戻り花火 13
(13)
社が東京にやって来たのは7月の末だった。
「よっ。進藤、元気やったか」
3ヶ月前と同じように駅で待ち合わせをして、アキラの家へ向かった。
「進藤たちはもうガッコ行ってへんのやな。ホンマ羨ましいわー。オレなんか一昨日まで
中間テストやったんやで」
「中間テスト!うわっ、思い出したくねェ〜。夢に見ちゃうぜ」
北斗杯を目前に控えていた前回とは状況が違うせいか、道すがら社はよく喋った。
ヒカルも、アキラと社の関係がはっきりしないことに少し不安はあったものの、
顔を合わせてしまえばさすがにかつて密度の濃い数日間を共にした者同士で、話が弾んだ。
――にしてもコイツ今日、ほんとよく喋るよなぁ。
電話で何度か話した時は、ここまで饒舌ではなかった気がする。
久しぶりに顔を合わせるとやはり違うということなのか、それとも。
「それでな、どうなったか知りたいと思うやろ?したらな、吉川師匠が渋ーい顔して言うてん――」
「着いた。降りるぜ」
「あ?ああ、もう着いたんか・・・」
ホームに降りてから、あれだけ饒舌だった社がすっかりおとなしくなってしまった。
何か考え込むような顔で懐かしそうに辺りの風景を見回している。
「社?階段こっちだぜ。・・・なんか珍しいもんでもある?」
「ン、いや、そういうわけやあらへんのやけどな。何や、またココに来れたんやなぁと思うと
感慨深いのと・・・塔矢・・・」
ヒカルの全身がビクリと竦んだ。
電車に乗っている間あれだけ喋ったのに、社の口からアキラの名を聞くのはこれが今日初めてだった。
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