敗着 13 - 14
(13)
「待て!」
捕まえようとする手を逃れ、目に入った扉に駈け寄り夢中でドアを開ける。
─とそこは、ベッドとサイドテーブルしかない殺風景な部屋だった─
(「アキラくんは─」「物覚えがいい─」)
緒方がアキラのことを話した時、見た部屋だ。
「都合がいいな・・・」
後ろ手でドアを閉め、眼鏡を外しながら緒方が近付いてくる。
「アキラの代わりをしてもらおうじゃないか」
と言い終わらないうちに力任せにベッドに組み臥され、
足をばたつかせながらもみ合う。
「放せっ・・・ヤメロ、この変態!」
こんな奴に、塔矢は─
自分を優しく抱き締めてくれた体温が肌に蘇る。
必死に両腕を振り回し抵抗するヒカルの手が緒方の首の付け根を引っ掻いた。
「痛・・・っ」
皮膚に血が滲み出すのを見てヒカルは「あっ」という顔をする。
「・・・優しくしてやってれば、コノヤロオ・・・」
眼鏡越しではないその目線に睨みつけられ息を呑んだ。
その瞬間─
「ぐ・・・」
緒方の体が傾いたかと思うとヒカルは横っ面を殴打された。
目の前が一瞬真っ白になり、
「これはオレが脱がせてやるよ」
という緒方の声が聞こえシャツが一気に左右に引き裂かれた。
(14)
ボタンが飛び散りヒカルの裸の上半身が露になった。
「嫌だっ・・・や・・・!」
緒方にのしかかられた下肢は動かすことが出来ず、
剥がされていくシャツの布が腕の自由を奪っている。
ヒカルは顔を左右に振ってイヤイヤをして叫んだ。
「いやだ!塔矢!塔矢────!!」
「アキラとヤルよりもヨガラせてやるよっ!」
暴れるヒカルを抑え付け、シャツを床に叩きつけると緒方が怒鳴った。
「い・・・やだ・・・」
「塔矢」という言葉は声にならなかった。
緒方はヒカルの四肢を組み敷きながら、自分のネクタイに手を掛け引き抜き
天井を仰いでいる目を覗き込んだ。
「大人しくしてれば乱暴はしない」
そう言ってヒカルの体を慎重にうつ伏せにすると、両の手を後ろ手に縛り上げた。
ヒカルの臀部が緒方の目に晒される。
(塔矢─オレ、おまえと)
どこか拙い、遠慮がちな愛撫を受けて確かめ合ったあの夜。
それが、壊される─。
「緒方せんせ・・・やめて・・・よ」
涙声になったヒカルが哀願するのを聞いて、
「・・・じっくりとヤってやるから」
と緒方は答えた。
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