失着点・龍界編 13


(13)
「えっ!?それで…!?」
「オレにも詳しい事はわからん。とにかくそう連絡があったらしくて、
さっき、棋院会館の職員から病院の場所だけ教えてもらった。」
「…進藤が…」
スーツのズボンの膝を両手で握りしめ、アキラの体が小刻みに震え出す。
「…しっかりしろ、アキラ君。」
緒方の言葉は、聞こえていなかった。
病院に着くなり急いで受付に向かい看護婦に部屋を教えてもらう。
面会謝絶という訳ではなかったのがせめてもの救いだった。
「…進藤!!」

「だからあ、守るだけじゃダメなんだってば。常に攻めるのと一緒に考えて
石を置く場所を決めないと…」
病室のドアを勢いよく開けたアキラが見たものは、ベッドの上にあぐらを
かいてマグネットタイプの囲碁板を使って入院患者相手に碁を教えている
進藤の姿だった。
「…塔矢…、」
呆然と立ち尽くしているアキラの背後で緒方も「やれやれ」といった感じに
息をつく。進藤の方が二人の切羽詰まった形相にビビりながら右手を上げた。
「…よ、よお。」
ヒカルに教えてもらっていた老人や中年の男性達が色めき立つ。
「お、お、緒方十段だ!さ、サインサイン!!」



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