交際 13 - 14
(13)
結局、一日目は、一晩中碁を打ち続けた。ヒカルは、アキラにどうして自分に触れて
くれないのか訊きたかった。が、出来なかった。社の前で、そんなことは訊けない。
それに、アキラは意識的にヒカルと二人切りになることを避けている。
そんなアキラの態度と寝不足で、ヒカルの機嫌は悪くなる。何をしてもとげとげしい
態度で接してしまう。こんな風にしたくないのに…。自分でコントロールできない感情に
ヒカルは戸惑っていた。感情をそのまま面に垂れ流して回りに迷惑をかけている。
わかっているけど、どうにも出来ない。自分は本当に子供っぽくて嫌になる。
社が、時々冗談を言う。場を和ませようとおどけてみせた。わざと道化者を演じてくれる社に、
ヒカルの警戒心は徐々に薄れていった。二日目の夜には、ヒカルはすっかり社に打ち解けていた。
もっとも、あのキスのことを全部忘れるというわけにはいかないが…。
ヒカルが社と親しげにしていても、アキラは知らない顔をしていた。別にやきもちを
焼かせようとしたしたわけではないが、こうも冷静にしていられるとちょっと腹が立つ。
『おマエは知らネエだろうけど、コイツはオレに二回もキスしたんだぞ!』
何で、怒らないんだ!?以前は、ヒカルが和谷や伊角と親しげにしているとあからさまに
嫌な顔をしていたくせに…。ひょっとしたら、アキラはもう自分のことは何とも思って
いないのかもしれない。涙が出そうになった。
「進藤、どないしたんや?どっか、痛いんか?」
社が心配そうに、顔を覗き込んできた。ヒカルは慌てて、首を振った。
「な、なんでもネエ…オレ、風呂に入ってくる…」
明るく言ったつもりだが、失敗した。少し、涙声になってしまった。
(14)
ヒカルは、ボディーソープを泡立てて、スポンジで体中に擦り付けた。アキラと同じ匂いがする。
「…あん時も、おんなじこと考えたっけ…」
初めてアキラの家に泊まったときのことを思い出して、ドキドキした。
アキラの繊細な指先や優しい唇が、自分の身体を辿っていき、ヒカルに経験したことのない快感を
与えた。昨日から、碁石を持つアキラの指先に、何度も欲情しそうになった。あの手で、
触れて欲しい。キスして欲しい。
「…あっ…」
そんなことを考えていたせいか、ヒカルの中心部が熱く勃ち上がりかけていた。恐る恐る
そこに手を這わせた。アキラがやってくれたことを思い出しながら、慰める。
ヒカルは、自分でした経験はあまりない。碁のことだけ考えていれば幸せだったから、
そっちの方にほとんど興味がなかった。時々、わけのわからない衝動が突き上げて、仕方なく
処理をしていただけだった。
でも、今は違う。アキラが欲しい。アキラとしたい。
「は…あぁ…うん……」
片手でペニスを嬲りながら、もう片方の手を胸に這わせる。ボディーソープの助けを借りて、
簡単に肌の上を滑っていく。
「ん…ん…あ…」
ペニスへの直接的な刺激と違って、胸から与えられる快感はもどかしくて切ない。そのはがゆい
くらいの刺激がじわじわと体中に広がっていく。限界を感じた。
ヒカルは、胸に這わせていた手を股間へと移動させた。両手を添えて激しくそこを擦りあげた。
「はぁ…は…あ…あ、あ、あ、あぁ―――――」
ヒカルのか細い悲鳴と共に、白い飛沫が飛び散った。
「あ…あ…は…」
ハアハアと荒い息を吐きながら、それを見つめる。自己嫌悪に陥りそうだ。ひとつ屋根の
下にアキラがいる。それなのに………。酷く惨めだった。
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