平安幻想秘聞録・第一章 13


(13)
 一本、二本・・・自分の中に入って来る指が増やされる度に、ヒカル
は羞恥が身体中を紅く染めた。夕方、目の前で碁を打っていた、佐為の
綺麗な指、爪、その動きを思い出して、更に身体が熱くなる。
「はぁ、あ・・・ん」
 内壁を丁寧になぞり、ヒカルの感じる場所を探り当てた指の腹が掠め
る度に、すっかり裾の乱れた小袖から覗く細い脚が小さく跳ね上がる。
宥めるように奥に進む快感に追いかけられ、ヒカルは浅い息を吐きなが
ら耐えた。
「ふぅ、ん」
「光」
「はぁ、あっ、佐為・・・」
 上半身を倒した佐為が、ヒカル身体を二つに分けるように脚の間へと
入って来る。微かに着物の擦れ合う音がして、下肢に熱いものが押し当
てられた。それまで夢見心地だったヒカルがハッとして顔を上げると、
優しげな表情は変わらないものの、何かを秘めたような佐為の瞳とぶつ
かった。情欲を宿した男の目だ。
 あぁ、きっと、さっきのオレもこんな顔でこいつを見てたんだろうな。
 佐為が自分を欲しがってる。それが嬉しくて、ヒカルは佐為の首筋に
両方の腕を回した。それを合図に、佐為がゆっくりと身を沈める。秘門
に熱い楔が食い込む瞬間にヒカルが上げた悲鳴は、それを塞いだ佐為の
唇の中へと飲み込まれた。
 濡れた音を従えて、割り入って来たものに身体が軋む。下から押し上
げられて、ヒカルの目から涙が溢れた。
「光、痛いのですか?」
 思わず引かれそうになった佐為の腰をヒカルは押しとどめた。
「だいじょ、ぶ、だから、そのまま、して・・・」
 辛そうに眉を寄せるヒカルは少しも大丈夫そうではなかったが、佐為
はなるべくヒカルに負担のかからないようにゆっくりと動き始めた。



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