魔境初?トーマスが報われている小説(タイトル無し) 13
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「そしたらあの人、『へぇ、和谷ってそっちの趣味あるのか』って……」
そうして翌日に届けられたのは、数冊の雑誌。もちろん全部、「そっち」系のアダルト本。
引き攣った顔で和谷はそれを受け取って、それでも手に入れたからには読み込んで勉強したらしい。
「でも、冴木さんなんでそんな本、持ってるんだろ」
「聞くな、怖いから。でもあの人は、そういうミステリーな人なんだよ」
だけどな。と、ふたりしかいないのに、和谷は声を潜めた。
「冴木さんって、俺たちのこと知ってるような気がする。絶対そう」
「え、まさか!?」
「言われたんだよ。『また大事な対局日に、腹壊すなよ』って」
そのときは俺のことかと思ったけど、俺が腹を壊すはずないしな。そう言って和谷は俺のほうを見た。
心当たり…は、ある。プロ試験のときに下痢して、それまで全勝だった星を落としたんだ。
合格してから、こんな馬鹿なこともしたと笑い話として聞かせたこともある。
「うわー…今度会ったら、どんな顔すればいいんだよ」
「普通でいいだろ。あの人、そういうことに理解あるから。つーか、冷淡っていうのか?」
そんなこと言われても、ちっとも慰めにならなかったけど。
まあいいか、とも思う。
ひとりくらい理解者っていうか、秘密の共有者がいても、それはそれでいい。
冴木さんなら口も堅そうだし。
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