守って!イゴレンジャー 13
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突然だが、進藤ヒカルは生きた兵器だ。
彼が毎回あっけなく敵に攫われるのは決してお間抜け者のうっかりさんだから
ではなく、それすらも作戦のうちだと言えよう。
あえて囚われ、うまく敵のボスと一夜を共にすることが出来ればもう勝利を収めたも同然。
実はヒカルは五億五千万人に一人と言われる貴重な蠱惑体質(レッドデータ登録済み)で、
その体に流れる妖しい血が、肌を合わせた者を一人残らず虜にしていくのだ!
『百戦錬磨のレッド』──その噂は暗黒魔界ではすでに常識になりつつある。
それを知らないのは帝王アキラくらいだろうか。
「ンッ…伊角さん、い、いい」
「こ、これでいいのか?絶対?本当に気持ちいいんだな?」
自分の手性にイマイチ自信を持てない伊角が焦る。
「イイ、から、早く…やっ」
年上の、しかも初めての伊角に向かって、「早くイカせろバカやろう」とは言えず、
ヒカルは切なげに伊角のシャツを掴んだ。その仕草がさらに勘違いの道を切り開く。
──進藤…可愛いな…こんなオレの稚拙なテクニックに溺れてるのか。
伊角はきつく吸い上げ、ヒカルの精を一気に飲み干した。
爽やかカルピスOK、さぁ次はメインディッシュだ!
一方、孤軍奮闘中の奈瀬は制御の利かない棋院ロボから“碁笥型貯金箱”、
“十訣タオル”、“囲碁マグカップ”、“おもしろ囲碁はがき”と次々と技を連打するも、
どれも敵には命中せず付近の民家を無駄に破壊し続けていた。
損害賠償金は戦いに負けた側が全額負担。
モニターで見守る日本棋院幹部の顔色が青に染まる。
奈瀬は最後の手段とばかりに“セイコーの対局時計”をぶっ放した!
『甘いな。このオレが手拍子で受けるとでも思ったのかい?』
キューティーは縛られた体のまま器用に技を避けてみせた。
「悔しいけどさすが…やっぱり“シチズンの対局時計”にするべきだったわ」
『おい、お茶をくれ』
今まで座って戦いを見物していたキューティー付きのラッパ天使がわらわらと
動き出し、持参のティーセットを広げ、ウェッジウッドの茶器に淹れ立ての
ロイヤルミルクティーを注いだ。
天使の一人がアシワラーの元にふよふよと近寄り、身振りで大きくしてくれと頼む。
「いいよ〜、あとでオレにも一杯飲ませてね〜」
アシワラーの呪文で巨大化したティーカップを、天使たちが共同作業で持ち上げ、
キューティーの口元まで運ぶ。
『いい茶葉だ…』
キューティーは喉を潤すと、奈瀬に向かって不気味かつ可憐に笑んだ。
『──これで並んだな』
さて藪の中。
伊角はいい感じでヒカルの中に腰を進めていた。
初めてにしてはなかなかスムーズ…もしかしてオレって天才なのかと伊角は自分に酔っていた。
しかし残念、これからなのに一旦CMだ!好手戦隊・イゴレンジャー!!
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