誘惑 第三部 13
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「キライだよ、おまえなんか。
おまえみたいに自分勝手な奴、大っ嫌いだよ。
いっつも自分の気持ちばっかで、人の話なんか聞いちゃいなくって、聞こうともしないで。
人を人とも思わないで、自分が好きじゃない奴だったらキズつこうが何だろうがヘイキで、おまえ
みたいに薄情で陰険で根性悪の人でなし、見たことがねぇよ。
嫌いだよ。大っ嫌いだよ。こんなヤな奴、他にいねぇって思うよ。それなのに、」
言葉を飲み込んで、一歩アキラに向かって足を踏み出し、睨みつけながら言った。
「それでおまえはどうするんだよ?オレが好きだって、それが何だって言うんだよ?
言うだけ言って、それでおしまいかよ?それでおまえは気が済むのかよ?それだけでいいのかよ?
本当はどうしたいんだよ?本当の事を、本当にしたい事を言えよ…!」
「キミはっ!ボクがどんな…」
ヒカルにつられたように荒げかけてしまった声を飲み込み、それから恐る恐る、小さな声で問う。
「キミは…進藤…キミに、もう一度触れてもいいのか…?」
「訊くなよ!!」
ヒカルがアキラに近づき、にじみより、くっと顎をひいて上目遣いに睨みあげ、掠れた声で言い返す。
「…んな事訊くなよ…!イヤだって言ったらやめんのか?それでやめられんのか?
オレがイヤだろうと何だろうと、それでもしたいって、オレが欲しいって…」
震える白い指がヒカルに伸びて、ヒカルは言葉の続きを失う。冷たい指先が頬に触れ、そこから体中
に電流が走ったように感じる。その指がヒカルの頬を包み込み、白い顔が近づいてくる。視界が歪ん
で、近づいてくる顔がどんな表情をしているのか、よく見えない。見えないから、ヒカルはぎゅっと目を
つぶった。
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