平安幻想異聞録-異聞- 137


(137)
元服を終えたとはいえ、まだどこかあどけない少年武官の一人舞いに、
最初は面白がり、はやしたてていた貴族達だったが、その騒ぎは徐々におさまり、
いつの間にか会場は水を打ったように静まり返ってしまった。
公卿のひとりが、ゴクリとつばを飲み込む音が聞こえるほどに。
この検非違使の少年がかもしだす、例えようもない艶はいったいなんなのか。
縹色――薄藍に一滴、緑を足らした色の位袍の、袖崎に覗く幼い指先。揺れる
金茶の前髪近く、左耳の上辺りに刺された黄色い小菊がよく似合っている。
「婀娜」という言葉がある。
今のヒカルの様がまさにそれだった。
ヒカルがともすれば力が抜けそうになる手足をささえる、その動きの緊張感が、
不思議な色気を生み出していた。
痛む腰と重い体を、崩れないように慎重に立たせるその様子が、かえって
匂い立つような色香を感じさせる。
疲れに半分閉じられたまぶたは、いっそ、けだるげで、見るものを迷わせる力があった。

「あの、馬鹿…」
加賀は、会場の隅に弓を携えて立ちながら、おもわず舌打ちしていた。
近衛ヒカルは、今の自分が、端からどう見えているかなんて、まったく気付いて
いないに違いない。
2日ほど前に内裏で会ったとき、ほんの一時だけ、ヒカルが感じさせた、
あの奇妙な色気を思い出していた。
それが、今日は無意識に全開だ。
座間に何をされているのか、前よりやせて細くなった首が扇情的だ。わずかに
臥せられた瞳は物憂げで、その舞いが醸し出す雰囲気は、なまめかしくさえあった。
これでは、座間でなくても惑わされる。
「何がどうなっても、知らねぇぞ、おい」



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