カルピス・パーティー 13 - 15


(13)
囁きながらアキラの温かな脇腹を掌でゆっくり撫で上げると、
アキラは一瞬息を呑んだ後戸惑うように、あるはずもない逃げ場所を探すかのように
顔を逸らして視線を彷徨わせた。
構わず手を敏感なあちらこちらに滑らせながら「ん?」とヒカルがもう一度促すように
耳を近づけてやると、アキラは震える手でヒカルのTシャツの肩の部分を掴み
絞り出すように小さな声を洩らした。
「・・・ぁ、・・・あッ・・・あぁ、あ・・・んっ!」
音量のセーブされた、自分だけのために発せられた甘い声に、ヒカルはアキラの呼気が
触れた所から耳と頬の産毛が総毛立つ感覚を覚えて思わず目を閉じた。

「そ・・・それで、いーんだよ。・・・えっと。・・・前から思ってたんだけどさぁ、
オマエのカラダってなんか、面白いよな」
「・・・おもしろ・・・い?」
アキラはあのピンクと赤に彩られた煽情的な顔でハッハッと小さく息を乱しながら
ヒカルの顔を見た。
「ウン。ちょっと感じ過ぎじゃねぇ?」
手探りの指先が尖り立った乳首の先端にほんの僅か触れただけで、電流でも流された
ようにアキラの体がビクンと跳ねあがった。
「ア、アッ・・・!」
「ホラな!わ、すげ・・・!この辺全部、鳥肌立ってる」
脇腹の腋の下に近い部分を五本の指の腹で興味本位のようにまさぐられて
アキラは目尻に涙を滲ませ、首を振った。
そんなアキラを眺めながらヒカルが楽しそうに言った。
「さっきも手ぇ舐められただけで今にもイキそうな顔してたしな?オマエの手が
そんなに感じるなんて知ったら、次から打つ時にオマエの手見て、エロい顔まで
思い出しそ・・・」


(14)
囁きながら片方の手でさっき自分が舐めたアキラの手を握り、もう片方の手で
しっとりと汗ばんだ腋の下を掻いてやると、アキラの喉から尾を引くような
細く甘い喘ぎが洩れた。
ヒカルの耳と頬がまた総毛立つ。
ヒカルに握られたアキラの手は、衣服の下で震える体と連動するようにビクビクと
痙攣している。
まるでそういう風に作られた人形か何かのように、指の先までも自分が与える愛撫に
素直に反応しているその体がいとおしくて、ヒカルはアキラの手指に自分の指を
しっかりと絡め合わせた。

・・・そうやっていつまでも、オレに触られたら気持ちよさそうにして、
オレのやる事なす事いちいち反応して喜んだり、困ったり、怒ったりして、
オレがいなくなったら追い駆けてきて、いつもオレのことだけ見てて欲しい。
でなきゃ何のために、オレがあんな悲しい思いをしなきゃなんなかったのかわからない。
なぁ、塔矢。
オレとオマエが会ったのはきっと神様が特別に決めたことだから。
社も、他の誰も、オレたちの間には入り込めないはずだろう?

「塔矢。・・・塔矢、ベッドに行ってもいいけど、立てる?
・・・立てないならここで、やっちゃうぜ・・・?」
だが潤んだ目を閉じフローリングの上にぐったりと身を横たえたアキラのシャツを捲り
その下の肌を露わにしてみて、ヒカルは思わずそこに触れていた手を離してしまった。


(15)
見慣れたアキラの白い肌の上に、見覚えのない斑点のような跡がたくさん付いていた。
跡は、アキラの胸の突起と同じ綺麗な薄い赤色をしたものから消えかかってうっすらと
ココアの泡のような茶色がかった染みを残すのみとなったものまで様々だったが、
それらが薄い皮膚に覆われた鎖骨の辺りから普段は衣服で見えない二の腕、胸や脇腹まで
散らばっている。
ヒカルの心臓がドクンと締め付けられた。
「これ・・・」
「え?」
アキラは切なげに目を閉じたまま、乱れた呼吸のついでに洩れたような声で問い返したが、
しばらく待ってもヒカルから何の答えも返って来ないとねだるように腰を浮かせ、
まだ一つも脱がされていない下半身の衣服のウエスト部分に手を掛けて引っ張る仕草をした。
「進藤・・・しんど・・・はやく・・・っ」
「てゆーか、ちょっと待てよ。これ、何だよ。オマエの」
「え・・・?」
薄く瞼を開けたアキラの、濡れて光る睫毛の向こうで、潤んだ黒い目が不思議そうに
揺れている。
ヒカルは人差し指を伸ばし、アキラの胸の辺りを指して触れた。
その刺激一つにもアキラの体は跳ね上がり、胸の突起が目に見えてピンと立ち上がる。
それを無視してヒカルは言った。
「オマエの体の、これだよ。これ、虫刺されとかじゃねェだろ」
「え。・・・ああ、これ?」
やっと合点がいった様子でアキラは自分の身体の上に手を遣り、ハッハッと小さく息を
乱しながら少し首を持ち上げて覗き込むようにした。



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