指話 13
(13)
自分が抱えているものが相手に通じない。そんなもどかしさが押さえられず
彼が通う中学校まで進藤を追ってしまった。結果は失望的なものだった。
進藤は、突然自分から逃げ、囲碁界から消えようとしている。
―オレは、もう打たない。
彼はそう言った。
―進藤は自分を追っていたのではなかったのか…?
いきなり何か理不尽に自分が取り残されたように感じて怒りが込み上げて来た。
囲碁に魅力がなくなったのか、自分に対する闘争心がなくなったのか。
…それとも、イベント先で何かあった…?
次の日学校を出た自分の足は、あの人のマンションに向かっていた。
進藤の様子がおかしい、その事で話を聞いてみたかった。
自分の中にうずまく何かに対する怒りをぶちまけたかった。
かつて一度は離れかけた進藤との接点をあの人が引き寄せつなぎ止め、けしかけたのだ。
話を聞いてもらうくらいいいはずだ。…そして…そして?
そして…話を聞きたかった。あの人が、今思っている事を。
父に勝った事でも、記事の事でも何でもいい。
自分が向き会いたいと思っている相手からこれ以上距離をおかれてしまうことには
耐えられない。
父ではない。進藤でもない。
一度でいい。あの人に自分を受け止めて欲しい。心の片隅に密かに蓄積されてきた
思いが募り、それに突き動かされていた。
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