初めての体験 132 - 138
(132)
おまけ
「わっ!」
廊下を曲がろうとして、趙石とぶつかってしまった。彼の顔は真っ赤だった。
「ゴメンナサイ」
アキラに一言そう謝ると、彼は走って行った。
「何を慌てていたんだろう…」
走り去る華奢な後ろ姿を見ながら、『たまにはああいう純情そうなのも良いな…』と
考えた。アキラの鞄の中には、つい先日手に入れたばかりのエネ○グラが、入っていた。
「ホントは進藤に使いたいんだけどな…泣いちゃったらイヤだし…」
趙石は純情そうなところがヒカルとかぶる。新しいオカズになるかもしれない。
邪なことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「趙石がどうかしたのかい?」
振り向くと楊梅が立っていた。
「いいえ…ちょっとぶつかっただけです。」
アキラはにっこりと笑った。
「それより、もしお時間があれば、中国の事をいろいろ教えていただけませんか?」
「ああ、いいよ。じゃあ、オレの部屋に行こうか?」
「いえ、できればボクの部屋で…」
楊梅は、快く承諾してくれた。先に立って歩く彼の後ろを、黙ってついて行く。
『…アレってどれくらい効くのかな…楽しみだ…』
知らず、笑みが零れた。
終わり
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「やべぇ…遅くなっちゃったよ…」
和谷のアパートでの研究会の帰り道、ヒカルは呟いた。もう、あと数分で日付は変わってしまう。
ヒカルの両親は口うるさい方ではないのだが、ヒカルはまだ中学を卒業したばかりのほんの子供だ。
門限は十時と決められていたが、ヒカルはそういうことに頓着せず、たびたび門限を
破っていた。つい昨日も母親に酷く叱られたばかりだった。それも仕方がない。ここ一週間
毎日、無断外泊もしくは午前帰りを続けていた。
流石に今日は早く帰ろうと思っていたのだが、ついつい検討に夢中になって気が付いたら、
すっかり夜半過ぎだった。
『今度破ったら、門限は八時にしますからね!』
母親の言葉が蘇る。
「八時だなんて冗談じゃネエや…」
ヒカルは足は急がせた。
真夜中の冷たい風が、ヒカルの頬や首筋を嬲る。
「うぅ…寒…」
ヒカルはパーカーの前をあわせて、小さく身震いした。ヒカルは薄いTシャツに、パーカーを
引っかけただけの軽装だった。暦の上では春でも、まだ肌寒い日が続いていたのだが……。
今朝目覚めたとき、カーテン越しに感じた穏やかで柔らかい陽射しに、ヒカルは感動した。
空は澄み切って、風も暖かだったので、ヒカルの気持ちもついついゆるみ、薄着で出かけて
しまったのだ。
「…………」
気のせいだろうか―――後ろから誰か付いて来ている。その誰かは歩調を早めると早く、
緩めると遅く、まるで、ヒカルにあわせているように後ろを付いてくる。背中がざわめくのは、
寒いせいだけではない。
―――――気持ち悪い。早く帰ろう……
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ヒカルが駆け出そうとした瞬間、いきなり後ろから抱きつかれた。ヒカルよりずっと背の高い
男が上から覆い被さるように強く抱きしめてきた。
「や……!なに…?」
耳元に荒い息を感じた。背筋に悪寒が走る。
「やだ!離して!」
ヒカルが男の腕を引き離そうと、体を捩ると、ガッと胸を掴まれた。もっとも、ヒカルには
掴めるほどの胸はない。どうやら、ヒカルを女の子と間違えているらしい。
『オレを女と間違えるなんて、マヌケなヤツ…』
ヒカルは安堵の溜息を吐いた。これで誤解は解けるだろう。
だが、男は腕の力を弛めるどころか、ますますきつく締め上げる。ヒカルの背骨が軋む。
「あ…痛…!」
大きな掌が、薄いシャツの上からヒカルの胸を撫でまわし、強く弱く揉み始めた。
「あぁ!イヤ!」
ハァハァと荒い息が耳の奥でこだまする。ヒカルは藻掻いた。
「大丈夫…怖くないよ…怖くないからね…ヒカルちゃん…」
ヒカルは「えっ?」と、一瞬だけ抵抗をやめてしまった。その隙を逃さず、男がヒカルの鼻先に
何か瓶を押しつけた。意識が遠のく。
そこから後の記憶はヒカルにはなかった。
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ヒカルは、柔らかいベッドの上で目を覚ました。身体に何か違和感があったが、それが
何なのか、そのときは、わからなかった。
意識の戻ったヒカルの目に最初に映ったのは、自分の顔だった。
―――――え?なに?
ぼんやりとしていた視界が徐々に鮮明になり始める。
―――――なに、コレ…気持ち悪い…………
そこは、壁と言わず天井と言わず、ヒカルの写真で埋め尽くされていた。いつ撮ったのだろうと
いうようなレベルではない。
―――――オレ……こんなカッコした覚えネエぞ……
すべての写真は、首から上は確かに自分だが、その下は他人の体だった。いわゆるアイコラと
いうものだが、その体はすべて少女のものだった。
近所の女子校の制服姿のヒカルもいれば、フェミニン系の可愛らしい衣装で微笑む
ヒカルもいた。中には、身体をすげ替えることに意味があるのか、ストカジ系のいつもの
自分と変わらない写真もある。おまけに葉瀬中のセーラー服もあった。
―――――あの写真なんかあかりっぽいよな………
葉瀬中のセーラーを身にまとうヒカルの手に持たれた鞄のマスコットに見覚えがあった。
たしか、誕生日にプレゼントしたものだ。
―――――あかり…可哀想………
男の顔にすげ替えられるなんて、女としての矜持は、粉々に砕け散ってしまうのでは
ないだろうか。まだ、よく働かない頭で、そんな事を考えた。
それにしても、写真の中のヒカルの身体は女の子のものなのに、まるで違和感がない。
よくよく見れば、少女達の体付きは、皆、共通していた。肉付きの薄い華奢な体付き。
よく言えばスレンダー、悪く言えば、貧乳。わざわざ、ヒカルに似た体型の少女ばかりを
集めたものらしかった。
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怖い―――――――!
男のヒカルを女に見立てて、拉致するなんて、よほど女に縁がないヤツだろうと思った。
このままここにいては何をされるかわからない。
ヒカルは逃げようと身体を起こした。いや、起こしたつもりだった。
「や……!なんでぇ!?」
ヒカルの手首は前で一つに纏められていた。自分の手を拘束しているガムテープをはずそうと
囓ったが、何十にもきつく巻かれたテープを剥がすことはできなかった。
「ちくしょ……!」
足こそ自由だが、その足下を見て驚いた。自分の下半身に付けられている衣装が目に入った。
太ももまであるニーソックスに、ベージュに黒のバーバリーチェックのミニスカート。
「冗談じゃねえ!」
何とか苦労して起きあがると、改めて自分の姿を見た。胸にエムブレムが刺繍された
紺のブレザー、白のベスト、胸元に大きなリボンが見える。どうやら、どこかの制服らしい。
「気が付いたんだね…ヒカルちゃん…」
後ろから声をかけられて、ヒカルはビクリと振り返った。男がゆっくりと近づいてくる。
男はヒカルの想像とは違ってごく普通の男だった。むしろ、いい男の部類に入る。
ヒカルはベッドの上で後ずさりした。
「やだ!来るな!」
ヒカルが身を縮めて男から逃れようとする。
「どうして…避けるんだい…僕はずっと君のファンだったんだよ…」
イベントには必ず行っているし、新聞の切り抜きも全部持っている―――怯えるヒカルを
尻目に男は熱っぽく語りかける。
「この部屋に君を招待できて嬉しいよ…やっと、本物のヒカルちゃんが来てくれた…」
男の手がヒカルの肩を掴み、再び、ベッドの上に横たえさせた。
「あぁ!いやぁ!離せぇ!」
ヒカルは足をジタバタさせたが、その抵抗さえ男は楽しんでいるようだった。縛られた両手で
必死に男を引き離そうとする。
男は縛られた手をヒカルの頭の上で押さえつけた。
「ヒカルちゃんは元気がいいんだね…本当になにからなにまで僕のタイプだよ…」
そう言って、空いた方の手で、ゆっくりとヒカルの服を剥がし始めた。
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男の手が肌を這う感触に、ヒカルは身震いした。男が感嘆の声をあげた。
「ヒカルちゃん、肌白いんだね…それに、すべすべして…すごく気持ちいい…」
興奮した息が肌の上を滑っていく。男の指先が、ヒカルの胸の突起をキュッと摘んだ。
「ん…あぁ…!」
「ヒカルちゃん、おっぱい小さいんだね…でも、僕はこれくらいが好きなんだ…
でかいだけのおっぱいなんて、色っぽくないよ…」
上擦った声で、ヒカルの耳元に囁く。
―――――小さいとか、大きいとかの問題じゃねえ!オレには、そんなモンついてねえよ!
そう叫ぼうと口を開いたが、出てきたのは「あ…いやぁ…!」「やだ…やめてぇ…!」と
言う哀願だけだった。
その声に刺激されたのか
「ヒ…ヒカルちゃん…ヒカルちゃん……」
男はヒカルのスカートの裾に手を入れた。
男の手がスカートを捲り上げると、そこから、可愛らしい下着が現れた。
『ウソだろぉ………』
ブラジャーこそ着けられてはいなかったが、その華奢な腰には可愛いレースとリボンに
縁取られた白い木綿のショーツを穿かされていた。当然、女性のものである。ヒカルは
驚きと恐怖で、固まってしまった。
急に動かなくなったヒカルの青い顔を男が覗き込む。
「どうしたの?大丈夫だよ…怖くないからね…」
そのまま、顔を下にずらし、ヒカルの乳首に吸い付いた。
「あぁ……!や…やぁ…!」
「ヒカルちゃんの乳首って野イチゴみたい…可愛くっておいしいよ…」
男は、チュウチュウと音をたてて吸い上げる。
「いやあぁぁぁ…!やめて!やめてぇ……!」
ヒカルが泣き叫ぶと、男は殊更音を立てて、激しく吸った。
そうして、男は、口で上半身を責めながら、手で下半身を撫でさすった。
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男の手が、ヒカルの丸くてスベスベした尻や、ほっそりとした太ももを這い回る。
「……ン……くぅ…やだよぉ…んぁぁ…」
「ヒカルちゃん…感じやすいんだね…ほら…こんなに濡れているよ…」
ショーツの盛り上がった部分をくすぐるように、男の指が触れた。その先端は、濡れてシミを
作っていた。
「やだ…!ちが…」
ヒカルが身体を捩って男の手を逃れようとする。だが、男は、布の上から何度もそこさすった。
その手の動きにあわせて、スカートが捲り上がっていく。
耳元で男は、荒い息とともに卑猥な言葉を囁き続ける。顔が紅くなるような言葉の洪水に
ヒカルは顔を背けた。
「…純情なんだね……可愛い…」
ヒカルの反応が、男の気をさらに昂ぶらせている。そのことにヒカルは気が付いていたが、
声を堪えたり、恥ずかしい言葉を無視することは難しかった。
「やめて………やめてよ……」
すすり泣くヒカルの股間を男は執拗に弄び続けた。最初はたださするだけだったが、ヒカルの
変化が顕著になり始めると、優しく揉んだり、濡れて先端が透けて見えるそこを布越しに
爪を立てたりした。
「あぁ!やだぁ!」
ただでさえ、異常な状況にヒカルの神経は過敏になっている。その上、敏感な部分に刺激を
うけて忽ちそこは熱くなってしまった。それに応えるように、男の手の動きはどんどん早く
なっていく。
女性用の下着から今にも顔を覗かせそうなそこを隠そうと、ヒカルは足をばたつかせた。
男はヒカルの細い太ももを、自分のそれでしっかりと挟み込んで動きを封じた。大きな手は、
未だにヒカル自身を嬲り続けていた。
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