失楽園 13
(13)
「キミもやっぱり人の子なんだな。俗っぽいことをする」
緒方は幾分失望したように呟くと自嘲気味に笑い、自分が組み敷いている相手の胸元をいとも簡単に
暴いた。小麦色によく焼けたヒカルの肌が、人工的に作られたライトの下で妖しく光る。
「緒方さん!」
「センセっ、何すんだよっ」
ヒカルは押さえつけられた緒方の腕から逃れようと、必死に身体を蠢かし、緒方の凶行を止めるため
にベッドへ駆け寄ったアキラは、そのヒカルの扇情的な様子――アキラとはあまりに違う健康的な
肌の色、少しずつ露になってくる身体のライン――に一瞬目を奪われた。
アキラが無理矢理ヒカルから視線を引き離すのを、緒方は醒めた目で観察している。ヒカルの足を
自らのそれで固定すると、緒方は片手で眼鏡を外した。眼鏡を外した途端に現れる整いすぎた緒方の
容貌は、心から微笑むと多分とても柔らかい表情を作るのだろう。ヒカルは突然現れた美貌から目を
離せず、そんなことを考えた。
「アキラくん、キミはそこで見ているんだ」
アキラは顔をベッドから背けたまま、微動だにしない。緒方は髪を掻き上げると、その反対の手で
ヒカルの薄い身体の上を撫で上げた。ヒカルがこれからの行為を期待しているわけではないのだろうが、
指先にその固い突起の存在を感じ、緒方は口角をつり上げる。
アキラくん、と緒方は再度呼びかけた。微動だにしない愛人を目を細めて見つめ、緒方は愛を囁く
ようにゆっくりと告げた。
「最後までだ。――いいね」
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