裏階段 三谷編 13


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イベントは特に参加者に年令の制限を区切ったものではなく、広く告知をした規模のものでも
なかったため、特定の地域の高齢者の集いに毛が生えた程度だった。
進藤やその他の棋士や、おそらくオレ自身の名前を聞いてもさほどに反応出来ない初心者が
多数を占めていた。それでも今年に入って、そういう類いの仕事が棋士達の間に増えていた。
ブームという安っぽい言葉はあまり使いたくはないが、ちょっとした娯楽として囲碁が
地域のイベントに加えられる機会が多くなったのは確かなようだった。
そういう催しに年寄りに混じって進藤と同年代の少年少女達もやって来る。
幼い時から熱心な親に背中を押され、ではなく、友達とゲームセンターに行くのを誘いあう
ような感覚で、というものらしい。本格的に囲碁を学ぶ者にはそれなりの機会がまた別にある。

最初進藤を囲っていた一群は前者かと思った。進藤が嫌がると思い表立って彼の前には行かず
物陰から様子を見ていた。自分で自分の奥ゆかしさがおかしかった。
進藤は自分と同世代の者達に熱心に碁を指導し、聞く側も進藤の一手一手を食い入るように
見つめていた。
「進藤君の学校の生徒たちらしいですよ。」
脇を通りかかった棋院の職員が微笑ましそうに目を細めて教えてくれた。
「進藤君もちょっとテレくさそうですね。」
「…そうかな、」
少女も混じったその集団の進藤を見つめる目は真剣そのものだった。「知り合い」や
「お友達」という甘ったるさは彼等の間には少なくともその瞬間は感じられなかった。
その「彼等」から少し離れた場所に彼は立っていた。



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