平安幻想秘聞録・第三章 13
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「大君、お戯れはそれくらいに。その者も困っておりますぞ」
そう口添えをしてくれたのは、名前も知らないが帝の側近らしかった。
「はは、すまぬ。あまりに反応が可愛かったのでな」
「い、いえ、オレ、いえ、私にはもったいないくらいの、お言葉で」
さっきの口上はまぐれだったとばかりに、ヒカルの返答は歯切れが悪
くなっていた。だが、そんなところも若者らしいと帝は受け取ったのか、
気分を害することもなく、お付きの者たちに目で合図を送り、そのまま
ヒカルの横を通り過ぎて行った。
その姿が完全に見えなくなるのを待って、やっとヒカルが身を起こす。
「はぁ、疲れた〜」
「一時はどうなることかと思いましたが、無事、大君との対面も済みま
したね」
「本当だよー。もう心臓に悪いったら」
「私も一瞬、肝を冷やしました」
行洋からの文では、帝が直接ヒカルに言葉をかける手筈にはなってい
なかったのだが。
「それにしても、光があんなにすらすらと口上を述べるとは思いもしま
せんでしたよ」
「佐為と塔矢、じゃなくて賀茂が打ち合わせをしてたのを横で聞いてた
からかな。自分でも信じられないや」
オレって本番に強いのかもな。緊張が解れた反動か、満面の笑みを浮
かべたヒカルに、佐為も静かに頷いてみせる。
「それに、心配してた東宮の姿もなかったしさ」
「そうですね。酷く光に執着のご様子でしたから、春の君も帝と一緒に
お出でになると思っていたのですが・・・」
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