初めての体験 13 - 15
(13)
「マスターありがとう!」
ヒカルがマスターの首に飛びついた。マスターは少し狼狽えた。ヒカルがしがみついて
来る前に見せた表情が妙に色っぽく、いつものヒカルとは、まるで違って見えたからだ。
マスターは、気のせいだと思った。しがみついてはしゃぐヒカルは、いつもにもまして
子供っぽい。
その時、ヒカルが呟いた。
「オレ・・・ホントは・・・強い奴がいいんだけど・・・マスターならまぁいいか・・・」
マスターには、ヒカルの呟きがよく聞こえなかった。「何?」と聞き返そうとした時、
ヒカルの唇が、マスターのそれを塞いだ。深く舌を差し込んでくる。マスターは、
ヒカルを押しのけようとしたが、出来なかった。ヒカルのキスは余りにも刺激的で、
マスターはその快感にうち勝つことが出来なかった。
ヒカルがマスターから離れた。その唇が動いた。
「マスター・・・オレのこと好きにしていいよ・・・」
今、サロンの中には、ヒカルとマスターの二人しかいない。心は決まった。
マスターは入り口の鍵を閉め、カーテンを引いた。その様子をヒカルはクスクスと
笑って眺めていた。
マスターの目の前で、ヒカルは服を全部脱いだ。マスターはヒカルに見とれた。
少年らしいすんなりと伸びた手足、やや細すぎるが、しなやかな体。
マスターはヒカルの体にそっと触れた。
(14)
マスターはヒカルを机の上に横たえた。ヒカルはマスターに甘えるように言った。
「マスター・・・乱暴にはしないでね。」
マスターはヒカルの言葉に頷くと、その唇にキスをした。
「あぁ・・・マスター・・・」
マスターはヒカルの望む通り、これ以上ないだろうと思えるくらい優しくした。
ヒカルはマスターが触れるたびに、「あん・・・」と甘い声を漏らした。
その声に煽られるように、マスターはヒカルを愛撫し続けた。
細い首筋や、小さな乳首に舌を這わした。そして、立ち上がりかけているヒカル
自身を舐めあげた。ヒカルの体がブルッと震えた。マスターは動きを止めた。
「や・・・やだ・・・マスターやめないで・・・」
ヒカルが喘ぎながら訴えた。ヒカルは、どうやら嫌がってはいないらしい。
「あん・・・気持ち・・・い・・・」
マスターは机の引き出しから、ハンドクリームをとりだし、それをヒカルの後ろに
塗り込めた。ヒカルが小さな声で喘ぎ続ける。
「マスター・・・して・・・」
マスターは自分自身にもクリームを塗ると、ヒカルの中にゆっくりと入っていった。
「───────────────っ」
サロンの中に、ヒカルの嬌声が響いた。
ヒカルは自室で佐為に訊ねた。
「なあ?今日オレどうだった?」
「ふー。まだまだ甘いですねぇ。ヒカルは・・・」
佐為がまるでなっちゃいないと言うように答えた。
「えー?なんでぇ?オレがんばったじゃん。」
文句を言うヒカルを佐為が諭した。
「まだまだ技術が足りません。精進しなくては。」
「神の一手に到達するって厳しいんだなー。」
ヒカルは大きくため息をついた。
「まあいいや。オレ今度からこれに記録つけることにするよ。」
ヒカルは、システム手帳を大事そうにリュックにしまった。
<終>
(15)
アキラは、ヒカルが対戦相手の感想を日記代わりのシステム手帳につけて
いるのを知っていた。ヒカルは強い相手の感想しか書かないと言っていた。
だが、アキラには、一つ気になることがあった。ヒカルが対戦したことがあるのに、
感想が書かれていない人がいるからだ。『どうして、進藤はあの人のことを
書いていないのだろう・・・。』
アキラは、思い切ってヒカルに訊ねた。
「ねえ、進藤。その手帳には強い人のことが書いてあるんだよね?」
「そう。それがどうかしたか?」
ヒカルがきょとんとした顔で聞き返してきた。
「どうして、倉田さんの感想を書いていないんだ?」
「!!」
思いがけないアキラの言葉に、ヒカルはどう応えていいかわからなかった。
「倉田さんと対局したことがあるんだろう?」
アキラはさらに問う。ヒカルは狼狽えて、
「な、なんで倉田さんなんかと!オレは・・・!」
と、真っ赤になって言いかけたが、ハッと口を押さえた。そんなヒカルの言葉を
アキラはどう受け取ったのか、
「進藤・・・。苦手な相手がいるのはわかるよ。負けて悔しい気持ちも分かる。
でもね・・・苦手な相手を避けていては、一向に強くなれないよ。」
と、ヒカルを諭した。ヒカルは、雷に打たれたような衝撃を受けた。
「そう・・・そうだよな。塔矢の言うとおりだ。」
ヒカルは塔矢に、吹っ切れたように笑って言った。
「わかったよ、塔矢。オレ、今から倉田さんに対局申し込んでくる。」
「進藤?ちょっと、急にそんなこと・・・」
ヒカルは、走って出ていった。
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