身代わり 13
(13)
いきなりヒカルの表情が変わった。
さきほど横から見た、あのうっとりとした瞳がいま、真正面にある。少し茶色がかったそれ
は、吸い込まれそうな透明さがあった。
冴木はヒカルの腰に手をまわした。なんと細いのだろうか。そのまま下にすべらせていく。
すべてが無意識のうちの挙止であった。
「あ」
ふとももを撫でられて、ぞくりとした。それは佐為では感じることのできないものだった。
この先を知りたくて、ヒカルは軽く足をひらいた。
すると、遠慮がちに冴木の手が内側にすべりこんできた。
「……っ」
ヒカルの息を飲む声が聞こえた。嫌がっていない、むしろ待ち望んでいるのだ。
そう思った冴木はゆっくりとそこを揉んだ。てのひらに返ってくる弾力を楽しむ。
押さえられている肩に力を感じた。潤みを帯びた目で見つめられる。
(ヤバイ。ほんとうにヤバイぞ)
そう思いながらも、やめることができない。とうとう手はヒカルの股間にたどりついた。
ゆるめのジーンズの上からでも、勃起していることが分かった。
《ヒカル! いいかけんにしなさいっ》
(だって、気持ちいい……)
佐為は歯噛みした。新初段シリーズ以来、ヒカルの性衝動は顕著なものとなっていた。
そんなときに、塔矢アキラとの対局日が決まった。
するとタガが外れたように、ヒカルは毎夜毎夜、佐為に自慰行為をせがむようになった。
佐為はそれに懸命に応えた。しかしそれでもヒカルはさらなる愛撫を求めてきた。
満足させることのできない自分が、恨めしかった。
だが今はヒカルが恨めしい。自分しか知らなかった声を、他人に聞かせている。
「はっぁ……んぅん……」
ヒカルが身体をくねらせた。
《……あなたは、わたしではなくてもいいのですか……》
ヒカルは首を左右に振った。決してそんなことはない。しかしどうしても直接あたえられる
刺激をこばむことはできなかった。
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