平安幻想異聞録-異聞- 134


(134)
紫宸殿から降りた場所にも参列しているのは、やはり黒の位袍のまとうことを
許された高位の貴族と華やかな十二単姿の女房ばかりだが、それでも、
その会場の端々には、警備のために弓を持って立つ、同じ検非違使や衛士の
姿が見える。
加賀や三谷の姿もあった。
ヒカルがなんとも場違いなこの場所に座るはめになったのは座間がそう命じた
からだ。
菅原でさえ、高欄の下にいるというのに、座間はヒカルを手元から離さなかった。
高欄の内のこの場所は会場の真正面にある上、他の場所より高くなっているせいで、
どうしたってヒカルの姿は、皆の目に入る。滅茶苦茶に居心地が悪い。
だが、それでもヒカルは、いつのまにか唯一人の人を、無意識に目で探していた。
その人は、藤原派の貴族の中に、なんともひっそりと座っていた。
着衣もいつもの白い狩衣ではない。文官の黒の礼装。
髪も、いつもはさらさらと長く後ろにたらし、腰のあたりでやっと結んでいるのに、
今日はもう少し根元の方、肩の後ろあたりでゆるく飾り結びにまとめている。
少しうつむきかげんに下を見ていた佐為が、ゆらりと顔を上げた。
目が合いそうになって、ヒカルはそっと目線を外した。
楽の音が流れ始めた。
貴族達は、それぞれが苦心して作成した、菊を題材にした和歌を代わる代わるに
読み上げ、帝にいいところを見せようとしている。いい歌が出れば、会場が
ざわめき盛り上がる。
だが、歌のことなどまったくわからないヒカルは上の空だ。
疲れのための眠気と戦うので精一杯だ。
ここに来る途中も立つのがやっとだった。
気をぬけばその場で腰がくだけて倒れてしまいそうだった。
まだ自分の奥に何かを食んでいるような気さえする。
どこか人目につかないところに行って休みたかった。
儀式はとどこおりなく進み、いよいよ饗応の宴に入る。
山海の珍味に加え果物や、珍しい菓子なども、女房達の手によって運びこまれ、
それへ次々と手が伸ばされる。
酒も、それぞれが手にした菊の花びらを浮かべた盃に、波々とそそがれ、会場は菊の
香りとともに、豊潤な酒の香りにも包まれる。
菊の宴は、長寿の宴。しかし、飲み食う楽しみもなくては、なんの為の長寿ぞよ、と。



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