒカルの方が自ら、後ろの座間の胸へ身を投げ出すようにして、体重を
預けてきた。その方が快感を追いやすいからだ。
いまや、ヒカルの体は、完全に座間にゆだねられていた。
突然、座間が動くのをやめた。
ヒカルがもどかしげに腰をうねらせる。
「やめないで、お願い…」


(125)
情欲に満ちた声で、先をねだる。
座間が、ヒカルの耳元にささやいた。
「検非違使ごとき、身分のものが、この座間に願い事をするのに、その態度とは
 のう」
その声にさえ、ヒカルは過敏に感じて、首筋から耳の後ろの部分までに鳥肌が立つ。
「きちんと、目上のものに対する物乞いの仕方があろう?うん?」
「お願い…します。座間様、お願いですから…オレの、中に……」
「中に?」
「下さい」
「ふん、まぁよいわ」
座間が、腰の動きを再開した。それをヒカルは、貪欲にさらに自分の体の奥に
引っ張り込むように、秘門の肉でしごき、食む。
「あっん、もっと……もっと、奥まで……!お願い……!」
「まだ足りぬのか、浅ましいことよのう」
「あ、あぁっ!あぁっ!はん!」
「薬を盛られて、さらに中の味が増したのう。ふぅ……ふぅ…、たいした締めつけ
 具合よ。どれ、ここはどうじゃ」
「いやっっ!あぁぁ!」
「ふ、ふは……はぁ…、どうじゃ、どうじゃ、まだ、まいらぬか?」
「やんっ!あん!あっ、あっ!」
座間がヒカルの腰を押さえて、最奥を大きく抉った。
そしてヒカルの体の奥に、自分の熱い体液を放出する。
とどめをさされて、ヒカルのからだが震えた。自らも、その幼いモノの先端から、
白い液をこぼし、陰茎のまわりの、まだ煙るように薄くしかない茂みを濡らした。
与えられた快楽に蕩けて、ヒカルの体は座間の胸のもたれかかって、くにゃりと
なった。
座間は、そのヒカルの秘門から、名残おしそうに自身の秘刀を引き抜く。
ヒカルのそこは、太いモノが引き抜かれてしまったのが物足りないとでもいうかの
ように、ヒクヒクと動いた。
その感触を座間が、自身の陽根の先端に感じ取ってほくそえんだ。
「まだ、この程度では足りないであろう? 検非違使殿よ。スズメバチの幼虫と
 マムシの血、ケシの実をすりつぶし練り合わせて、特別に作らせた秘薬じゃから
 のう」
それが聞こえたのか聞こえていないのか、ヒカルは、ぼんやりとした表情で瞳を
潤ませ、呼吸を早くしたまま座間の腕に身を預けている。


(126)
ヒカルの足の感触を貪っていた菅原が身を起こし、手を延ばして、まだヒカルの腰の
あたりに引っ掛かるようにして残っていた単衣をはぎ取った。達したばかりだと
いうのに、ヒカルの中心は、早くもふたたび頭をもたげている。
座間がヒカルの腕の下に手を入れて抱き上げ、床板の上に横たえた。
「満足させてやれ」
「御意に」
菅原が、指貫の腰帯を降ろし、天を突くようにいきり立つ自分の肉槍を取りだす。
ヒカルの股を大きく広げさせ、菅原は、その奥の場所に熱くたぎる槍を突き刺した。
「ひ、ひぃん…!
それさえ、ヒカルのそこは、嬉々として受け入れた。
「ひ、ひ、ひぁ、あ…」
菅原に抱えられた足がひきつって泡立つ。菅原のたぎるものが奥まで入り込み、
壁をこすりながら引き抜かれる動きに、ヒカルがそれを惜しんで、自分を快楽に導く
熱いそれを逃がすまいと食い締める。
それどころか、ヒカルはついに菅原の腰に、自分の足をからめて、挟み込んでさえ
いた。
「おぉ、興が乗ってきたのう」
座間がそれを見て、自分はヒカルの頭の方にまわり、その上半身に覆いかぶさるように
して、舌で鎖骨や胸、胸に飾られた薄紅の突起を玩び始めた。
その間にも、内蔵を食い破るかの勢いで奥を刺し貫く菅原の動きに、ヒカルは高い
声を上げて応える。
華奢な体が二人の男に同時に蹂躙されるその様は、まるで牙をもつ獣に無慈悲に
食い千切られる子鹿を思わせた。
小鹿の足が快楽に震える。
「これこれ、締めつけすぎじゃ。これでは、中で動くことも出来んではないか」
荒い息を吐きながら、苦しげに菅原が言う。
「もう少し力を緩めなければ、イカせてやることもできんぞい」
「できない、できないよぅ……っ」
ヒカルは睫毛を涙の露に濡らしながら、頭を小さく左右に振って応える。
意識してやっているわけではないのだ。だから、やめることも出来よう
はずがない。


(127)
いっこうに緩まない、ヒカルの秘口のしめつけにしびれを切らし、
菅原は力任せに、きつく締めつける狭い肉径を両に割くように動き始めた。
ヒカルの喘ぎ声がさらに高く切なげなものになる。
鳴きながらも、穿たれる熱い楔を奥へ奥へと導き入れるように銜え込む体奥へ、
菅原が強引に割り入り、その引き込むような強い力に逆らって引き抜く。
その高さのある亀頭は引き抜くときは、ちょうど釣り針の「返し」のように働いて
ヒカルの中のいい場所を、そとに掻き出すように躙するのだ。
締めつけの強さの分、ヒカルは自分で抉られる強さを増幅しているようなものだった。
だから、菅原が引き抜く動きに合わせて、喘ぎ声が上がる。
「あーっ、あぁーっ!あっっ!」
そのヒカルの腰は、その快楽を逃がすまいと、無意識に揺れはじめていた。
「はじめから、これほど素直であればのう。どうじゃ、顕忠、この腰の使い具合、
 ともすれば我らの方が食われかねんではないか」
ヒカルの上体を支配する座間が、ヒカルの肩口に、柔らかの腕の内側に、吸った痕を
赤く散らしながら言う。
「まこと……ハァ、ハァ…。しかし、座間様…。犬でも馬でも鳥でも……ウン…
 …野のものを慣らすのは過程が趣深いと申しますゆえ……ン……この者がはなから、
 我らの言いなりであったら興ざめでございましょう」
下肢を支配する菅原も、そういいながら、責める手をゆるめない。
菅原が腰を深く強く突き入れるたび、ヒカルは肢体の奥底から込み上げてくる
甘美な感覚に負けて、ほんの僅かに残った思考は敗北感に苛まされながらも、
淫靡な声をあげるのを止められない。
口を閉じることが出来ない。
「あ……、あっん、あ……あぁ……っ」
その愛らしい蜜のような嬌声を紡ぐ赤い唇を、座間がなでるように指でたどった。


(128)
「ほんにのう。鳴かぬ鳥をいかように鳴かすかも、心躍るものじゃわい」
喜悦に耐えきれず、こぼれ始めた涙が、ヒカルの艶に染まった目じりから、
ポロポロと美しい玻璃の玉が転がるように幾粒も滑り落ちた。
それを、座間はぬぐいとると、おもむろに、屹立して後は
解放を求めるばかりになっている少年の若い男根に伸ばした。
「はぁ、あぁっ!」
張りつめた前を撫でさすられて、ヒカルが感極まった声をあげる。
ここぞとばかりに、菅原が、抜き差しの緩急を激しくする。
奥まで差し込んだそれを強引に大きく回されて、ヒカルがはげしくかぶりを
振りながら甘く悶えた。
「あんっ、やぁぁ、あぁぁぁっっ!いぃぃっ!」
座間がヒカルの吐きだした白い蜜液を手に受け止める。
ヒカルの中にもドロドロした熱いものが放たれた。
それを受け止めて、ヒカルのからだが弛緩する。
菅原が、萎えてしまった自分のモノを、ズルリとヒカルの中から引き抜いて、
懐紙でぬぐった。
だが、ヒカルの上半身をいじっていた座間はまだ終わっていない。
菅原が責める間に、屹立してきた剛直は、手を近付けるだけで、その熱さが
わかるほどに火照っていた。
座間が、仰向けに横たわるヒカルのなだらかな肩から首筋を愛おしげになでた。
熱のさめやらぬ紅潮した顔で、ヒカルはその愛撫を受け止めた。
快楽にに酔って、瞳はトロンとどこか中空を見ている。
「さて、検非違使殿。儂は夕刻、四日分を啼いてもらうというたが、まだ少し
 四日分には足りんのう」
「座間様、女房にいいつけて、香を再び持ってこさせましょうか?」
最初にこの部屋で焚かれていた香は、いつのまにか燃え尽きて消えていた。
「その必要はあるまいよ」
座間は、ヒカルを上体だけ抱えおこすようにすると、その肩の上から腕をまわし、
ヒカルの太ももを掴むようにして開かせた。ヒカルはわずかに逆らったが、
座間がそのうなじの髪の生え際を吸うと、溜め息をつきながら座間の言いなりに
なった。
「意地を張る様もなかなか赴きがあるが、こう素直なのもよいのう。佐為殿がそばに
 置きたがるのもわかるわ」



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