平安幻想異聞録-異聞-<水恋鳥> 13


(13)
達したあとの体の痺れも取れないうちに再開された律動に、ヒカルの体の方が
先に走り出してしまう。
ヒカルは先に引き続き後ろから責められて、佐為の名を呼びながら床にしがみ
つくようにしている。
「佐為……、佐為……っ、佐為っっ、お願いっ!」
「…ヒカル?……」
佐為も早い呼吸の合間に答える。
「佐為、前から……っ! 佐為の顔、…見ていきたい……っっ!」
愛らしい懇願に、佐為は胸がいっぱいになって、すぐさま自身をヒカルの中から
引き抜き、少年の肉付きの薄い体を返し、前から抱きしめ直すと、その華奢な
体を深々と貫いた。
「はんっ!ひぁぁぁぁっ!」
佐為は締め付けてくるその中の熱さを感じながら、ほつれたヒカルの前髪を
唇でかきわけて額に口付け、それを手初めに、ヒカルの体に口付けの雨を降らせて
ゆく。あるところは優しく触れるぐらいにとどめ、かと思えば、ある場所は噛んだ後が
赤く残る程にきつく。
その度に、ヒカルの口からせっぱつまったような声が漏れる。単に佐為の唇が
触れた場所からの痺れだけではない、口付けをしようと佐為が体をよじり、
曲げるたびに、中に銜え込んだ佐為のモノが微妙に角度を変え、ヒカルを狂わす
歓喜の波が背筋を走り登るのだ。
ヒカルの艶めいた声が、庵近くの山林で鳴く鳥達のさえずりに混じる。
だが、その声は、鳥のさえずりというより、むしろ雄を呼んで啼く牝鹿の声だと
佐為は思った。
揺さぶられる体を、佐為の首根っこにしがみつくように支えて、嬌声とともに
ヒカルが佐為の耳元で囁いた。
「あ…んん……佐為……、もしかして、オレの声、聞きたかった……?」
ばれていたのかと、瞠目して佐為はヒカルの顔を見た。
「どうして……、わかりました?」
「なんとなく……はぁっ……」
やはり、この少年に下手な隠し事はできない。
「最初から、言えばよかったのに……ん…」
「言えば、聞かせてくれました?」



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