初めての体験 128 - 136
(128)
気がついたとき、ヒカルは、ベッドで永夏と秀英に抱かれて眠っていた。
『何で、コイツらと川の字に寝てるんだよ…』
ぼんやりとした頭で考えた。そして、「あっ!」と、小さく声を上げると、慌てて起きあがり、
自分の身体の匂い嗅いだ。永夏に精液を塗り込まれたのを思い出したのだ。あの独特の
匂いはしない。代わりに甘い花の香りがした。
「起きたの?進藤…」
秀英が目を擦りながら、起きあがった。
「オレ…風呂に入ったっけ…?」
「覚えてないの?」
そう問い返されて、ヒカルは、飛んでる記憶を慎重にたぐり寄せようとした。目を閉じて、
一から順番に辿っていく。だんだんと、思い出してきた。
半分気を失ったヒカルを永夏は抱き上げて、浴室に連れて行ってくれた。狭いユニットバスで
秀英に身体を支えられながら、永夏に身体を洗われた。ボディーソープを泡立てた掌で、
身体中を擦られた。
「あ…いや…」
永夏の指先が、胸の先端に触れた。思わず漏れたその声に、永夏の口元が微かに上がった。
大胆に突起を摘み、捩り上げた。
「ひっ」
仰け反った身体を秀英が抱き留めた。永夏の指は、傍若無人にヒカルの肌を滑って行く。
ガクガクと震える足の間に、指を埋め込まれた。
「あっ!ヤダ!」
「―――――」
永夏が、ヒカルにはわからない言葉で何かを告げる。
「中のモノを出すんだって…」
後ろから、秀英が通訳した。冗談じゃない!そんなこと自分でできる。身体を捩ろうと
藻掻いたが、力が入らない。
指が蠢く。
「くぅ…あぁん…」
中を掻き回されて、ヒカルは身体を硬直させた。
「あ………」
今度こそ、ヒカルは完全に気を失ってしまった。
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怒りと羞恥で頭に血が上った。すべて思い出してしまった。大ッ嫌いな永夏に抱かれてしまった。
その、ことの元凶は……。
「秀英のバカ!なんで、永夏なんか連れてくるんだよ!」
せっかく、二人で楽しもうと思ったのに……。秀英は、ヒカルの剣幕に押されながらも
説明した。
「ご、ごめん…自信がなかったから…」
「自信?自信って何だよ?」
「進藤を満足させる自信だよ…」
秀英は、恥ずかしそうに俯いた。ハァ?何を言っているんだ?
「最初は、永夏にやり方だけ教えてもらうつもりだったんだ…でも…」
秀英の言い分はこうだった。永夏曰く、ヒカルは可愛いから、ほかのヤツが放っておかない。
きっと、いろいろ経験済みだ。うまくやらないと嫌われる。
純情な秀英は青くなった。経験不足の自分では、きっとヒカルは満足しない。嫌われて、
口も聞いてもらえなくなるかもしれない。
「それで、永夏が手伝ってくれるって…」
ヒカルは、絶句した。なんて狡猾なヤツなんだ……!チェリーボーイの不安を利用するとは…
でも、やっぱり…一番、腹が立つのは……
「秀英のバカ!」
ヒカルは、手を振り上げて秀英を引っぱたこうとした。
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そのとき、後ろからやんわりと腕を掴まれた。そのまま、引き倒され、永夏の腕の中に
抱き込まれた。
「わ!なにすんだ!」
ヒカルが「離せ」と藻掻けば藻掻くほど、ますます腕に力を込める。くすくすと笑いながら
ヒカルの鼻先にキスをした。永夏の手が、ヒカルの身体を無遠慮に這い始める。
永夏は、日本語で「カワイイ」と繰り返した。
ヒカルがいくら抵抗しても、永夏は軽く去なしてしまう。全く歯が立たなかった。
「う………うぅ…うぇぇ…」
ヒカルは本気で泣き出してしまった。
永夏も、さすがに驚いて手を離す。ヒカルは、するりと永夏の腕の中から逃れると、
床に散らばったままの服を拾い集めた。ヒックヒックとしゃくり上げながら、一枚ずつ服を身につける。
最後にネクタイを拾い上げると、ポケットにねじ込んだ。ヒカルは、ネクタイが結べないのだ。
「進藤…」
秀英が心配をそうに声をかける。ヒカルは、キッと二人を睨み付けた。それから、
「オマエらなんか大ッ嫌いだ!」
と、一声そう叫び、泣きながら部屋を出て行った。
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涙をぽろぽろ流したまま廊下を歩いていると、向こうから歩いてきた趙石がびっくりして立ち止まった。
恥ずかしい。泣いているところを見られてしまった。ヒカルは、手の甲で慌てて涙を拭いた。
趙石はどうしたらいいのかわからなかったらしく、困惑しながら笑いかけてきた。その
チャーミングな笑顔に、ヒカルもつられて半べそかいたまま、笑い返した。
最初は、見とれて惚けていた趙石の顔が見る見る赤くなっていく。そして、そんな自分に
気づいた途端、そのまま走り去ってしまった。
ヒカルはその後ろ姿を見送りながら、『いけるかも…』と、思った。だけど、追いかける
つもりはなかった。
「また、人数増えてたら困るもんな…」
でも、通訳に楊梅さんとか来たらどうしようと、思いながらも……楊梅さんなら、ちょっとイイかな…
と考えてしまった。自分は全然懲りてない。
「戒めのためにとっとと手帳に今日の戦果をつけておこう。」
高永夏…軽い外見の割には研究熱心。強い。さすがに、韓国若手ナンバーワンを自負する
だけのことはある。
でも、オレはオマエなんか大ッ嫌いだ!
洪秀英…技術的にはまだまだ未熟。だが、探求心は旺盛で、努力家。今後に期待大。
おまけ
(132)
おまけ
「わっ!」
廊下を曲がろうとして、趙石とぶつかってしまった。彼の顔は真っ赤だった。
「ゴメンナサイ」
アキラに一言そう謝ると、彼は走って行った。
「何を慌てていたんだろう…」
走り去る華奢な後ろ姿を見ながら、『たまにはああいう純情そうなのも良いな…』と
考えた。アキラの鞄の中には、つい先日手に入れたばかりのエネ○グラが、入っていた。
「ホントは進藤に使いたいんだけどな…泣いちゃったらイヤだし…」
趙石は純情そうなところがヒカルとかぶる。新しいオカズになるかもしれない。
邪なことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「趙石がどうかしたのかい?」
振り向くと楊梅が立っていた。
「いいえ…ちょっとぶつかっただけです。」
アキラはにっこりと笑った。
「それより、もしお時間があれば、中国の事をいろいろ教えていただけませんか?」
「ああ、いいよ。じゃあ、オレの部屋に行こうか?」
「いえ、できればボクの部屋で…」
楊梅は、快く承諾してくれた。先に立って歩く彼の後ろを、黙ってついて行く。
『…アレってどれくらい効くのかな…楽しみだ…』
知らず、笑みが零れた。
終わり
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「やべぇ…遅くなっちゃったよ…」
和谷のアパートでの研究会の帰り道、ヒカルは呟いた。もう、あと数分で日付は変わってしまう。
ヒカルの両親は口うるさい方ではないのだが、ヒカルはまだ中学を卒業したばかりのほんの子供だ。
門限は十時と決められていたが、ヒカルはそういうことに頓着せず、たびたび門限を
破っていた。つい昨日も母親に酷く叱られたばかりだった。それも仕方がない。ここ一週間
毎日、無断外泊もしくは午前帰りを続けていた。
流石に今日は早く帰ろうと思っていたのだが、ついつい検討に夢中になって気が付いたら、
すっかり夜半過ぎだった。
『今度破ったら、門限は八時にしますからね!』
母親の言葉が蘇る。
「八時だなんて冗談じゃネエや…」
ヒカルは足は急がせた。
真夜中の冷たい風が、ヒカルの頬や首筋を嬲る。
「うぅ…寒…」
ヒカルはパーカーの前をあわせて、小さく身震いした。ヒカルは薄いTシャツに、パーカーを
引っかけただけの軽装だった。暦の上では春でも、まだ肌寒い日が続いていたのだが……。
今朝目覚めたとき、カーテン越しに感じた穏やかで柔らかい陽射しに、ヒカルは感動した。
空は澄み切って、風も暖かだったので、ヒカルの気持ちもついついゆるみ、薄着で出かけて
しまったのだ。
「…………」
気のせいだろうか―――後ろから誰か付いて来ている。その誰かは歩調を早めると早く、
緩めると遅く、まるで、ヒカルにあわせているように後ろを付いてくる。背中がざわめくのは、
寒いせいだけではない。
―――――気持ち悪い。早く帰ろう……
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ヒカルが駆け出そうとした瞬間、いきなり後ろから抱きつかれた。ヒカルよりずっと背の高い
男が上から覆い被さるように強く抱きしめてきた。
「や……!なに…?」
耳元に荒い息を感じた。背筋に悪寒が走る。
「やだ!離して!」
ヒカルが男の腕を引き離そうと、体を捩ると、ガッと胸を掴まれた。もっとも、ヒカルには
掴めるほどの胸はない。どうやら、ヒカルを女の子と間違えているらしい。
『オレを女と間違えるなんて、マヌケなヤツ…』
ヒカルは安堵の溜息を吐いた。これで誤解は解けるだろう。
だが、男は腕の力を弛めるどころか、ますますきつく締め上げる。ヒカルの背骨が軋む。
「あ…痛…!」
大きな掌が、薄いシャツの上からヒカルの胸を撫でまわし、強く弱く揉み始めた。
「あぁ!イヤ!」
ハァハァと荒い息が耳の奥でこだまする。ヒカルは藻掻いた。
「大丈夫…怖くないよ…怖くないからね…ヒカルちゃん…」
ヒカルは「えっ?」と、一瞬だけ抵抗をやめてしまった。その隙を逃さず、男がヒカルの鼻先に
何か瓶を押しつけた。意識が遠のく。
そこから後の記憶はヒカルにはなかった。
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ヒカルは、柔らかいベッドの上で目を覚ました。身体に何か違和感があったが、それが
何なのか、そのときは、わからなかった。
意識の戻ったヒカルの目に最初に映ったのは、自分の顔だった。
―――――え?なに?
ぼんやりとしていた視界が徐々に鮮明になり始める。
―――――なに、コレ…気持ち悪い…………
そこは、壁と言わず天井と言わず、ヒカルの写真で埋め尽くされていた。いつ撮ったのだろうと
いうようなレベルではない。
―――――オレ……こんなカッコした覚えネエぞ……
すべての写真は、首から上は確かに自分だが、その下は他人の体だった。いわゆるアイコラと
いうものだが、その体はすべて少女のものだった。
近所の女子校の制服姿のヒカルもいれば、フェミニン系の可愛らしい衣装で微笑む
ヒカルもいた。中には、身体をすげ替えることに意味があるのか、ストカジ系のいつもの
自分と変わらない写真もある。おまけに葉瀬中のセーラー服もあった。
―――――あの写真なんかあかりっぽいよな………
葉瀬中のセーラーを身にまとうヒカルの手に持たれた鞄のマスコットに見覚えがあった。
たしか、誕生日にプレゼントしたものだ。
―――――あかり…可哀想………
男の顔にすげ替えられるなんて、女としての矜持は、粉々に砕け散ってしまうのでは
ないだろうか。まだ、よく働かない頭で、そんな事を考えた。
それにしても、写真の中のヒカルの身体は女の子のものなのに、まるで違和感がない。
よくよく見れば、少女達の体付きは、皆、共通していた。肉付きの薄い華奢な体付き。
よく言えばスレンダー、悪く言えば、貧乳。わざわざ、ヒカルに似た体型の少女ばかりを
集めたものらしかった。
(136)
怖い―――――――!
男のヒカルを女に見立てて、拉致するなんて、よほど女に縁がないヤツだろうと思った。
このままここにいては何をされるかわからない。
ヒカルは逃げようと身体を起こした。いや、起こしたつもりだった。
「や……!なんでぇ!?」
ヒカルの手首は前で一つに纏められていた。自分の手を拘束しているガムテープをはずそうと
囓ったが、何十にもきつく巻かれたテープを剥がすことはできなかった。
「ちくしょ……!」
足こそ自由だが、その足下を見て驚いた。自分の下半身に付けられている衣装が目に入った。
太ももまであるニーソックスに、ベージュに黒のバーバリーチェックのミニスカート。
「冗談じゃねえ!」
何とか苦労して起きあがると、改めて自分の姿を見た。胸にエムブレムが刺繍された
紺のブレザー、白のベスト、胸元に大きなリボンが見える。どうやら、どこかの制服らしい。
「気が付いたんだね…ヒカルちゃん…」
後ろから声をかけられて、ヒカルはビクリと振り返った。男がゆっくりと近づいてくる。
男はヒカルの想像とは違ってごく普通の男だった。むしろ、いい男の部類に入る。
ヒカルはベッドの上で後ずさりした。
「やだ!来るな!」
ヒカルが身を縮めて男から逃れようとする。
「どうして…避けるんだい…僕はずっと君のファンだったんだよ…」
イベントには必ず行っているし、新聞の切り抜きも全部持っている―――怯えるヒカルを
尻目に男は熱っぽく語りかける。
「この部屋に君を招待できて嬉しいよ…やっと、本物のヒカルちゃんが来てくれた…」
男の手がヒカルの肩を掴み、再び、ベッドの上に横たえさせた。
「あぁ!いやぁ!離せぇ!」
ヒカルは足をジタバタさせたが、その抵抗さえ男は楽しんでいるようだった。縛られた両手で
必死に男を引き離そうとする。
男は縛られた手をヒカルの頭の上で押さえつけた。
「ヒカルちゃんは元気がいいんだね…本当になにからなにまで僕のタイプだよ…」
そう言って、空いた方の手で、ゆっくりとヒカルの服を剥がし始めた。
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